第38話 自称ロミオに執着されてます。(12)後輩君編
晴樹は両手を振って、駅へと消えていく朱里の背中を見つめていた。そうして彼女の姿が見えなくなると、ため息をつきながらその場にしゃがみ込む。
「あんなの反則だろ。……はぁ。先輩、かわいすぎ」
自分を叱った時の、少しむくれた顔。弓道の大会で彼女が兄と会話をしている時に、よくしていた表情だ。それを遠巻きに見ていて、そんな顔を向けられるあの男の存在が、羨ましくも、憎かった。彼女の身内だ、としてもだ。
だから不意打ちでその顔をされて、微笑まれた時、晴樹は本気で息をするのを一瞬忘れた。心臓さえ止まっていたかもしれない。それぐらいに、彼女に対しての好きという感情が溢れ出てしまった。
ギャップあるって……。先輩の方がえぐいって──。至極格好悪いところを見せてしまった。そうであるのに、晴樹は幸せな心地で膝を叩くと、跳ねるように立ち上がって、バイト先のコンビニへとダッシュした。
居ても立っても居られなかった。
体は、まだ熱いままだ。
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