第4話

「あと買うものなかったかな……あ!アレ!美弥来い。あ!走んなよ、歩けよ!」


颯は、人差し指で今から行くコーナーを指差してから、カートを押し、空いた掌で私の手を引いた。


颯は、私の妊娠が分かってから、歩くときは必ず手を引いてくれる。プライベートの時は、嬉しいのだが、私達の婚約が会社でも公になってからは、颯は、会社でも私の手を常に引いている。


(颯って……私に意外とベッタリ?)


最近は、私の隣にデスクを追加して、副社長の仕事を企画営業第一課の事務所でする始末で、さすがの千歳も呆れていた。


「お、結構種類あんのな、メーカーだけでも8社か」


颯が、早速1番手前のベビーカーを広げてみている。


「なぁ、美弥、子供ら、縦に上下に乗せるのと、横に並んで乗せるのとどっちがいい?」


颯は、ベビーカーの展示用に置いてあった赤ちゃんの人形を持ってくると、大事そうにそっと、乗せた。


「マジちっちぇな……俺、抱っことかできんのかな」


颯が、パパになるなんて、何だか信じられない。どんなパパになるんだろう。


でもきっと、何だかんだといいながらも私と同じように愛を注いで、生涯大切にしてくれるのだろう。

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