第16話 兵士たちの来訪と、城門で歪む時間
「うっ……」
目を覚ますと、見慣れない天井。
寝起きの頭がズキズキと
(そうだ……異世界への強制出向だったな)
部屋の小窓から差し込む朝日が、フワリと布団を照らす。
昨夜の出来事が断片的によみがえる。
ジープ王国到着、そして妹を救う手がかり
「よし、今日も頑張――うわっ!」
足を踏み出した瞬間、床で滑って派手に
「いてて……異世界の朝は洗礼が厳しいな……」
鼻を押さえながら立ち上がると、ドアの外でリンナの声。
「ハルキ~、起きてる~?」
「あ、ああ! 今行く!」
慌てて服を整えてドアを開けると、二人が待っていた。
リンナは朝から元気いっぱいだが、ネーラは眠そうな目をしている。
「ああ、よく寝れたよ。二人とも……おはよう」
ところが、挨拶もそこそこに、廊下の奥から聞こえてくる重い足音が不穏な空気を運んできた。
「ん? なんか嫌な予感が……」
リンナが首をかしげると、
宿の廊下にまで踏み込み、こちらへ一直線に近づいてくる。
「お前たちだな。国王陛下のご命令だ。ただちに同行せよ」
「はぁ? 突然の緊急ミーティング要請ですか?」
思わず素っ頓狂な声が出る。国王陛下? 何事だよ。
リンナが慌てて兵士に詰め寄る。
「ちょ、ちょっと待って! アタシたち何もしてないよ?」
兵士の一人が冷淡な目つきでリンナを見下ろした。
「理由は知らん。命令だ」
ネーラが一歩前に出て、鋭い視線を兵士に投げる。
「私を連行するなんて、王宮の
兵士たちが一瞬目を見開き、思わず剣の柄に手をかける。
「し、しかし、上からの命令で……!」
ネーラは低く息を吐き出し、その場を睨みつけた。
「“上”ってどなた? まさか国王陛下ご自身ではないでしょう? そちらが礼を欠くなら、相応の訴えを起こすまでよ」
兵士のリーダー格が苦い顔をして答える。
「……黙って従ってもらう。我々も余裕がないんだ。悪いが、来てもらうしかない」
ネーラはしばし沈黙したが、リンナと目を合わせ、最後には小さく首を振る。
「……仕方ない。わかったわ」
こうして俺たちは兵士に取り囲まれたまま、宿を出る。
宿の主人は止めるに止められない様子で、カウンターの奥から申し訳なさそうにこちらを見送っていた。
朝の街は妙に静かだ。
昨日はあんなに賑わっていたのに、まるで人々が怯えて家に閉じこもっているような雰囲気が
(なんなんだ、この空気……? まさか俺たちが何か事件を起こしたってわけでもないのに……)
ポケットでジプトがブルッと震える。
「ハルキ、周囲の反応をスキャンしましたが、逃走経路は10パターン。成功率2%です」
「2%!? ……いや、そもそも逃げるつもりないけど」
「了解。では捕まる前提プランに移行――あれ、ここ電波……じゃなくて魔力通信が弱いですね」
(ジプト……ありがとう。焦っても仕方ないか)
リンナが不安そうに小声で話しかけてくる。
「ハルキ、どうする? 逃げてもいいけどさ……妹さんのこと、急いでるんだよね?」
「……そうだな。でも逆に王城に行けば、何か情報が手に入るかもしれない。下手に逃げて大騒ぎになったら、妹のためにもよくないし」
リンナは苦笑しながら「そっか……」と頷く。
一方ネーラは険しい顔で兵士の背中を見つめている。
(ネーラ、絶対怒ってるだろうな……貴族としてのプライドがあるだろうし)
そう考えながら歩いていると、道端の人々がちらちらとこちらを見てひそひそ話をしているのが分かる。
どこか「巻き込まれたくない」という空気を感じる。
「な、なあ。せめて理由だけでも教えてくれませんか? 俺たちって何したんですか……?」
俺は意を決して兵士のリーダーに問いかける。
しかし、返事はあまりにも素っ気ない。
「黙って歩け」
(くそ……妹が待ってるのに、こんなところで足止めか。ついてねぇな……)
リンナとネーラを見やると、二人とも苦々しい表情だが、取り乱さずに歩いている。
リンナが口の動きだけで「大丈夫」と俺に伝えてくる。
ネーラは小さく頷くだけ。少なくとも、俺たちは一緒だ。
やがて、王城へ続く巨大な門が見えてきた。
ゴシック様式にも似た
「うわ……こりゃまた立派だな。下手に騒ぎを起こしたら消されそうだ……」
「まったく、あなたはすぐに
ネーラが苛立ちを抑えるように小声で返す。
「まだ牢屋行きと決まったわけじゃないわ。むしろ、こういう時こそ堂々と構えるべきよ」
「そうだよ!」
リンナも力強くフォローする。
「アタシたち、何も悪いことしてないじゃん。絶対何かの間違いだよ」
その言葉に、ほんの少しだけ安心する。
確かに、まだ罪を着せられたわけでもない。
(とはいえ、妹を救うために時間が惜しいんだ……早く解放してほしい)
城門をくぐった瞬間、空間がビリビリと震える。
「システムエラー発生!?」
景色が
「ハルキ!」
ジプトが警告を発する。
「時空間の歪み指数が急上昇! 通常値の372%です!」
「くっ、最悪のタイミング……!」
兵士たちも異変に気付き、動揺している。
「な、なんだこの揺れは……!?」
「ぐっ……意識が……!」
俺は思わず目を閉じ、腕で顔を覆う。
視界がホワイトアウトし、重力感覚が消失する。
そして次の瞬間──。
(な、なんだよこれ……!)
——目を開けると、そこは……。
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