第14話:罰(その6)「侍女の前での辱め」

朝の陽光が窓から差し込む寝室で、ムーンベリクの王女は鏡の前に座り、侍女に身支度を手伝ってもらっていた。侍女が丁寧に髪を整えながら微笑むと、王女も控えめに微笑み返す。そんな穏やかな時間を切り裂くように、寝室の扉が乱暴に開け放たれた。


「王女、話がある。」


サマルティアの王子が冷たい視線で部屋に入ってくる。その険しい表情に、侍女は手を止めて怯えたように後ずさった。王女も驚き、思わず振り返る。


「どうしたのですか?」


王女が問いかけるが、王子はその声を無視して冷ややかに言葉を続けた。


「お前、ローランシアの王子と再会してから様子がおかしいな。」


その一言に、王女の胸がざわついた。


「そ、そんなことは……ありません。」


彼女は慌てて否定するが、王子の冷たい視線は彼女を許さない。


「嘘をつくな。昨夜も一人でこっそりローランシアの王子を思い出して、体を慰めていたんだろう?」


その言葉が響いた瞬間、部屋の空気が凍りついた。侍女は驚きで息を飲み、青ざめた顔で王女を見た。


「そんなこと、していません!」


王女は涙声で否定するが、侍女の前でそのようなことを言われた羞恥で、顔が赤く染まる。


「本当か?」


王子は冷ややかな笑みを浮かべながら、鏡越しに彼女を見つめる。


「だったら、その顔の赤さは何だ?やましいことがあるから赤くなっているんじゃないのか?」


侍女はその場に立ち尽くし、震えながら事態を見守っている。王女は侍女の視線を感じながら、羞恥で身を縮めた。


「私は本当に何もしていません!」


彼女は必死に否定するが、王子の嘲笑は止まらない。


「嘘をついている顔だな。侍女もよく見ておけ。これが夫を裏切った女の顔だ。」


侍女は困惑した表情を浮かべながら、視線を逸らそうとする。しかし、その場を動けず、王女の動揺した姿を目にしてしまう。王女は涙をこぼしながら、侍女の存在がさらに彼女の羞恥を煽るのを感じていた。


「私が裏切ったなんて……そんなことありません……。」


彼女の声は掠れていたが、否定するたびに王子の追及が鋭くなる。


王子は冷たい笑みを浮かべながら、最後に言い放った。

 

「否定すればするほど、僕の疑念は深まるだけだ。お前が何をしたのか、この部屋にいる侍女も理解しているはずだ。」


王女は耐えきれずに膝をつき、涙を流しながら俯いた。侍女は手を伸ばそうとしたが、王子の冷ややかな視線に気圧され、その場で足を止めた。


「放っておけ。」


王子は冷たく言い放つと、扉を閉めて部屋を後にした。


王女は、侍女が動揺した様子で自分を見ているのに気づいた。涙を拭おうとする手も震え、声を絞り出すように彼女に語りかけた。


「お願い……このことは、絶対に口外しないで……。」


侍女は一瞬戸惑ったが、すぐに深く頭を下げた。

 

「もちろんです、王女様。」


その言葉に王女は安堵するどころか、さらに胸が締め付けられる思いだった。侍女にまで見られてしまった自分の姿――それが彼女の心に新たな屈辱と絶望を刻みつけていた。



********************



その数日後、王女が城内の廊下を歩いていたところ、廊下に隣接する部屋の清掃をしていた侍女たちのひそひそ話が耳に入ってきた。


「王女様が、サマルティアの王子様以外の男性を思い浮かべて自分をお慰めになっていたそうよ。」


「ええ?あの清楚で誠実な王女様が?信じられない!」


「でも、その場にいた子が言ってたのよ。本当の話なんじゃない?」


王女の足は止まり、耳に入った侍女たちの会話が頭の中で何度も反響した。息をするたびに胸が痛み、羞恥と怒りが入り混じった感情が体を突き抜ける。


「どうして……どうしてあの子が……」


侍女に口外しないように頼んだあの時のことが脳裏に浮かび、裏切られたという思いがこみ上げてくる。それと同時に、侍女たちの言葉の内容が、まるで自分の人格を否定されるように感じられ、耐え難い羞恥が襲いかかった。


さらに、次の一言が耳を打った。


「まさか……王女様って、裏では淫らな方だったりして?」


その言葉に王女の心は砕かれた。顔から血の気が引くのを感じたかと思えば、次の瞬間には全身が熱くなり、体温が上昇しているのがわかった。羞恥の感覚が、冷静さを奪い去る。


脚から力が抜けそうになり、王女は壁に手を突いた。手袋越しでも冷たい石の感触が伝わり、その一瞬だけ現実に引き戻される。それでも、膝は震え、全身が羞恥に支配されていることに抗えなかった。目に涙が浮かびそうになるのを必死にこらえる。


