眠れない夜もそばにいる
青山海里
第1話
目を閉じてから、どのくらいの時間が経っただろうか。
30分、いや、もっとかもしれない。
ブルーライトなんて浴びたらもっと眠れなくなるとわかっているはずなのに、枕の下に置いたスマートフォンについ手が伸びる。
「…っ眩し」
スマートフォンに表示された時刻は1時47分。0時過ぎにはベッドに入っていたのに、もう2時間近くが経ってしまっていた。あと4時間後には起きないといけないと思うと気が滅入る。
「はぁ…」
思わずため息が出た。
麻里子の寝つきが悪くなったのは、いつからだっただろう。
『まりちゃんはいつでもどこでも眠れてうらやましいわぁ』
『麻里子寝すぎ!あんたどんだけ育ちたいの?』
小さい頃から親戚の家に行っては寝て、授業中もうたた寝しては友達にバカにされていた。本当に、よく寝る子どもだったのだ。眠れない日が来るなんて思いもしなかった。
大学1年目。毎日生きていくだけで必死だった。
奨学金の返済に充てるため、授業が終わるとすぐに居酒屋のアルバイトに向かう日々。空きコマの時間には、大学生協のカウンターでも働いた。弟の秀樹が私立の高校を目指していると知ってからは、微力ながら秀樹の学費に回せるようにと、実家に仕送りも始めた。麻里子の家庭には父親がいない。
大学に入ったら2人でダンスサークルに入ろう。そう約束していた高校時代からの友人は、麻里子がアルバイトでサークルに参加できないことを伝えると、あからさまに麻里子を避けるようになった。最近気づいたが、彼女は裏で麻里子の陰口を言っていた。実家が貧乏でかわいそうだ、と。
高い教科書を買わなければならない授業にも、同じ授業を取っている子たちの会話にも、あっという間についていけなくなった。
いつの間にか麻里子は、大学で常に一人ぼっちだった。
もっとキラキラした女子大生になるはずだったのに。こんなはずじゃなかったのに。
去年の今ごろ受験勉強を必死に頑張っていた自分に、あなたが行きたい大学に行けて本当によかったと涙していた母親に、毎日勉強を見てくれていた担任に、申し訳なかった。
自分が心の底から情けなくて、もういっそのこと、目が覚めなかったらいいのにと、寝る前にそんなことを思うようになった。それがいつからだったかは、詳しいことは覚えていない。でも、気づいたらそんなことばかり考えてしまって、だから今日も麻里子は眠れない。
ブブッ、ブブッ。
突然麻里子のスマホが震えた。
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