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『いえ……いつも待たせてしまって、ごめんなさい』
「お前が謝る必要ねえだろ。それに…そんな待ってねえよ」
『……』
こうやって、俺はいつも嘘をつく。
春も夏も秋も、冬だって。こいつを待つのは俺の特権だ。
だから、どうか気付いてくれるな…。
「なんだよ」
何か言いたげな顔で俺をじっと見上げる。
その視線には、さすがの俺も心中穏やかではない。
こいつはガキの頃から頭がキレるし洞察力も鋭い。
隠し事をする以上、同業者以上に気を抜いてはならない相手なのは過去の経験からもわかってる。
『…しゃがんで下さい』
「あ?」
何を言われるかと思ったら、拍子抜けな一言に正直ほっとした。
『お願いします』
「…なんだよ」
野獣とも恐れられる俺が、この女には言われるまま従う。
ヒナの身長と同じくらいまで屈むと、顔が同じ高さになった。
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