なんとか内股に力を入れ、その場から立ち去ろうとしたその瞬間だった。


ぐちゅぅうう……


内股にぬめり気のある感触が伝わり、王女は驚いて足を止めた。一瞬、何が起きたのかわからず、困惑するばかりだった。しかし、その感覚が王子との夜の生活で覚えのあるものであることに気づいたとき、全身に冷や汗が滲んだ。


「どうして……」


王女は信じられなかった。侍女たちの自分を貶めるような噂話を耳にし、羞恥と絶望の狭間で身体が感じてしまったというのだろうか。心が傷つき混乱しているというのに、王女の淫らな身体はその心を裏切るように反応してしまったのだ。


「これでは……本当に私は……淫らな女……」


王女の心は羞恥と絶望に押しつぶされそうになり、頬を伝う涙は止めどなく溢れていた。膝から力が抜け、気高さを保っていたはずの身体も、とうとう自分を支えきれなくなった。崩れ落ちそうになるその瞬間――。


「大丈夫か、王女。」


低く穏やかな声が耳元で囁かれた。侍女たちには聞こえないよう、注意深く抑えられた声だった。振り返る間もなく、彼女の身体はそっと支えられる。


そこにいたのは、夫であるサマルティアの王子だった。彼の腕が、まるで壊れ物を扱うように彼女の腰を支え、優しくその尻を下からそっと押し上げるように支える。


「あ、ありがとうございます……」


王女はか細い声で呟きながら、王子の胸にそっと身体を預けた。その胸元から伝わる温もりが、冷え切った彼女の心をわずかに和らげた。しかし、心の奥底には、侍女たちの噂話や自らの反応への羞恥心が残っており、完全に安らぐことはできなかった。


王子は何も問わず、ただそっと彼女を支え続けていた。その無言の優しさが、彼女にとって救いでもあり、同時に罪悪感を伴うものであった。


「もう大丈夫……」


王女がそう言いかけたその瞬間、何かが違和感として彼女を襲った。


夫である王子の手が、支えていた位置からずれ、王女の敏感な部分に触れたのだ。


ぐちゅ……ぐちゅぅうう……


「……んんんっ!」


湿った音とともに、王女の口から艶やかな声が漏れた。王子は気にせず、ピアノを弾くように人差し指と中指を交互に王女な敏感な部分に押し当てた。


くちゃ……ぐちゃ……ぐちゅぅ……くちゅ……


「あぁっ!……はぁ!……んんっ!……うぅっ!……」


王女は声が漏れないように、必死にその唇を王子の胸に押し付ける。王子は彼女の熱い呼吸を服を通して感じていた。


「どうした、王女。こんなにも乱れてしまって……」


王子はわずかに眉を上げ、呆れたような表情で彼女を見つめた。その視線に、王女の心臓は強く跳ね、全身に羞恥が駆け巡る。


「こ、これは……」


王女は声を絞り出そうとしたが、言葉がうまく紡げない。口を開けば開くほど、自分の気持ちや状況を正当化できないように思え、ますます追い詰められていった。


彼女の頬はみるみるうちに赤く染まり、視線を下に落とすしかなかった。心臓の鼓動が耳元で響くように感じられ、自分の情けなさに押しつぶされそうだった。


「……発情したらどうしろと調教したかな?メス豚のお姫様。」


『メス豚』その一言が王子の口から放たれた瞬間、王女の心に鋭い矢が突き刺さるような羞恥と屈辱が押し寄せた。身体は小さく震え、彼女の胸の奥で複雑な感情が渦巻く。


「私は……メス豚……。」


幾度となく夫に強要された言葉だった。しかし、これまでは心の中では否定していた。自分は名誉あるムーンベリク家の令嬢なのだ、そんなものであるわけがない、と。しかし、今回に至ってはその言葉が今の自分にふさわしいとすら思えてきてしまう。噂話に傷つき、感情を乱され、羞恥と屈辱にまみれた心に敏感に反応してしまう身体――それこそが「メス豚」なのではないかと。


羞恥とともに罪悪感が彼女の心を締め付けた。自分は王族として、淑女としてふさわしくないのではないか。そんな考えが頭をよぎるたびに、胸が苦しくなり、涙が滲んだ。


自分をメス豚だと認めつつある王女は、意識せずに王子の胸に身体を寄せた。彼の温もりに触れることで、少しでも心を落ち着けようとするかのように。小さく鼻を鳴らし、甘えるような声が無意識に漏れる。


「……メス豚に……どうぞお情けをくださいませ……」


かすれた声で呟く彼女に、王子は静かに視線を落とした。

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