第2話
キンッ!!
静かな森に、かん高い金属音が響く。
アシュリーの剣が、襲撃者の剣を弾き飛ばした。
勢いあまって、相手は薔薇の茂みに倒れ込んだ。
「きゃああ!」
ステフが悲鳴を上げる。
ネイトは杖を抜いて、アシュリーの元に走った。
「アシュリー!」
「大丈夫だ。……それよりあれを見ろ、ネイト」
アシュリーは、倒れている襲撃者を見据えている。
ネイトも顔を向けて……息を呑んだ。
「ダニー……」
薔薇の茂みに倒れていたのは、悪態をついて森の奥へ消えたダニーだ。
ケンカの途中だった、と言えばその通りだが、剣で襲撃されるほどの事だったろうか?
ネイトは不可解に感じながらも、倒れたまま動かない同級生に駆け寄った。
「気をつけろ、ネイト。先刻の一撃には、間違いなく殺気があった」
アシュリーはまだ、剣を構えている。
僕らを殺すつもりだったと?
まさか、そんな……
「……う、うーん」
倒れていたダニーが、ゆるゆると目を開けた。
「ダニー、しっかりしろ」
ネイトが手を貸して、ダニーは半身を起こす。
そして、まるで夢から覚めたかのように、ぼんやりとした顔つきで、ネイトたちを見上げた。
「……あれ〜、俺、何でこんなところに?」
「大丈夫か? 何があったんだ?」
ネイトに聞かれて、ダニーはフラフラと辺りを見回しながら、
「……赤い薔薇を見たんだ。たくさん咲いてて、キレイな……」
と、うわ言のように言った。
赤い……薔薇?
ネイトとアシュリーは顔を見合わせる。
「何言ってるのよダニー! やっぱりちょっとおかしいわよ、あんた!」
ステフが金切り声を上げた。
「咲いているのは、黄色の薔薇よ! 赤い薔薇なんか、
えっ……!?
ネイトもアシュリーも、揃ってステフを見た。
「ステフ、この薔薇、黄色に見えるの?」
恐る恐るネイトが聞く。
ビクリと身体を震わせたステフは、確かめるように薔薇を見た。
「き、黄色よ。黄色い薔薇しか見えないわ」
黄色……?
ネイトは眼鏡を外して、裸眼で薔薇を見た。
近視だから輪郭はボヤけるが、色は分かる。
ネイトの目には、緑と白しか見えない。
眼鏡がおかしい訳じゃない。
白にしか見えない。
眼鏡をかけ直し、アシュリーを見ると、彼女も同意するようにうなずいた。
ダニーには赤い薔薇。
ステフには黄色い薔薇。
僕とアシュリーには白い薔薇。
同じ薔薇を見てるのに、何で色が違うんだ……?
ネイトが考え込んだその時、突如として強い魔力が湧き上がるのを感じた。
すぐさま、ネイトはその方向へ、杖を向ける。
「薔薇……」
確かにその魔力は、あの薔薇から発せられていた。
「なるほど、そうか!」
ネイトはポケットから「
「ネイト! 後ろっ!」
アシュリーの声で振り返る。
ダニーが剣を振り上げていた。
「
とっさに張った防御壁に、ダニーの剣が弾かれる。
しかしダニーは、防御壁に向かって、何度も何度も剣を打ち付けた。
「……ざけんなよ、てめぇ! ブチ殺すぞこの野郎! ぶっ殺す! ブッコロス!!」
ネイトは愕然とした。
明らかに正気の沙汰では無い。
ダニーの顔つきも、繰り出される剣にも、常軌を逸したものがあった。
「ネイト!」
「僕は大丈夫! アシュリー、ステフを!」
この状況の異常さに、ステフはうずくまって震えている。
アシュリーはダニーに対して構えながら、ステフの元へ走った。
「立てるか、ステフ」
ゆっくりとステフが立ち上がる。
「私が援護する。集合場所へ行って、先生にこの事態を伝えてくれ」
背に
「嫌よ」
途端、ステフの魔術の杖が、アシュリーに向けて魔法を放つ。
「大気よ力を示せ、立ち向かうものを吹き飛ばせ
背後からの予期せぬ攻撃に、アシュリーは防御する間も無い。
ステフの魔法を、まともに食らってしまった。
「アシュリー!!」
ネイトの叫びが、森に響き渡った。
続く
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