第197話 魔笛使い
「殺っておしまいなさい。
くっ、くっ、くっ……。
ほんとうは、生かして連れ帰る予定だったのですがねえ。
クマどもは、手加減ができないのですよ。
まあ、しかたがありません。
恨むなら、その白いスライムを恨むのですね」
『教主国』の『五人衆』(のひとり)は、再び、笛を吹いた。
__へえ
なんか。吹き方に違いがあるのかな。
ちょっと、気になる。
グガアアアアアアーーーーーーーーーッ!
グガアアアアアアーーーーーーーーーッ!
グガアアアアアアーーーーーーーーーッ!
グガアアアアアアーーーーーーーーーッ!(以下省略)
グリズリー・ベアたちが、いっせいに
目は血走り、口からは、よだれが垂れている。
そして、ドスドスドスドスッと、ぼくらに駆け寄った。
「き、来たわよ。どうすんのよ!」
赤髪が、涙目で、叫んだ。
他の令嬢たちも、身を寄せ合って震えている。
平気な顔をしてるのは、アネットだけだった。
迫りくるクマに、マフユが、軽く手を上げた。
「ふゆっ!」
『やあ』って、言った感じがした。
「「「「「「「「………グガ?」」」」」」」
次の瞬間。
グリズリー・ベアたちが、いっせいに、スライディングした。
駆け寄りながら、
ズザザザザザザザザーーーーーーーーーーッ!
ズザザザザザザザザーーーーーーーーーーッ!
ズザザザザザザザザーーーーーーーーーーッ!
ズザザザザザザザザーーーーーーーーーーッ!(以下省略)
目の前で、八匹のクマが、お腹を
そして、
意外とかわいい?
「こ、降参したの?」
赤髪が、震える声で言った。
「どうやら、そのようですわ」
「マフユちゃん、すごいねー」
「さすが、シュウの従魔」
マフユは、へそ天クマ集団を指差しながら、ちらっと、ぼくを見た。
ぼくは、首を振った。
たしかに、クマの従魔は、魅力的だ。
アニメなんかでも、よく見るし。
しかし、クマ族と、カブってしまう。
きっと、彼らは、こう思うだろう。
『我々がいるのに、なぜ、クマなのか?』と。
そのせいで、ツイン子グマに嫌われでもしたら、取り返しがつかない。
「ふゆ、ふゆっ」
マフユは、かるくうなずくと、クマたちにバイバイした。
「グ、グガァ…」
「グ、グガァ…」
「グ、グガァ…」
「グ、グガァ…」(以下省略)
クマたちは、のそりと起き上がった。
そして、ぺこりとマフユに頭を下げると、すごすごと森の奥に戻った。
帰り際に、『五人衆(のひとり)』を、すごい目で睨みつけながら。
「な、なぜだ。なぜ、かなわない……。
たかが、スライムではないか……」
『五人衆(のひとり)』が、呆然として、つぶやいた。
まあ、気持ちはわかる。
だが、さすが、『五人衆(のひとり)』。
二度目の立ち直りも、早かった。
「くっ、くっ、くっ……。
いいでしょう。
ええ、いいでしょう。
あなたがたが、そんなに、わたくしを本気にさせたい言うなら。
『教主国五人衆』がひとり。
『魔笛使いのフエル』が、本気で、お相手しようではありませんか!」
選んだ笛は、今までと違って、銀色だった。
たしかに、見た目的には、レアものっぽい。
そして、その笛を、思い切り吹いた。
音がしないので、マヌケに見えなくもない。
今度のは、到着が速かった。
「見て、ワイバーンだよ」
エミリー嬢が、目ざとく見つけて、空を指差した。
「ほんとだー」
「久しぶりですわね」
「うん、ちょっとなつかしいね」
令嬢たちは、まったりと空を見上げている。
以前、撃ち落とした、峠のワイバーンでも思い出したのだろう。
「くっ、くっ、くっ……。
しょせんは、小娘。
恐怖のあまり、放心してしまいましたか。
しかし、もう、手遅れです。
さあ、飛竜ども、こいつらをブレスで焼いてしまいなさい!」
そして、また、思い切り、笛を吹いた。
クエエエエエーーーーーーーーッ!
クエエエエエーーーーーーーーッ!
クエエエエエーーーーーーーーッ!
クエエエエエーーーーーーーーッ!(以下省略)
はるか天上から、飛竜たちが、急降下しはじめた。
大きく開けた口に、光が
ぐんぐんと下降してくる飛竜。
その時、マフユが、すっくと立ち上がった。
そして、空に向かって、拳を振り上げた。
「ふっふ、ふゆーっ!」
『ばっちこーい!』と、言ってる気がした。
「「「「「「「「……くえっ?」」」」」」」」
たちまち、飛竜は口を閉じた。
ようやく、マフユの存在に気づいたのだろう。
こめかみに、冷や汗が流れた気がした。
もちろん、目の錯覚だと思うが。
クエーーーッ!
クエーーーッ!
クエーーーッ!
クエーーーッ!(以下省略)
すぐ目の前で、飛竜たちは、いっせいに、Uターン。
そして、たちまち、空の彼方へ消えていった。
『すんませんでしたーっ』って、言ってた気がした。
「あ、ありえない……。
わたくしの
魔笛使いは、がくりと膝をついた。
「姫さまーーーーっ!」
「お嬢様ーーっ!」
「お怪我はありませんかーーっ!」
ワイバーンの襲撃が見えたからだろう。
街の方から、大勢の騎士や魔道士が、駆けつけて来た。
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