第3話

「颯、女の子産まれたら溺愛しそうだね」


「まあな、俺の女だからな」


颯は、カートに、クマ柄と、ウサギ柄の新生児用の洋服を放り込む。


私は、俺の女という言葉が可笑しくて、一人でクスクスと笑う。


「じゃあ、男の子産まれたら、私の彼氏だね」


「それはダメ。美弥の男は、俺一択」


「え、そなの?!」


「当たり前だろが、誰が、他の男作っていいなんて言ったんだよっ」


(なんて、無茶苦茶な……)


思わず目を見開いた私を眺めながら、颯が、拗ねた顔をした。


「颯?どしたの?」


「なんでも……ねぇよ」


最近、颯は、こうやって時々拗ねることがある。決まって赤ちゃんの話をしている時なのだが、理由が分からない。


「そろそろ、お会計いく?」


既にカートは、大量のオムツに新生児用の布団が2組、ミルク缶に哺乳瓶が20本入っていて、溢れそうになっている。

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