第36話 自白?

「たしかに、頭だけ見当たらねえ。 その上、体は無傷か…」



おっさんの家。 つまり、アネットの家でもあるのか?


要塞みたいな城に来ていた。


そして、大きなグランドみたいな庭で、グリフォンを取り出した。



「陛下に献上したい。 これを、譲ってくれね……」


「断る」


きっぱり言った。


「ソフィア、頼む」


……ちっ。 ソフィアを使うとは卑怯な。



「シュウは、これをどうしたいのですか?」


「大蜘蛛たちへのお土産」



おっさんが、あわてだした。


「なんだよ、大蜘蛛って? 


次から次から、災害級ばっかり出てくるじゃねえか。


いったい、どうなってんだよ。 オレの領地は」



「シュウ。 大蜘蛛たちなら、グリフォンでなくても喜びます。


今は、辺境伯のおじさまに、恩を売っておいたほうが得策です」



__くっ! 



正論すぎて、断れない。



「だ、だが!」


ぼくにも、意地というものがあるのだ。


「シュウ。 魔物なんて、【収納】にいくらでもあるでしょう。


グリフォンくらい、譲ってあげてください」



「……………………………………………わかった」



「うわあ。 ソフィアちゃんの言う事なら聞くんだ。


ウチのお父さまにも、平然と食って掛かるのに。


ソフィアちゃん、すごい。 猛獣使いみたい」



__だれが、猛獣だって?



「この間、草が数本で、金貨10枚もらった。


だから、金はいらない。 使いみちがないからな。


ソフィアに言われたから、恩は売っておく。


でも、たいして期待してないから、安心しろ」



「どこまでも、口の減らねえガキだな。


ちゃんと恩は、利子付けて返してやる。


期待して待ってろや。


しかし、草が数本で、金貨10枚だと。


草じゃなくて、薬草だろうが。


うん? アネット。 何の薬草だ。そんな報告は上がってないぞ」


「お父さま、そういうことは、ギルマスに言ってください。


わたし、実習生にすぎないんですから」



このひとたち、家族会議でもしたほうが、いいんじゃないの?





娘と言い合いしていたはずなのに、ぼくに飛び火した。


「小僧。 おめえ、いつ、この街に来た?」



「さあな……」


「シュウ……。 ちゃんと答えてあげてください」



「三日前くらいじゃないか?」


「それって、ドワーフの里で、私と、別れた日じゃありませんか。


まさか、あの日のうちに、ここに到着したのですか?」


「そういえばそうだな。 ちょっと走ったら、着いたんだ」



「ちょっとじゃねえぞ。 ドワーフの里からだろう。


馬車で、何日かかると思ってんだ」


おっさんが、また吠えた。


「そんなの知るか。 馬車なんて乗ったことがないし……」



「やっぱり、てめえだったのか……」


おっさんが頭を抱えた。


「ふん。 今度は、冤罪えんざいか?」



なぜか、アネットが説明し始めた。



「三日前の午後に、ウルフより速い小型の魔物が、二体現れたんだよ。


街道を激走して、この街の近くで姿を消したんだって」



「……シュウ。 正直に言ってください」


ソフィアに、自白を迫られた。



「状況証拠から判断すると、オレと雛竜である可能性は高いな。


ちょっと、追いかけっこしたからな」



「きゅっきゅーーっ!」


雛竜が、共犯にするなって怒った。


いや、お前。 じっさい、共犯だからね。



「やっぱり、おめえじゃねえか。 じゃあ、次だ。


おめえ、アーティファクトを持ってねえか?


それも、かなりデカくて、真っ白なやつだ」



コレも、アネットが解説した。



「同じ日の夜に、城壁前に出現したんだよ。


そして、次の日には、消えていたの」



「【卵ハウス】のことですね。 シュウ」


ソフィアが、チクった。 ひどいよ。



「これも、おめえだったのか。


いま、あのアーティファクトはどこへやったんだ?」


「森の中だ。 もう、街の近くに置くつもりはない。


だいいち、あれは、テント代わりだぞ。


この領地では、城壁の外にテントを張っちゃダメなのか?」



「……くっ、屁理屈こねやがって。


おめえのせいで、騎士団と魔道士団が、振り回されたんだぞ」


「そうか。 それは、たいへんだったな。


だが、さっき、グリフォンを始末したからな。


帳消しってところだな」



「それは、そうだよね。 なにしろグリフォンだもん。


どれだけ被害が出たかと思うと、ぞっとするよね」


今度は、アネットが援護してくれた。



さすが、ポンコツ受付嬢。


敵味方の判断がつかないらしい。


きっと、後で、おっさんに叱られるだろう。

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