第5話

クラリスから現在のこのギルドの状況を伝えられ、どうしたものかと考え込んでいると、ギルドの入り口が大きな音を立てて開けられ、外から数人の冒険者がを抜き身でこちらに向けて構えながら近づいてくる。


「よう、うちの弟分を傷つけてくれたのはお前か?」

そういってにやにやと笑いながら武器をチラつかせてくる。

「傷はつけてねえよ、内臓は一つか二つ壊れたかもしれないがな」

少なくとも傷はつけてない、壊しただけだ、だからセーフ、と俺が両手を掲げてやれやれとそんなジェスチャー付きで伝えてやると顔を真っ赤にしてこちらを睨みつけてくる。


「俺達が誰かわかってねえのか?この街の筆頭冒険者ソトード様の冒険者パーティメンバーだぞ?スリーゲ様だぞ」

短剣で俺の頬をぺちぺちと叩きながら何か自分がどこの誰様かわざわざ説明してくれる。


「そういえばクラリス、他の職員はどうした?」

冒険者ギルドに入った時から気になっていたことだ、このギルドには何人か女性の受付がいたはずだが?


「はっ、なんだお目当ての受付でもいたか?残念だったなこいつ以外は全員ソトード様の女になったんだよ」

ゲラゲラと下品な声を上げるサンシ、スリーゲとその取り巻き。

「全員身持ちが硬くてよ中々了承しなかったけどよ、もう少しだろうよ、既に一人は家族の事を出したら折れて今頃は女としての喜びを噛みしめてるだろうよ!」


そんな言葉に更に下品な笑い声は高く大きくなる、なるほどなるほど……

俺はス…サンシタ君の頭を掴むとギルドの床に勢いよく押し付ける、その後は彼の後頭部に足を置いて足で雑巾がけをするように彼の顔面を摺り降ろしながら外を目指す。

周りのチンピラ共は何が起きたのかわからないという顔をしていたがすぐに状況を理解し、武器をこちらに振り下ろしてくる。

が、関係ない、そもそも心器の使い手を殺すには実力が足りない。

器士とそれ以外では生き物の格が違うのだ。

逆に斬りかかってきたチンピラの頭を掴むと注意しながら掴みそれぞれに一つずつ頭を抱えるとサンシタ君で雑巾がけをしながら外へ向かう

残った者達はその場で立ち止まったり、逃げようとしたのでにっこりと笑い、視線でついて来いと命令するとチンピラにしては感受性が高かったのか全員ついてくるのだった。


「さて、詳しい話を聞かせてもらおうか」

ギルドの床に真っ赤なカーペットを作ったサンシタ君は代わりに無事なチンピラに話を聞く。


と言っても聞くような話もない、さっき下品に全て語ってくれたのが全てだろう。

「つまりお前達はギルドマスターの権力と暴力でギルドの受付嬢に無理やり関係を迫り、断られた場合は家族を人質にしようとしたということか、救いようがない屑だなお前らは」

俺の言葉にさっき中で行われたことを忘れたのか殺意を向けてきたので、彼等の方を向いて下から蹴り上げてやる。


鋭すぎる蹴りは触れたものを破壊ではなく切り取った。

3度蹴り上げて足を地面に着けると遅れて蹴られたチンピラの下腹部から血がだらだらと垂れぺちゃりと何かが空から落ちる音が響く。


「性欲のコントロールができない獣には去勢しないとな」

俺の言葉を聞き、まるでそこで初めて体が理解し、痛みという刺激が発生したかのように大きな声を上げてチンピラ共が蹲り転がり始める。


何が起きたのか遅れて理解したのだろう、まだ

達は顔を青くして俺から距離をとる。


「おい、これは何の騒ぎだ!」

街の方から女の肩を抱きながら歩いてきた冒険者はそんな声を上げたのはチンピラ達が俺を恐れて距離を取ったタイミングだった。


「何があった、おいスリーゲ、それにお前達も!」

「ソトード様!それがこの男が急にスリーゲの兄貴を!」

なるほど、この男が諸悪の根源か、自ら来てくれるとは手間が省けて助かる


「ソレイユ傭兵団団長のソレイユだ、よろしくな」

手をひらひらと動かしてソトードに声をかける、ソトードは肩を抱いていた女、ギルドの受付嬢をその場において心器の斧を取り出しこちらに向かってくる。


「ご丁寧にどうも、死ね」

ソトードは振りかぶり勢いよく心器を振り回してくる。

振るわれた心器を俺は指二本で摘まむように掴むと広い心で笑顔を浮かべて見つめる。


「わざわざ声をかけながら攻撃のタイミングを教えてくれるなんて優しいね」

俺が笑みを浮かべながら心器を動かそうとしている優しい彼ソトード君に微笑みかけるとソトード君は顔を真っ赤にしながらどうにか心器を動かそうとする。


「勘違いしているみたいだけどね、心器を出せれば終わりではないんだよ、むしろそこがスタートラインでね、さらに鍛錬を積むことでより強い心器になり、身体能力はより高くなるんだ、でもね、ほとんどの人は心器を出せた時点でゴールだと思い込んでそこで鍛錬を終えてしまうんだよ」

