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『ソウタさんっ』



「……」




心の声に応えるように、最愛の女の俺を呼ぶ声が近づいて来る。


小さな体で、息を乱して、走ってくる。


ああ、走らなくていい。

転んだらどうする。危ないだろ。



「ヒナ」



居てもたってもいられず、結局ローターリーから立ち上がってヒナの傍に駆け寄る。




『こんばんは。遅くなってすみません』




小さく頭を下げて、相変わらず丁寧なあいさつで俺を見上げる。


遅くなってねえよ…。


待ち合わせは20時。今は19時55分。

こいつが遅れてきたことなんて滅多にない。

いつも5分前にちゃんと来るんだ。




「別に。時間通りだろ」




そう。ヒナはいつも時間通りだ。


俺が馬鹿みたいに早く来てるだけなんだ…。


小走りで駆け寄ってくる姿がかわいくて、1秒でも他の男が近づく隙を与えたくなくて、30分以上も前からずっと待機してるなんて。


春も夏も秋も…そして今のような冬の時期だって、関係ない。



もしもそれを知ったら、こいつは笑うだろうか。

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