第62話 女神たちの会話 

「わあっ! 空から見ると、こんなふうになってるんだね」


「そうですね。 なかなか新鮮な景色です」




ぼくたちは、いま、森の上空を飛んでいる。


ジャンボジェットのような、高高度じゃないからね。


緑の深い森が、延々と続いて見える。


雲ひとつない青空だから、森の緑も鮮やかだ。




大蜘蛛たちや妖精たちにも、あいさつしてきた。


いつでも、【転移】して来られるからね。


かんたんに、お別れした程度だ。





__思えば、ぼくって、巻き込まれたんだよな。



王国が行った『勇者召喚』に。



お陰で、ぼくは、故郷を失った。



日本は、いまも存在するし。


そこには、家族も友人も暮らしている。



でも、だれも、ぼくのことを覚えていないらしい。


そんな世界は、もう故郷なんて呼べない。




__でも、ぼくは、ひとりぼっちじゃない



ソフィアがいて。


アネットがいて。


ルリもいる。



それだけじゃない。



ドワーフにも、エルフにも、ヒューマンにも知り合いができた。


他人との結び付きは、日本にいた時より、深いかもしれない。




古代竜ビアンカ】と【フェンリルヴァイス】っていうペットもできた。



女神や天使。


そして、妖精に、ドラゴン。


ファンタジーな知り合いだっている。



__寂しいと思う暇さえ、ないくらいだ。



まあ、みんな、女神のお陰だな。


ぼくは、あらためて、かわいい女神たちに感謝した。



そして、今夜も。



チュートリアル・ビデオを、こっそり見ようと心に決めた。





________________________________________________________




(Side ???)



「くくくっ…。 まさに、順調じゃな。


【タンジョン・コア】も、シュウの支配下に入ったのじゃから」


「あの子たちも、ほんとうによかったですわ。


どちらも、シュウが面倒をみてくれて……」


「それにしても。


【古代竜】に【フェンリル】、そして【タンジョン・コア】ですよ。


あの変態の魔力は、どこまで『底なし』なのですか。


まあ。 そのお陰で、あの子たちも救われたのですけれど」




「なあ。 【ダンジョン・コア】まで出したんだぜ。


もう、ぜんぶ、バラしちまってもいいんじゃねえのか?」


「いやなのじゃ。 もっと遊んでいたいのじゃ!」




「もう。 クーちゃんは、ホントに、すなおじゃないのですぅ」


「シュウが心配で、隠しておきたいのでしょう。


はっきり、そう言えばいいのですわ」


「たしかに、ちからにおぼれた奴の末路まつろは、哀れだったからな」




「しかし、【ダンジョン・コア】まで出したのですよ。


それでも気づかないあの変態は、愚かすぎます」


「アルテミス。 もう、許してあげるべきですわ。


あなただって、わざとあんな言い方をしたのでしょう」


「やさしい言葉をかけたら、自分で自分を憐れむ。


あとは、ネガティブ一直線。


まったく、人間てヤツは、弱い生き物だぜ」




「でも。 シュウは、どこか違ってるのですぅ」


「あやつは、幼いころ、神童と呼ばれていたらしいのじゃ」


「さらに、三歳から、高名な武道家の祖父に鍛えられたのですわ」


「まさに、文武両道ってか? ちょっとできすぎだぜ。


あの小生意気な口調さえなければ……な」


「そう、あの口調さえなければ……、ですぅ」


「ふふふ……。 まさに、あの口調さえなければ……、ですわね。


でも、だからこそ、私たちも彼が気に入ったのですわ」


「まあ、そうだよな。 


殺された直後に、平然とあおるなんざ、あいつくらいのもんだし」




「だからってよ。 あんな格好までするのは、やりすぎじゃねえのか?


まあ、暇つぶしには、ちょうどよかったけどよ」


「たしかに。 クーは、すこし、やりすぎです。


女神が、下着までみせるなんて……」


「下着じゃないのじゃ。 アンスコなのじゃ。


下着じゃないから、恥ずかしくないのじゃ!」




「アルちゃんに、そんなことをいわれる覚えはないのじゃ。


ほんとに、下着を見せたのは、アルちゃんだし。


シュウをいちばん、甘やかしてるのも、アルちゃんなのじゃ!」


「そうだよな。 スキル【自給自足】は、ちょっとありえねえよな。


その上、最初から、ココアだの酒だの作れるなんて反則だぜ。


ま、まあ……。 お陰で、毎日、飲ませて貰ってるけどよ」


「あ、あれは、あの男のステータスが異常なせいです!


わ、私が、とくに何かしたわけではありません。


し、下着を見られたのだって、不可抗力です!」


「ふふふっ……。 そういうことにしておきますわね」




「なにしろ、アルテミスちゃんは。 


シュウのいちばん好みの女神ですからねぇ。


サービスしたくもなるですぅ」


「でもでも。 わらわのパンチラだって、何度何度も見ていたのじゃ!


それに、みんなかわいいって、鼻の下をのばしていたのじゃ!」


「ふふふ……。 たしかに、そうでしたわね」




「そんなヤツだから、みんなで、あんな格好までしたんだよな。


うーん、……そうだな。 もう少し、隠しておくか。


そのほうが、たしかに、面白そうだからな」


「とうぜんなのじゃ!


シュウには、もっともっと楽しませてもらうのじゃ!」




「せっかく、【飛行】の封印も解いたんだ。


あっちの大陸に着いたら、ひと仕事してもらおうぜ」


「そうですね。 次は、の面倒でもみてもらいましょう」


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