ミシミシという音と共にソトード君の心器に罅が入りその罅は少しずつ広がっていく。


ソトード君と周りのチンピラが馬鹿なとか、ありえないとか言ってるが心器が簡単に壊れるなんて言うのは器士の常識である。

いや、西

「さて、ソトード君、俺はね怒ってるんだ、この街は俺のお気に入りでね?口は悪いが腕のいい親方、俺に敬意を払ってくれる領主、面白いギルマスの爺さん、人の良い筆頭冒険者、働き者の冒険者ギルドの受付達…ハームの街をよく利用するのはそれが理由だったんだ、でもね、それらは君たちによって奪われてしまったんだよ」


心器に走る罅の勢いは少しずつ早くなり、そして大きな音を立てて心器は砕け散る。

ああ、言葉にしてみるとどうして自分がこんなにイライラしてるのかわかった、俺はこの街が好きだったのだ故郷でもない、この街が、だからこの街を害虫共に好き勝手される事にこんなに怒りを覚えているんだ。


「っっ……お、お前が何を言おうと何を思おうとお前には何もできない、何故なら俺達の後ろ盾は教会の高位神官であるエンズ様だ!お前が何かすれば教会が黙っていな……」

ソトード君が何か言っているが俺には関係ない、彼の頭を捕まえてそのまま地面に勢いよく叩きつけると血を鼻と口から撒き散らす、2度、3度と続ければ何も言わなくなった。


「わりいな、俺無神論者なんだわ、教会とも縁がないのよ、さてソトード君俺と一緒に来てもらおうか」

「団長?!これは一体!」

俺がソトード君と一緒に歩きだそうとしたところに声を掛けられる。

声をかけたのはうちの内政官サマナだ。

どうやら彼も各地への挨拶周りを終えて最後に冒険者ギルドへと足を運ぶつもりだったらしい。


「やぁサマナ、ちょうどいいところに来たね、ちょっとうちの器士達に声をかけてこの街のソトード君の部下達が逃げないように一か所に集めておいてくれ、俺は領主様のところにソトード君と一緒に行ってくるからさ」

ニコニコと笑みを浮かべながらサマナに声をかけると彼は青ざめた顔を数歩後ずさる、失礼だなぁそんな怖い顔してたかな俺は


事情を説明するとサマナは最初嫌そうな顔をしたが深々とため息をついた後に俺達が契約している宿屋へと向かう、これまでの会話を聞いていて俺から背を向けて逃げようとするやつらが現れる、さすがに手が足りないので後は部下に任せるかと思っていると


「おっと動くんじゃねえぞ」

冒険者ギルドの中から出てきた冒険者が武器を構えて逃げようとしている冒険者の動きを止める。

どうやら心器使いを倒したことで冒険者の奴らが動き出したらしい。

都合がいいとか、今更か等と思うことはあるが、何も言わない。

ここで動いたこと、ここまで動かなかったことそれが彼等の俺の中の評価だ同業なわけでもないのだからそれでいい。


とにかく俺はぼろ雑巾君を持って領主官へ向かうだけなのだから。


「これはソレイユ殿、この度はどのようn…」

領主の館の入り口そこに立っていた衛兵がこちらを見て顔を引きつらせる

領主様には依頼を斡旋してもらったり冒険者の魔物の群れ討伐の手伝いをしたりで縁があるのだ。


「やぁ、傭兵の仕事がひと段落ついたからまた1月ほどお邪魔しようと思ってね、挨拶周りをしてたら少し問題が起きてたようだから領主様の指示を仰ごうと思ったんだお忙しいとは聞いているけど、少し急を要してね」


俺の言葉に連れている冒険者と俺の顔を何度も見比べてから「少しお待ちください」と屋敷内に入っていく。

ソトード君はどうやら俺が領主と縁があるとまでは思っていなかったのかガタガタと体を震わせている。

だがその目にはまだ希望が残っている、いくら領主と言えど冒険者ギルドマスターでしかも教会の高位聖職者をどうこう出来るとは思っていないのだろう。

彼にとってこの体の震えは余裕を取り戻したことでこれまで馬鹿にされたことによる怒りも半分ほどあるのかもしれない


「安心してくれ、領主様がお前たちに手を出せなくても俺達がお前たちを破滅させてやるから、後のことを考える必要なんてないんだよ?」

そう俺達は所詮傭兵、もし領主と考えが違ったなら暴れるだけ暴れて別の街に移るだけだ、実に傭兵らしい行動と言える。

俺の言葉が冗談ではないと感じ取ったのか、顔を真っ白くさせると、体の震えが増した。


「楽しみだね、俺と君たちはどうなるのか、さ?」

さあ、領主様はどのような判断を降すんだろうね?



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