第124話 学園生にからまれた
「心配は要らんぞ。
このコたちは、お前らみたいに弱くないからな」
ルリたちを見ながら、率直に言った。
分身とはいえ、【ダンジョン・コア】と【世界樹】。
二人に比べたら、ヒューマンなんて弱者すぎない。
__間違ってないよね?
「オレたちが、弱いだと! この平民ふぜいがっ!」
「ゴミのくせに、ほざきやがって!」
「ふん。オレが、二度とそんな口を聞けないように、教えてやる。
貴族に逆らったら、どうなるかってことをな」
いちばん体格のいい学生が、いきなり胸ぐらをつかんできた。
身長差があるから、足が浮いちゃいそう。
デブではないから、ちょっとは鍛えてるんだと思うけど。
__沸点、低すぎるよね?
ぼくは、学生の腕をつかんだ。
それから、『ほどほどに』握った。
バキバキバキッ!
変な音がして、腕が細くなった。
__あれ?
握っただけなんだけど。
「ぎゃああああーーーーーっ!」
大男が、悲鳴を上げた。
「は、離せえーーーーっ!」
叫びながら、もう片方の腕で殴ってきた。
殴られたくないので、ぼくも、片方の腕で
バキっ!
__あれ?
弾いただけなんだけど。
「ぎゃああああーーーーーっ!」
また、悲鳴を上げた。
「離せ、離せ、離せえーーーっ」
今度は、足で蹴ってきた。
蹴られたくないので、ぼくも、足で弾いた。
バキっ!バキっ!
__あれ?
弾いただけなのに。
「ぎゃああああーーーーーっ!」
またまた、悲鳴をあげた。
今度は、
__ううっ
腕とか、足とか、ぶらんぶらんしてるよ。
気持ち悪いから、手を離した。
「痛い、痛い、痛い、痛いっ!」
体格のいい学生が、床で、転げ回った。
__なんだ
まだまだ、元気じゃないか。
ほっとしたよ。
でも、ひさしぶりだったからかな。
ちからの加減が、うまくいってない気がする。
今度、クマ族と、お
ほかの四人は、おろおろしていた。
「ポーションだっ!ポーションをかけろ!」
ひとりが叫んだ。
もうひとりが、
でも、腕も足も、元には戻ったとはいえない。
__へえ
ふつうのポーションって、この程度なんだ。
やっぱり、全自動錬金釜で作った薬とは、違うんだね。
薬草自体が違うのかな?
なにしろ、ぼくのは、妖精からの貰い物だから。
妖精たちに、感謝だね。
今度、遊びに来たら、たくさんご馳走しよう。
「こ、この平民がっ! 許さん、許さんぞ!」
さっき、『預かってやるよ』とか、ほざいていた学生だった。
いきなり、ぼくに向かって、杖を構えた。
魔法を撃つつもりらしい。
さすがに、これには、物言いがついた。
顔見知りの男性講師が、厳しい口調で警告した。
「やめ給え。こんな場所で、魔法を発動するというなら…………」
きゅっ!
すぱっ!
べたっ!
「もががーーっ!」(多分、『ファイアー』?)
魔法は、不発に終わった。
完全に無言で魔法を撃てるのは、上級者だけらしい。
中級者以下は、魔法名くらいは、ちゃんと唱えないといけないらしい。
ぼくは、もちろん、無言でOKだよ。
上級者じゃないのに、なんでだろう?
「………って、テイマー君は、何をしたんだい?」
男性講師が、目を丸くしていた。
「ガムテープ
【自給自足】は、常に、進化しているのだ。
『ペラペラ系』と『999メートル系』。
ようやく、この二つが作れるようになったからね。
もしかして……と思って作ったら、できたんだ。
『セロテープ』や『ガムテープ』なんかの粘着系テープが。
もちろん、『ガムテープ』は、布製だよ。
この世界には、『ダンボール』なんてないはず。
紙製の『ガムテープ』じゃ、使いみちがないよ。
テープだから長い方がいい。
1メートル幅で、長さ999メートルにした。
仕様だから、どうしてもこうなってしまうし。
もちろん、巻いてなんかいない。
びょーーんって伸びてるだけ。
でも、時間停止機能があるから、
【卵ハウスの倉庫】に入れておいたら、『10センチ幅』に切ってあった。
『30センチ幅』や、『50センチ幅』というのもあったけど、何に使うんだろう?
