第2話 システム暴走!VRが現実になる瞬間

「リョウ!どうなってるんだ!?」


 叫び声が虚空こくうに吸い込まれていく。VR空間が激しく揺れ、まるでジェットコースターに乗っているような感覚におそわれる。


「ちょ、ちょっと待ってくれ!こんなの想定外だ!」


 リョウの焦った声が聞こえる。

 だが、その声もノイズに紛れて徐々に遠ざかっていく。


「くそっ、何が起きてるんだ!?」


 パニックにおちいる俺。目の前の景色がゆがみ、まるで万華鏡をのぞいているかのよう。

 街並みが溶け、空が地面と入れ替わる。


「ハルキ!大丈夫か!?今すぐシステムを……」


 リョウの声が途切れる。代わりに、耳障りな機械音が鳴り響く。


 ピーーーー!


「うっ……頭が……」


 激しい頭痛に襲われる。まるで脳みそが沸騰ふっとうしているかのよう。


「リョウ……助けて……」


 意識がもうろうとする中、俺は必死にリョウの名を呼ぶ。


(この感覚、まるでホラー映画の世界に引きずり込まれるみたいだ……俺、幽霊とか一番苦手なのに!)


 だが、返事はない。

 そして、突如として全てが静まり返る。

 真っ暗闇の中、俺はただただよっていた。


(ここは……どこだ?)


 意識はあるのに、体が動かない。

 感覚が全てマヒしたかのよう。


 ふと、遠くに光が見える。


(あれは……?)


 その光に吸い込まれるように、俺の意識は流されていく。


「あ……あぁぁぁ!」


 ――気がつくと、青々とした草原の上に倒れていた。

 鼻をくすぐる草の匂いが妙にリアルで、汗が服に貼りつく感触すら生々しい。

 VRのはずなのに、まるで現実のようだ。


「ここは……?」


 体を起こそうとするが、激しいめまいに襲われる。


(頭がガンガンする……徹夜てつや明けどころじゃない痛みだ。二日連続で徹夜残業した時並みの辛さ…いや、それ以上か?)


「うっ……気持ち悪い……」


 吐き気を堪えながら、周囲を見回す。


 青々とした草原が、遥か遠くまで広がっている。ゆるやかな丘の向こうには、見たこともない形の山々が連なる。


「まさか……これもVR?」


 だが、肌に感じる風の感触、鼻をくすぐる草の香り……全てがあまりにリアルだ。


「くそっ、どうなってんだ!リョウ!どこにいる!?」


 叫んでも、返事はない。ただ風の音だけが、俺の耳に届く。


(これは夢か?それとも……)


 頭の中で様々な可能性が駆け巡る。だが、どれも現実味がない。

 ふらふらと立ち上がる俺。足元がおぼつかない。


「とにかく……ここがどこなのか、調べないと」


 そう呟きながら、俺は歩き始めた。

 だが、数歩進んだところで、再び激しいめまいに襲われる。


「うっ……」


 そのまま再び意識が遠のく。

 ぼんやりと感じた風の音を最後に、世界がブラックアウトした。


 次に目を覚ましたとき、そこは見知らぬ森の中だった。

 草原で倒れたはずが、いつの間にか木々に囲まれている。


「何だよこれ……寝ぼけて歩いたのか? 誰かに運ばれたのか……?」


 得体の知れない不安が胸を締めつける。こうして俺は、ほんの数時間前までは想像もしなかった彷徨さまようことになったのだ。

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