フェティッシュな「感想」戦(選)
エフ=宝泉薫
SMAP「再結成」妄想、2016版
中居正広の引退で絶望的になったとされるSMAPの再結成。
そういえば昔「別冊宝島」でこんな記事を書いた。
2016年12月、グループが解散する直前のことだ。
当然ながら、その後の8年ちょっとで起きる、さらなる激震など予想してはいない。
そういう意味では、ややお気楽に思えるかもしれないが、こういうタイミングだからこそ、お気楽にやりたい気もする。
というわけで、お気楽につきあいたい人はどうぞ。
・・・・・・
ガチの解散、もしくは、ビジネスなき解散。SMAPの解散については、そんな表現が当てはまるだろう。一方、大半のグループの解散はそうではない。たとえ内実は泥沼であっても、キレイごとを謳い、円満を装い、最後のひと儲けをしようとする。それこそ、のちにメンバー同士の確執が明るみになったチェッカーズだって、ラストの全国ツアーを行ない、大晦日の『紅白』に出て幕引きをした。解散せずに続けていれば、数年数十年と稼げるのだ。そこはビジネスライクに考え、回収できる利益は回収するというのが、会社はもとより、本人たちにもわかる理屈である。
しかし、SMAPは違う。これ以上一緒にやりたくないというメンバーたちと、儲けよりもメンツを重んじる事務所という「感情」が「理屈」を超えてしまい、それが白日のもとにさらされてしまった。こうなるともう、解散ライヴなど不可能だし、仮に『スマスマ』や『紅白』で取り繕ろったとしても泥沼感は消せない。ファンが欲求不満にさいなまれ、何か行動したくなるのも当然だ。おそらく『世界に一つだけの花』購買運動も、解散阻止という当初の目的より、売り上げ300万枚というモニュメント作りで彼らとの思い出を美化したいという意識のほうが強くなっていったのだろう。
そんな「ガチ解散」に近い例を探すとしたら、ザ・ビートルズだろうか。こちらもメンバーや会社ごと空中分解してしまったというほかなく、もちろんラストライヴなども行なわれなかった。アイドルからビッグネームへ変化したという意味では、SMAPの大先輩でもある。また、ジャニー喜多川とブライアン・エブスタイン、オノヨーコと工藤静香という、似た感じの脇役が登場するのも面白いところだ。
当然、ファンの欲求不満も大きく、解散後はそれが再結成への渇望に変わる。その可能性は10年後、ジョン・レノンの死により永久に消滅してしまうわけだが……。では、SMAPの場合はどうだろう。これまた、再結成への渇望が高まることが予想されるものの、その実現は容易ではない。
というのも、ジャニーズ事務所がそういったビジネスにあまり熱心ではないからだ。まず、解散時ですら「ツアー」まで行なった例はなく、せいぜい一度きりである。男闘呼組にいたっては、解散理由が事務所によるメンバーの解雇だったため、予定されていた全国ツアーを中止してしまった。
再結成にはさらに消極的で、事務所草創期くらいにしかない。これはタレントの若さ、あるいは新鮮さを重視するマネジメント方針の反映でもあるのだろう。81年に「さよなら日劇ウエスタンカーニバル」が開催された際、フォーリーブスの再結成を提案されたことに対し、メリー喜多川が返したという言葉は象徴的だ。
「死んだ子たちを蘇らせてなんになるのよ。生きてる連中でやりましょう」
SMAPもまた、事務所にとっては「死んだ」も同然だろうから、再結成という蘇生はありえないわけだ。
とすれば、彼らの再結成が実現する可能性は次のふたつしかない。事務所の体質が変わるか、彼らが事務所を飛び出すか。むろん、どちらも十分ありえることだろう。そして特筆すべきは、そうやって実現するかもしれないSMAPの再結成が、ありきたりなものになりにくいということである。
なぜなら、通常、再結成には本人たちのせこい事情がからみがちだからだ。仕事がないとか、副業で失敗したとか……。また、解散時のキレイごとや円満ぶりのアピールが強いと、再結成のありがたみはさほどでもなくなってしまう。その点、SMAPは泥沼を見せられた分、どんなかたちでも盛り上がるはずだ。まして、メンバーたちが解散後に落魄することがなければ理想的である。せこい事情抜きで、かつての確執を乗り越えた彼らが帰ってきたという「ガチの再結成」「ビジネスなき再結成」が見られるかもしれない。
とはいえ、ただあっさりとスムーズに実現しても面白くない。たとえば、こういうのはどうだろう。
――解散から●年後、木村以外の4人は事務所から独立し、それなりに活躍中。中居が音頭をとるかたちで再結成話が進む。木村はオファーを断ったが、オートレーサーを引退した森が参加して、解散時とは異なる5人での再結成が実現されることとなった。
その復活ライブのクライマックス、曲間のMC中に、
「ちょっ、待てよ!」
聞き覚えのある声。なんと、たった今、事務所をやめてきたという木村が合流を申し出る。かくして、奇跡の6人SMAPがそこに甦るのだった――。
ちょっと妄想に走ってしまったが、そんな夢を抱かせてくれるのもSMAPだ。さすがは平成芸能界の怪物である。解散しても、彼らが国民的アイドルであることには変わりがない。
・・・・・・
それにしても――。
解散の翌年、2017年からこれまでに起きたことを思うと、隔世の感すら抱かされる。
ジョン・レノンと違い、中居正広が生きているのは救いだが、ジャニーズ事務所は消え、SMAPのファンにも深刻な分断が生まれた。
今後、自分がこうした「再結成」を期待する妄想を文章にすることはあるだろうか。
あるとすれば、このときの何倍何十倍も頭をひねらないといけないのでは。
それくらい、妄想すら難しい状況になってしまった。
メディアによる「私刑」ブームが令和のひとつの象徴なら、平成がいよいよ遠くなったのだという、ありきたりな感傷で締めくくっておこう。
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