第2話:モモ〜三周目は丁寧に生きる〜
私はモモ、転生者。今は令嬢モモとして生きている。
不遇な死を迎えた私は、女神ルーネの力により、希望した「乙女ゲーム的異世界」に転生させてもらった。
そして今、女神にもらったループ能力を駆使して、令嬢モモとしての三周目を生きている。
一周目の私は、何もわからないまま、政略婚の婚約者である王子によって無実の罪で処刑された。お家断絶と不義密通の不名誉と屈辱にまみれ、私は十九年の生涯を終えた。
この最初の人生では、私を助けてくれる攻略対象者たちに出逢っていたのに、八方美人にみんなと仲良くした結果、私は誰とも絆を結ぶことが出来なかった。
王子には不貞を疑われ、攻略対象者たちが集う王子の側近団の人間関係をめちゃくちゃにしたことで、国を危うくする毒婦として排除された。
その反省から、二周目はイケメン騎士団長狙いで慎重に行動した。
この二周目の収穫は、重要な運命の分岐点がわかったことだ。
十七歳の誕生日に開かれた舞踏会、これが攻略対象者の誰かと絆を得るための最初の重要なポイントだった。
ただ注目を浴びたくて、「この世界にない踊りを披露してあげるわっ!」って動画系SNS感覚のダンスを披露して、重要な機会をフイにした一周目の私を、マジで張り倒したい。
でも二周目も失敗した。
騎士団長とは仲良くなれたけれど、王子の監視を警戒して、唇すら許さなかった私に苛立った彼は、ある日、私の両腕を掴んでその思いのたけを
で、運の悪いことにその場面が王子の書記官に目撃されてしまう。
団長は王子の婚約者である私への乱暴狼藉未遂の罪で騎士団を除籍となり、それを恥じて自害してしまった。
しかも「被害者」であるはずの私が、彼に寛大な処置を賜るよう王子に進言・擁護したことが王子の疑念を呼び、結果的に私は騎士団長を誘惑し籠絡させたふしだらな女の汚名を着せられて、やがて処刑された。
つらつらと書くと、結構悲惨な人生だ。
だがそれも、実家が領内に鉱山と良港を持つ富裕貴族家だからだ。
王子との婚約を通じて実家を姻戚にするよりも、私の処刑を通じたお家断絶で実家の莫大な資産を得る方が、王家としても都合がいいのだろう。
今、この三周目で、私は実家と自分自身を守り、クソ王子から私を救い出してくれるイケメンと結ばれるために、慎重に幼少期からの出来事を検証することにした。
だけど幼少期はとても退屈だった。
花よ蝶よと可愛がられ、最高の教育を施され、才色兼備の美少女に育つだけという波乱に乏しい生活だった。
この子ども時代は満ち足りていたが、何回も繰り返すものではないと思う。
恋のときめきや喜びに彩られた生活を、やはり私は望んでいた。
セーブポイントを設定してしまえば、もう二度と子ども時代を生き直すことは出来なくなると、女神ルーネは言っていた。それでも私は、十七歳の誕生日をセーブポイントにするつもりでいる。
だから、まだ若い両親の姿や二人にとても愛されたことは、次の周回からはもう二度と経験できない。
正直、寂しい。
けど、ループのたびに退屈な子ども時代を繰り返すのはうんざりする。それに、過去二回の人生で辿った子ども時代の思い出は、しっかりと記憶の中に根付いている。
大丈夫。子ども時代の思い出は、記憶の中に永遠に残るから。
だから私は、今生、三度目の子ども時代は本当に一生懸命に生きた。
次からは二度と経験することのない子ども時代を、私は精一杯、生きた。
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