第44話 エンジェル・ウイング



 悪魔の尻尾は、鉄をも切り裂く────


 そんなもので攻撃されれば、天界のオーラを身にまとった森山でも只では済まないだろう。

 どれだけ防御力を向上させたとしても、人間の肉体であることに変わりはないからだ。 



 二人の尻尾が鞭のようにしなり、標的を目がけて突き進む。


 ────ヒュゴッ!!



 二人の尻尾が、森山の身体を突き刺したかに見えたが──

 そうなる直前に、奴は高速で屋上から離脱し、危機を回避した。



「エンジェル・ウイング」


 そう叫んだ森山の背中に、天使の羽が現れて、奴の身体を飛翔させたのだ。



 上空に逃げた森山は、勝ち誇るように空の上を旋回している。

 まるで鳥のようだ。


 悪魔の尻尾は伸縮自在の武器だが、流石にあそこまで伸ばすことは出来ない。



 

「ふはははっ、どうだ!! 見たか? 汚らわしき悪魔共よ! これこそが、天界より授かりし、俺の神聖なる力────! 地を這う虫けらであるお前らは、俺に触れる事すら許されていないのだ!!」


 そう言うと森山は、上空から矢を乱射してきた。


 無暗やたらと空から降り注ぐ光の矢を、俺はオーラを集めた拳で、リリスと美羽は尻尾で迎撃する。



 空を飛ぶ敵を攻撃する手段は、俺たちにはない。


 現状では一方的に攻撃され続けるしかなかった。

 ────だが、この状況は悪くはない。


 奴は、ただの人間だ。

 森山が保有する天界のオーラも、無限ではない。


 与えられた分のエネルギーしか、その体に保有していないだろう。



 このまま攻撃させ続ければ、その内エネルギー切れで、あの羽が消える。

 そうなれば、勝手に落ちてくるだろう。


 上空から降り注ぐ光の矢は厄介だが、攻撃は単調だ。

 俺達は危なげなく対処できている。



「ぐっ、ぐぬぬっ! 何故だ! 何故、悪魔を倒せない! クソッ! 俺が直接、仕留めたかったのだが……、時間だ。次の作戦行動に移らなければ────」 


 ────作戦、時間?


 どうやらあいつは、誰かの指示で戦っている様だ。




 森山は矢を射るのを止めて、その場から高速で離脱した。



 ドヒュッ────!!



 

「────あっ! 逃げた!」


「くっ! 一方的に攻撃するだけして、逃げるなんて……」


 リリスと美羽は、かなり頭に血が上っている。



「許せません! 追いかけましょう、魔王様────!」


 リリスが追撃を進言してきた。


 空の上を飛翔して逃げた森山の姿は、もうかなり小さくなっている。

 時期に視認できなくなるだろう。


 だが姿を見失ったとしても、逃げた先は分かる。

 あいつは強力な天界のオーラをまとっていたので、その気配を辿ることは出来る。


 隠れたとしても、おおよその場所は探ることが出来るだろう。


 だが、あいつが『作戦』と口にしていたのが気になる。



 それに────


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