かつて世界を脅かした魔王サタンは勇者ルシフェルによって葬られた――というのが、史実であるはずだった。
ルシフェルと共に魔王サタンを討伐した魔法使いアンジェリーナの末裔・小鳥遊杏の前に、「ミカエルに羽と名を奪われて堕天させられた」と語る魔王サタン――いや、ルシフェルが現れるまでは。
つまり勇者と伝わっているルシフェルは本物のルシフェルを陥れて成り代わったミカエルであり、天界と人間界を欺いた大嘘つきなのだ。
この嘘を暴いて世界に真実を伝えるため、杏とルシフェルはミカエルに立ち向かうのだが――。
天使、魔王、勇者、魔法使い――異世界ファンタジーではなじみ深い設定が現代ファンタジーの世界観に自然と馴染んでいるのが新鮮で、上手いなぁと思いながら読み進めさせていただきました。
こちらの作品の魅力は、何と言っても主人公の杏のひたむきさでしょう。
彼女もアンジェリーナのように魔法を扱うことができます。しかも天使たちが驚くほどの規格外の威力です。
ですが杏は、友だちに囲まれ、父を愛し、たまにガサツな言動をしてしまう、どこにでもいるような女子高生。
そんな彼女がルシフェルと共に狡猾なミカエルに立ち向かう様は、素直に「がんばれ!」と応援したくなります。
人ならざるものたちの物差しは、人間の想像力や意思を軽く覆します。
美しく、時に傲慢な天界の使者と創造主。彼らに翻弄された杏がルシフェルと共に迎えた結末は、読了後もほんの少しの痛みとなってしばらく胸に残り続けました。それでも「これでよかった」と思えるハッピーエンドが待っています。
等身大の女の子が強大な敵に立ち向かう現代ファンタジーがお好きな方、そして男女バディがお好きな方は、ぜひご一読あれ!