第6話
目を覚ます。
隣には湊さんがいた。人の温もりを感じながら目覚め、こんなにも好きな人の側で朝を迎えられるなんて幸せだ。
机の上に置いていたスマホを取ると、「やば」と声を出してしまった。
その声で湊さんは目を覚ました。
「ん?どうしたの朝陽」
「もう九時・・・」
「え?」
がばっと起き上がった湊さんは、朝陽仕事遅刻。と言った。
俺は湊さんを見たらなんかどうでもよくなって、いいや。と言って湊さんに抱き着いた。
「いいやって、仕事どうするの?」
「行かない」
「行かないって・・・」
「後で連絡しとく。熱がでたって言って」
湊さんは俺をぎゅっと抱きしめた。この温もりをずっと感じていた。
初めて仕事を休んだ。有休も沢山余っているし一日くらいいいだろう。それに俺は役立たずだ。いなくたって何も変わりはしない。
湊さんと一緒に家を出て、湊さんはバイトへ向かった。俺は家に帰った。家に着き、会社へ連絡を入れた。熱が出たので休みますと。お昼過ぎの連絡にもかかわらず、電話に出た先輩は、そう。とだけ言った。こんなものなのだ。蓼丸さんだけは心配のメールをくれた。
『お昼誘いに行ったのに来ていないと言われたから心配で連絡してみたよ。大丈夫?』と。俺は、心配かけてごめんなさいという旨の返事をした。
休むのなんてこんなものなのだ。今まで積み上げていたブロックが音を立てて崩れ落ちていくのを感じた。もういいのかもしれない。そんなに頑張んなくたって。お金ならなんとかなるだろう。正社員が無理なら湊さんみたいにバイトだっていい。それだって立派な仕事だ。何を今までこんなに我慢していたのだろう。馬鹿みたいだ。
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