第43話 やったぞ! 魔王を仕留めた!!


 私は、全てを理解した。



 面太が怪我をしたのは、森山に襲われたからだ。

 そして、保健室に顔を出していないということは、まだ戦っているのだろう。


 襲われたのは教室移動の最中だろう、すると、それから50分以上が経過していることになる。相当な激戦のようだ。



 どうやら私は、慢心しすぎていたらしい。 

 森山の必殺技の完成が、私の予想より、一週間も早かったとは……。



 ────ガッテムッ!!


 私としたことが、森山に出し抜かれてしまうなんて…………。





「────連絡を取ってみます」 

 

 私は携帯を取り出して、面太と通話を試みる。

 しかし、繋がらなかった。


 私からの着信に、応答する余裕のない状況らしい。



「────これは、ヤバいわね……。探しに行きます」


 面太がアイツと戦っているのなら、早く加勢に行かなければ……。

 戦闘が繰り広げられている場所は、すでに見当が付いている。




 ────きっと、校舎裏に違いないわ!

 

 私は勢いよく、廊下を駆けだした。



 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆





 俺はリリスと美羽と共に、屋上の出入り口の前にいる。

 襲撃してきた森山を追って、これから屋上に出るところだ。


 だが、敵が罠を仕掛けているであろう場所へ、馬鹿正直に赴く訳にはいかない。

 


 俺はオーラを集めて、能力を発動する。


 能力名は『ドッペル』、自分の分身を創ることの出来る力だ。


 

 ズッ! ズズズッ……!!


 一か所に集めたオーラが人型になり、徐々に実体化していく。


 ズォオオオオ────



 そして、俺そっくりな、分身が出来上がる。





「面太君が、二人……」


「流石です、魔王様! もうここまで、オーラを使いこなすとは────」


 俺はオーラを使い、様々な能力を『発現』させることが出来る。

 従魔を作り、封印の力を弱めたことで、本来持っていた能力を復元することが可能になったのだ。




 だが、封印は完全に解けてはいない。


 今の時点で習得できる能力は、あと一つくらいだろう。


 

 どのような能力を習得するかは、慎重に選ばなければならない。


 ────だが、今はそれよりも、森山の始末が先か……。




 俺は作り上げた分身に指示を出し、屋上への出入り口を開けさせる。


 ────ギィ……。

 


 そのまま、外へと先行させた。



 ────ドッ! ドッ、ドッ! ドッ! ドスッ!!


 外に出した俺の分身に、光の矢が五つ、突き刺さる。





「やったぞ! 魔王を仕留めた!! 俺が、俺こそが、救世主だー----!!」


 森山の大声が、屋上に響いた。



 ────ダッ! ────ダダッ!!

 

 リリスと美羽が、揃って屋上へと飛び出していった。



「よくも、魔王様を────!!」


「────絶対に、許しません! 切り刻んで、魚の餌にしてあげます!!」



 矢が刺さったのは、俺の分身なんだが、それを見た二人の怒りは本物だ。


 リリスと美羽は尻尾を操り、森山に向けてそれを振るった。


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