生まれ変わった僕の与太話

久火天十真

第1話

 あなたは生まれ変わりを信じるだろうか。

 こんなことを聞く僕はというと、生まれ変わりを信じていない。いやこれは少しニュアンスが違うな。信じていないというより、信じたくなかったという方が正しい。

 生まれ変わり……。生まれ、変わり……。

 なんて甘美な響きだろうと思うよ。来世、前世、そんなものがあるだなんて考えるだけでもワクワクするものだ。そしてその言葉の前では死すら希望となり果てる。

 なんて素晴らしいんだって思うよ。


 僕にはそれがどうしても嫌だった。

 こんな皮肉たっぷりな言い方をしていることからもわかるだろうけれども。

 だってそうだろ?

 今を懸命に生きている人たち、その苦痛も喜びも楽しみも悲しみも何もかもすべてがやり直せるんだ。無かったことにはならなくとも、それらすべてを新たな人生でやり直せるんだ。

 そんなのはあまりに救われて、あまりに救われないじゃないか。

 魂は救済されるのかもしれない。でもそこに置いてきた前世の僕は一体どうなるんだろうね。そこに置いてきた人生は、曲がりなりにも歩んできた道の全てなはずだ。

 そんなの、本当に救われないよ。

 

 僕がこんなことを思うのは、きっとそれなりに恵まれた人間だからなんだと思う。こんなものは恵まれた人間の戯言かもしれない。


 こんな話をしたのは、これから見ることに関係するよ。

 ここまで言えば予想がつくだろうけれど、これから見るのは僕の生まれ変わった話だ。

 世にも奇妙な生まれ変わりの話。

 僕が、新たな僕に生まれ変わった日。


 ある日、僕は唐突に前世の記憶を得た。

 本当に唐突だった。前世の記憶を僕は夢で見た。見たというか体験したに近いんだけれど、ともかくそんな夢を見た。

 24年。

 その記憶が目覚めた僕の年齢は16歳だったから、本来僕が生きてきた年数よりももっと長い時間を、僕は夢の中で過ごしてきた。いや過去、前世で過ごしてきたということになる。

 生まれてから24年。24歳の夏に死ぬまでの人生を、僕は辿ってきた。

 ただ、それだけではとてつもなく鮮明で、詳細な夢を見ていただけのようにも思える。僕の頭がおかしくなったのかもしれない。

 実際こんなものは前世の記憶じゃなくて、ただの妄想でしかないとも思ったりもしたけれど、いくつか理由もあるが直感的にこれが自分の前世だという妙な確証があった。

 こればかりは、前世の夢を見るなんてことがあった人間にしかわからないようなことなんだろうけれど。

 ただの与太話さ。軽く流してくれ。

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