第13話 灯の見つけ方
村の朝はいつも穏やかだ。窓から差し込む陽の光に目を覚ましたユウキは、静かな気持ちで布団から体を起こした。都会の喧騒から離れてしばらく経つが、この平穏な時間にはまだ慣れない部分があった。
「おはよう、ユウキ。」
サキが微笑みながら茶碗を差し出した。手にした温かいお茶の香りが、彼の眠気を心地よく吹き飛ばす。
「今日は特別な場所へ案内するよ。」
サキの言葉に少し驚きながらも、ユウキは素直にうなずいた。
道なき山道を進んでいくと、やがて視界が開けた。そこには美しい湖が広がっており、透明な水面が青空を映し出している。その光景に思わず息を呑むユウキ。
「ここはね、村の人たちが『灯の湖』って呼ぶ場所なんだ。」
サキが湖畔に腰を下ろしながら語り始めた。
「この湖には、心の中に隠れている灯火を映し出す力があるって言われているよ。でもそれを見つけるには、自分の中の静けさを見つける必要がある。」
ユウキはその言葉の意味をすぐには理解できなかったが、湖の静けさに誘われるように、その場に座り込んだ。
しばらくの沈黙の後、サキがそっと口を開いた。
「ユウキ、今のあなたは何を感じている?」
「…静かだけど、少し怖い気もする。自分の心に向き合うのが、こんなに難しいなんて。」
サキは頷きながら続けた。
「それが自然なことだよ。でも、その怖さの中にも、きっと小さな光がある。それを見つけるには、焦らずに自分の心と対話することだ。」
ユウキは目を閉じ、サキの言葉を胸に刻みながら湖に向き合った。都会での苦しい日々、失敗、自己否定。それらが次々と頭をよぎる。しかし、サキの言葉が支えとなり、その記憶に飲み込まれず、ただ静かに見つめることができた。
やがて、彼の心の中に小さな感覚が芽生えた。それは、これまで気づかなかった自分の中のわずかな希望だった。
「僕…気づいたよ。あのとき、どんなに辛くても逃げずに頑張った自分がいた。それを今まで認められなかったけど…それも僕の一部なんだね。」
目を開けたユウキが、涙ぐみながらサキに向かって言葉を紡いだ。
「その通り。ユウキ、それがあなたの『灯』だよ。」
サキは優しく微笑みながら肩に手を置いた。
「灯はね、大きくなくてもいいんだ。小さくても、それを見つけたことで心は暖かくなる。そしてその灯は、あなたが生きるための道を照らし続けてくれる。」
その帰り道、ユウキは心の中に生まれた静かな暖かさを感じていた。小さな光だが、それは確かに彼の内側で輝いていた。そしてその光が、これからの未来を切り拓く力になると信じられた。
家に帰り着くと、サキがそっと一言告げた。
「どんなに暗い夜でも、灯があれば前に進めるものさ。」
その言葉がユウキの胸に深く響いた。心の中の小さな灯火は、彼にとって新たな始まりの象徴だった。
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