戦友
鍵を見つめ、ハミットは頭痛を我慢しながら思い出そうとする。
「お母さんは、タブレットは持ってなかった?」
「父が亡くなってから、使用しなくなった。どこにしまったのかわからないけど。捨てたとか返した話しもしてなかったなぁ」
母に聞いた事はあったけど、携帯用に変えたからとしか言わなかった。
タブレットには2タイプあり、普段多くの人が利用する手持ちのタブレットと、携帯用タブレット。腕時計のように手首に巻き、通話やフォトはできるけどメールは出来ない。GPSや脈拍モニター機能等がある。
無法地帯に赴く人には必需品だ。
「アンナは?メールは使ってる?」
「使ってるよー。学校の友達とか」
「学校……そういえば高校生って言ってたね。学校はどう?」
「まあまあ」
「高校か、いいね……」
「ハミットは?高校生の時はどんなだった?」
「俺は高校には行ってないんだ」
「え?じゃ働いてたの?」
「十七には士官学校にいた」
「あ、そうか、軍人だったって言ってたね」
「元ね」
ハミットはジョルジュがメールを送った相手、マリア。つまりアンナの母親だと知った。
だから、マリアがハミットの名ではなく、ジョルジュを尋ねろとメモにあった事に合点がいった。
内容は司令官であるオーガストと会わないと教えてもらえないというので、ハミットは苛立ちを覚えた。
「ねえ!」
「……⁈」
「私の話聞いてる?」
「ごめん」
「だから、ハミットの昔の話を聞きたい」
「うーん……あれ?そういえばジョルジュの事が分かったって言ってなかった?」
アンナが少し動揺したように見えた。
「う、うーん、そうなんだけど、自信ないの。だからまずハミットの事もう少し知ったら分かってくるかなって気がして」
ジョルジュに関わる俺を知りたいと言うのは当然の心理だ。でも何か変な感じがした。
「じゃあ、どんな事が聞きたいの?」
「まずクラブやラッキーベル、あとアーモンドとの出会い聞きたいな」
「ああ、それなら……」
約二十年前、戦前のフロンティアに住んでた時があった。
戦前のフロンティアは今みたいな都市でなく、普通の町だった。
俺はとある高校の事務職に就いていた。
勉強にクラブ活動、生き生きしてる生徒を見ると元気をもらってた。
アーモンドはその頃からボスと呼ばれていた。ギャングも相手にならない位喧嘩が強く、学校を牛耳るように彼が来ると道が避けて出来ていた。
それにものともせず、クラブことサムとダニエルは反発してたんだ。
「え、サムもダニエルももしかして喧嘩強いの?」
「それが、強くも弱くもないんだけど、アーモンドには敵わないのにも拘らず、食って掛かかっていた。アーモンドが女子や気弱い生徒を怖がらせていたからだろうね。特にサムは口達者だから、アーモンドを言い負かしたりしてた。でも本当見てて飽きなかった。スポーツ大会とか学力テストとか常に競ってたし」
そんなある時、学生だと思われた俺に何故かアーモンドが対マンふっかけてきたんだ。
「おい、その筋肉、さてはお前も喧嘩強いな?」
とか俺に言ってきたんだけど、
「いや、俺職員だし、喧嘩は問題になるからやらない」
「なんだ先公かよ……。まあいいや。先生、まずはバスケで勝負だ!」
「えっ、マジでやるのか」
「スポーツなら公平だろ?それとも腰抜け先生って呼んでいいのか?それともモグラ先生か?」
「……」
挑発に乗ったわけじゃないけど、他の先生が生徒に付き合うのも教育とかなんとか言いくるめられて、仕方なくやるしかなかった。
しかし、アーモンドは俺に負ける。
「これでも手抜いてんだけど。ちゃんと一つに絞って練習した方が……」
「うるせえ!次はフットボール!」
「スイミング!」
「トランプ、カードバトル!」
「シャトルラン!」
「筋肉関係ないのあるよな?」
俺に敵うはずもなく、コテンパンに……まあ、それなりにいい勝負だった。
「何だよ、先公。めちゃめちゃ強ぇじゃねえか。何かスポーツ顧問してんのか?」
「いいや、ただの事務員だ」
「ウソつけ!」
それを見てたサムとダニエルは、途中でアーモンド側に参戦して、俺に対抗してきたんだ。
最後バレーボールは、彼らの連携プレーに負けて終了。
「そしたら、三人仲良くなってたなー。口喧嘩は昔も今もしてるけどね」
玄関から大きい身体が現れる。
「そうそう、そんな事あったな」
「アーモンド隊長!」
「あ、不良生徒が来た」
思わず吹き出して、アンナはアーモンドを見る。
「昔の話だ!まさか生きてたとはな。びっくりしたぞ。フロンティアでクラブとラッキーベルから聞いた。しかも、司令官に報告したら、「またか」って。司令官とハミットはどういう関係なんだ?」
たまに話に出てくる司令官って、アーモンドの上司って事よね?
「古い知り合いだ。で、あれは救助車か?」
「南の軍事施設に行く途中だ。救助車が足りないんだと。色々足りないのはこっちもなんだがな。しかし先生……いやハミットが生きてた事より、クラブがあんな数の弟子連れて来たのには驚いた。しかも俺の隊員の数で対抗してきやがった」
「対抗するの好きなんですね」
「当たり前だ。ライバルは俺の励みなんだ。そいつが鍛錬してると、負けじと生きる活力と気力が湧いてくるんだ」
「ライバル……わかる気がする」
「アーモンド隊長、応援してます!」
「おう!そのうちアンナもうちの隊員に来るの、大歓迎だぜ!」
「それは……考えておきます……」
「そうそう、ワームを倒した後、どうやって生きて帰ってきた?」
「あー……」
ワームと戦った後まさか裸でライザさんに拾われたなんて、ちょっと恥ずかしくて私から言えない。
そこに痺れを切らした隊員が声をかける。
「隊長!時間遅くなります!」
「まあ、司令官との事も含めて、後で聞くわ。じゃあな」
外で待っていた隊員達がハミットに敬礼して、軍用車で行ってしまった。
そんな例の司令官とハミットは会う用事があると言って、スーツを着込む。
「え、ネクタイのやり方⁈」
「その仕事行ってた二十年くらい前まではやってたんだけど、すっかり忘れちゃって……」
「そうゆう所、ホントおじいちゃんよね。私もお父さんがやってたのを見様見真似だから、ちゃんとできるか分からないよ?」
「すまんのう」
私はネクタイを締めてあげて、ハンカチを持たせる。
ただスーツ着ただけなのに、美麗な顔立ちなのはもちろん、艶やかな白髪と体格のせいか映え過ぎて、逆に一緒に歩きたくない。なぜなら殺気や憐れな視線が私に飛んできそうだから。
「ホントは女の子ひとりを留守になんてしたくないし、断れるなら断りたい所なんだ。何かあったら、すぐ連絡して?」
「わかったわよ。ライムもいるから大丈夫よ」
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