忘れられた魔道と機械の時代を駆ける騎士たち

蒼空ユウ

第1話 若き騎士、初陣に挑む

広がる青空の下、王国と帝国の国境地帯には、ただならぬ緊張が満ちていた。風に揺れる草原の静けさを破るかのように、重厚な機械音が響き渡る。王国軍第七機甲騎士団は、最新鋭の人型兵器「オメガフレーム」を戦列に並べ、帝国軍の侵攻を迎え撃つ準備を整えていた。


「敵機接近。全員、迎撃態勢をとれ!」


鋭い命令が、通信回線越しに響く。第七機甲騎士団を率いるギルフォード少佐の声だ。その冷静で重みのある声音は、部隊全体に緊張感とともに確かな指針を与える。


「は、はい!」


リオン・アークライトは、オメガフレームの操縦席で緊張を抑えきれずに返事をした。まだ若き騎士である彼にとって、今日が初めての実戦だった。訓練では何度もシミュレーションを繰り返してきたが、実際の戦場はその比ではない。心臓が激しく鼓動し、汗が額を流れる。自分がこの戦場で何を残せるのか、不安と期待が渦巻いていた。


リオンが搭乗する「オメガフレーム」は、王国が誇る最新鋭の人型兵器だ。魔石エンジンによる安定したエネルギー供給が特徴であり、魔導機械技術を結集した堅実な設計だ。主武装はアサルトライフルと近接戦闘用のナイフ。量産性と汎用性に優れている。まさに現代戦争の主力兵器と言える。


「落ち着け、リオン。敵の動きは予測通りだ。」


通信越しに聞こえてきた声に、リオンはわずかに肩の力を抜いた。隣でオメガフレームを操るベテラン騎士、カール・レンフォードだ。彼は戦場経験も豊富で、リオンたち後輩たちを気にかける兄貴分のような存在だった。


「ありがとうございます、カールさん。でも……やっぱり緊張しますね。」


「最初はみんなそうだ。だが、敵を目の前にすれば、頭より体が動くさ。」


カールの言葉は、リオンの中でじんわりと力になる。だが、戦場は待ってはくれない。


「敵機接近、距離500。全員、攻撃準備!」


ギルフォードの命令が再び響き、リオンはアサルトライフルをしっかりと構えた。視界の先には、帝国軍の旧型フレームが10機ほど、砂塵を巻き上げながら迫ってくる。オメガフレームと比べれば明らかに性能は劣るが、数で押されれば危険だ。油断は禁物。


「リオン、右側の敵機を引きつけろ。左の処理は俺たちがやる!」


カールの指示が飛ぶ。


「了解!」


リオンは操縦レバーを握り直し、右側の敵機に照準を合わせた。冷や汗が手のひらを湿らせるが、引き金を引く手に迷いはなかった。


「……撃つ!」


連射される銃弾が敵機の脚部に命中する。ガキンッと甲高い金属音を立てて、敵機の膝関節が破壊される。バランスを失った機体は地面に崩れ落ち、動かなくなった。


「ふむ、初陣にしては悪くない。」


ギルフォードの淡々とした評価が通信越しに響いた。


「ありがとうございます、隊長!」


リオンは息を整えつつ、新たな敵機に標準を移す。今度は距離が近い。アサルトライフルでは間に合わないと判断し、近接用のナイフを抜き放つ。


「これで……!」


オメガフレームの重量を活かした加速で敵機に接近、一閃。鋭い軌跡を描いたナイフが敵機のコックピットを貫いた。機体が火花を散らし、爆発音が響き渡る。


帝国軍は次々と撃破され、残存機体は散り散りに撤退を始めた。


「追撃は不要だ。陣形を整えて、周囲の警戒を怠るな。」


ギルフォードの指示に従い、第七機甲騎士団はその場で陣形を整える。リオンは深呼吸をし、初めての戦闘の余韻に浸った。


「これが実戦……思ったよりも体力を使いますね。」


コックピットの中で独り言のように呟く。


「まあ、お前にしては上出来だ。だが、次はもっと動きが速くなるぞ。」


カールが笑いながら声をかけてくる。


「ありがとうございます、カールさん!」


だが、その緊張が完全に解けることはなかった。


「リオン。」


ギルフォードの厳しい声が、再びリオンの耳に届く。


「初陣としてはよくやった。しかし、これで満足するな。戦場はもっと厳しい。お前の力が本当に試されるのはこれからだ。」


「はい、隊長!」


リオンは背筋を正して返事をする。だが、その胸の奥では、まだ拭えぬ不安がくすぶっていた。戦場の厳しさはこれだけでは終わらないと、本能が告げている。


そのとき、遠くの地平線の向こうに、黒い煙が立ち上るのが見えた。帝国軍の動きが、ただの前哨戦ではないことを示していた。リオンは息を呑み、思わずその光景を見つめた。


「これは……?」


ギルフォードもその煙を見据える。


「どうやら、これからが本番のようだな。」


緊張が、再び戦場に満ちる。リオンの心臓は、再び高鳴り始めた。


――そして、物語は動き出す。

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