使う機会ができたら、試してみよう。
__それにしても
ホントに、エルフやドワーフたちには、助けてもらってるよ。
ぼくじゃ。1メートル幅のまま放置するだけだったもの。
エルフにもドワーフにも、感謝だね。
ちなみ、ぼくは、速さには自信がある。
だからね。
① 【卵ハウスの倉庫】から『ガムテープ』を引っ張り出す。
② 15センチくらいに切る。
③ 切リ取った『ガムテープ』を、相手の口に貼る。
この三つの
それも、学生に駆け寄りながら、だよ。
もちろん、鼻には、かからないように貼った。
__あれ?
もしかして、鼻にも貼った方が面白かった?
今度、試してみようかな。
「な、なんだ。コレは!」
「何かが、口に貼られてるぞ!」
「と、とにかく、
残った三人が、あたふたしている。
「おい。
少しずつ剥がせって、言おうとしたんだけど。
ベリベリベリッ!
__間に合わなかった……
一人が、力任せに剥がしてしまった。
それも、思い切り。
「ぎゃあああああああーーーっ!」
学生が悲鳴を上げた。
だから、注意しようとしたのに……。
アレじゃあ、痛いに決まってる。
【自給自足】製のガムテープって、粘着力がすごく強そうなんだよ。
あとで、
「いったい、何の騒ぎですの?」
今度は、女子学生の集団がやってきた。
目のつり上がった縦ロール女子学生と、その取り巻きっぽい。
__邪悪顔の美少女集団?
みんな顔立ちが整っているのに。
そろいもそろって、悪魔に取り憑かれたような邪悪な顔をしている。
いや。もちろん、比喩だよ。
そっち系のお話じゃないからね。
「グネルさま、ご覧になって。
自称『百年にひとり』がいますわよ!」
取り巻きのひとりが、食いしん坊を指差した。
「まあ、ほんとうに!」
「なんてことでしょう!」
「いつ、学校に戻ってきたのかしら」
取り巻きが、大袈裟に騒ぎだした。
__え? そうなの?
「なんだ、お前。
『百年にひとり』って自称だったのか?」
率直に尋ねた。
「違うわよ! 真に受けてるんじゃないわよ!」
食いしん坊が、マジで怒った。
違ったらしい。
「はははっ。エルナ君の言うとおりだよ。
たしかに、『百年にひとり』の逸材で、間違いないよ」
顔見知りの講師が、笑った。
「でも、ほんとに元気になったねえ。エルナ君は。
これなら、ラウラも安心だ」
「やっぱり、こいつらのほうが嘘つきだったか。
オレも、そうじゃないかとは思っていたんだ」
「なに、適当なこと言ってんのよ!
さっきは、真に受けてたくせに!」
また、怒られた。
「わたくしに、あれほどの無礼をはたらいておきながら。
厚かましくも、姿を見せられたものですわね。
公爵領に逃げて、宿舎に引きこもったと聞いたので、見逃して上げてましたのに。
命が惜しくはないのかしら?」
縦ロールが、食いしん坊を、公然と脅迫していた。
__上品な暴力団?
「言ってくれるわね」
気丈に言いながらも、食いしん坊の顔は青ざめている。
__そういえば
『命を狙われたこともある』
侯爵令嬢と、そんなことを話していた気がする。
__ふうん
コレ。ちょっと、一線を越えてるよね。
__よくないな
「おい、縦ロール。
喧嘩するなら、自力で堂々とやれ。
もし、お前以外のやつが、食いしん坊に手を出してみろ。
オレも、黙ってはいないぞ」
念のため、釘を差しておいた。
「誰が、食いしん坊よ。違うって言ったでしょ!
いい加減に名前くらい覚えなさいよ!」
なぜか。怒られた。
__もしかして
名前で呼んで欲しかったの?
それって、食いしん坊ルート?
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