錆びた遺物②
「⁉︎」
顔がほぼない、この前の奴同様。マスクみたいになんとなくあるだけ。
4、5メートルはあり、蛍光色のイボが体中にある。
振り向きハミット達に気付き、拳を振り上げる。
なんとか避け二人は降り、アンナはバイクを岩陰に急いで移動させる。
「隠れてろ。銃はあるか?合図するまで出てくるな」
「わ、分かった!でも……」
アンナは銃を懐に隠し、岩場に隠れる。が、村長の様子を気にしていた。
エボルバーがこっちに歩いてくると、ハミットが木の上にジャンプして、気を逸らしアンナから離れるよう木々を渡り誘導する。
崖に着き下を見ると、冷蔵車が岩場に引っかかっているのを発見する。中に村長が動かないようなので、ハミットは飛び降りて割れた窓から鍵を解除しドアを開け、呼吸と脈拍を見る。
頭から血を流しているが、ただ気を失っている様子に安心する。軍用ロボは壊れてしまったようだ。
「ハミット!村長さん大丈夫⁈」
「ああ、息はあるが出血してる。今村長を……」
崖の上からアンナが見下ろす、その後ろに巨体の陰がぬっと現れる。
「アンナ!後ろ!」
「え?きゃああ!」
エボルバーがアンナを掴み、ハミットが飛び跳ねるように登る。エボルバーはぎゅうと片手でアンナを締め付け、アンナは悲鳴を上げる。
「く、苦しい!助けてー!」
ナイフで腕を切り落とし、アンナを掴んでいた腕は塵になり消える。が、ハミットは後ろから腹を蹴り上げられ、飛ばされてしまう。
「ぐあ!」
「ハミット!」
エボルバーの腕が再生され、再びアンナを掴み、今度は抱えて、身体の中に取り込もうとする。
「いや!ハミット!助けてー!」
アンナは泣き叫び、必死に足掻く。しかしその腕力は彼女の解放を許さない。
エボルバーの攻撃は武術のようではあるが、何分重そうな動作で、水噴射の攻撃する。なら弱点は分かる。
右手が自由なアンナはなんとかテーザー銃を取り出し、顎下から発砲。痺れたエボルバーは再び彼女を解放し、ハミットはその隙を逃さない。
「アンナ!それ、こっちに投げろ!」
「はい!」
素早くエボルバーに近づき、キャッチしたテーザー銃を再度当てて中に何か光るのを確認する。
「アンナ!大丈夫か⁈痺れてないか?」
「う、うん……ちょっとビリッとしたけど大丈夫」
そして、中枢にあるコアが薄ら光る箇所に勢いよくそれを体の中に突っ込み、コアに当て感電させた。
エボルバーは大きな轟音を立てて倒れ塵と消える。
そこに錆びた小さな金属板が残り、ハミットは拾いあげる。
刻まれた名前にハミットは顔色が変わる。
ーーー
「マット、水飲めよ」
若かりし軍人だった頃のハミットは、自分よりも細いマットに水が入った瓶を渡す。
訓練中休憩をとり、お互いに汗をかき、マットは息切れしていた。
「ありがとう。お前全然息荒くないな、タフだよな」
「いいやそんな事ないって。訓練は厳しいけど、これに耐えないと前衛の彼らに追いつけないしさ」
「まあな。でも俺はこのままでいいかな。この隊員に入れたのは運が良かった。グエンに戦争なんて行きたくなかったし、定年になったら故郷の高原に帰って牧場をやるつもりだ」
「高原?」
「ブリリアント高原だ。あの広大な地と澄んだ空気が恋しいよ」
ーーー
遠い目で故郷を語るマットをハミットは思い出していた。
いたたと呟きながら、アンナは駆け寄り小さな金属板を見る。
「え?それ、ドッグタグじゃない」
「ああそうだ。よく知ってるな」
「学校や警備隊の人に見せてもらった事あるから。普通二枚あるって聞いたけど、これは一枚だけね」
「多分もう一枚はコイツの家族に渡したんだろう」
「このロブさん達が言ってたエボルバーって怪物よね。元は軍人だったんだ。これでやっと解放されたって事なのかな」
「だといいな。って、アンナ、怪我してないか⁈」
「え?大丈夫だよ。ハミットは?」
「ああ、問題ない」
「あ、ごめんなさい。崖から落ちたと思ったから、怪物はもういないと思って出てきてしまったの」
「気にするな。無事ならそれでいい」
その後、村長を救出。車内にあったロープを使い、車を窪みに引っ張り安定させた。
地面にゆっくり寝せると、村長が気が付いた。
「ああ、ハミットか……」
「苦しい所痛い所はないか?」
「大丈夫大丈夫、頭だけだ。ちょっと、い、息が……んはあっ」
「打撲か。すぐ救助が来るから」
そこにタイミングよく、アーモンド連隊と、ロブ達が物音で揃ってやって来る。
「おい、無事か⁈救護係!」
「はい、軽い脳震盪と肋骨二本程折れてますね。打撲は軽症で命に別状はないと思います。ひとまずフロンティアの病院に運びましょう」
「すまんのう……」
話によると、もうすぐ高原の村という所で、あのエボルバーが走って追いかけて来たと言う。
焦って逃げたもののエボルバーに追い付かれ、冷蔵車が蹴られて崖手前までふっ飛び、そのまま滑落してしまったそうだ。
今度は4トンの冷蔵車に買い換えるとか。
あんな目に遭ってもまだ乗るのかと知り合いの間で呆れるも、村長のタフさに安心していた。
ハミットや知り合い達が村長の見舞いに来て帰る途中、アーモンドが待っていた。
「よう」
「アーモンド」
「カミさんもこの前までここの病院に入院してたんだ。今は家で療養してるよ」
「回復して良かった。はい」
と、タグをアーモンドに渡す。
「また、知り合いだったのか?」
「ああ」
「司令官に報告書しておく。これの調査は司令官に任せてあるからな」
「彼を……」
「ん?」
「そのドッグタグ、そのうちブリリアントの村に埋めてあげてくれ」
「ああ、分かった。出来る事はしよう」
ーーー
「全く、軍人は死との隣り合わせだ。訓練に挫けてたら、故郷に帰るどころじゃないぞ」
マットとハミットが休憩して話してると、眼鏡をかけたカイルに叱咤される。
「あ、カイル。少し休んでるだけだから……」
「全くお前達は甘いな。私は誰も死んで欲しくないから言ってるんだ」
「わかってる。それは誰も同じだ」
生真面目で自分にも他人にも厳しいカイルは、時間があれば訓練していた。
故郷の話は一切した事はなく、フロンティアの郊外という事しか知らない。
まさかカイルもマットもエボルバーという怪物になって、再会するとは……。
理性は失っていたが、きっと無意識に故郷に帰ろうとしていたんだろう。
カイル・ウィリアム。
マット・カーター。
やはりエボルバーはあの軍隊のメンバーか……。
すでに何個か見つかっているのは聞いている。
これからも仲間だった者達と対峙するのかと思うと……。
やめよう。今は亡き彼らが安らかに天に召されるよう祈りを捧げる。俺が出来るのはそれだけだ。
ハミットは高原の村長にマットの話をし、遠くにそびえる山岳を眺め追悼した。
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