第一話 事件前って思ったより騒がしい
俺が農家になって一週間がたった
朝、ニワトリに起こされ早く起きる
俺は父と作業を交換する
父は仕事に向かうためにバスに向かう
この時の時間は6時ほど
だが9時までに着かないといけない父もこれでギリギリだそう
中学校は八時半までに着かないといけないそう
俺が間に合う訳がない
やっぱり学校には行けないかと思いながら父を見送る
そうしたら俺は…ヒマ!
そう、死ぬほど暇になる
なにせ、やることがないからね
一応テレビがあるものの朝や昼に面白いものがやっているわけもなく
仕方がないので勉強している
学校があった頃はあんなにも嫌いだったのに今では生活の一部になっている
疲れた時には休憩のついでに畑の見回り
とは言っても近くの山にいる動物は近づこうともしない
父が山の主(多分)である熊を倒してしまったからだ
その熊の首は出入り口の近くに堂々と置いてある
そのせいで俺の家がモンスターハウスと呼ばれていたこともあったっけ、解せぬ
今日も勉強が良いところまで終わったので晩ご飯を作るかと立ち上がる
その時ふと窓の外を見ると
「うわっイノシシだ」
畑をうろうろするイノシシを見つけたのだった
「ただいま」
九時くらいになり、父さんが帰ってきた
「父さん、イノシシが出た」
「…何だと、どれくらいだ」
「かなり大きい
見た感じ柵と同じくらい」
「一メートルってところか
…そのデカさ、もしかすると新しい主かもな」
「どうする父さん」
「とりあえず、ご飯にしようか」
「ああ、もう出来てるよ」
「いつも待たせてすまないな」
「いいよ別に」
母が死んでから、ほとんど父が料理をしていた
が、父はある一品を除いて壊滅的に料理が下手だった
当時小4だった俺は流石に危機感を覚え、先生に料理を教わった
正直言うと俺は料理に関しては天才だった
本当に父の血が流れているのかと疑ったほどだ
「まぁ疲れてるだろうし座っておきな」
「ああ、ありがとう」
今日はサケのホイル焼きである
サケと山で取れる山菜やキノコ、バター醤油をホイルに入れる
本当は玉ねぎが欲しいがこれだけでも十分うまい
それに米とみそ汁、絶品である
「はい、持ってきたよ」
「ありがとうな」
「じゃあ」
「「いただきます」」
ホイル焼きのいい所は味が染みるだけではない
ホイルを開けた時の匂いだ
「うおっ!」
開けた瞬間、湯気と共に醬油のいい匂いがする
早速、サケを一口
バター醤油に染みたサケ、美味いが
「やっぱり少し臭いな」
一応塩で臭み取りをしたが完璧ではなかった
がそこで生きてくるのが山菜である
山菜と共にサケを一口
「うまっ」
サケの臭みを爽やかな山菜がいい感じに消してくれる
これに白米、美味くないわけがない
みそ汁も豆腐とわかめのみの具であるが十分である
「ご馳走様」
今日もよくできていた
満足である
「それでイノシシだが箱罠を置くことにする」
「箱罠ってあの中に餌を置いて動物を誘導してその餌に食いついたら柵が落ちるやつね」
「お、おう説明ありがとう
…急にどうした」
「いや知らない人もいるかなっと」
「?俺とお前しかいないが」
「まあ細かいことはいいじゃん」
「あ、ああ、そうだな
…畑を囲むように3つの箱罠を置く
お前には昼に箱罠の餌を変えてほしい
もしも何かかかっても刺激するなよ」
「わかった」
「よし!じゃあ今から置きに行くか」
「今から?もう遅くない?」
「お前は風呂の準備でもしていてくれ」
「もう出来てるよ」
「流石は俺の息子だ
じゃあ手伝ってもらおうか」
「わかったよ」
元からそのつもりだったのだろう
そうして俺たちは箱罠に肉や果物をかける
箱罠は割と重かった
まあイノシシの突進を耐えるくらいだからね
そうして三つの箱罠の用意ができた
明日かかるか楽しみだなー
朝起きたら畑が荒れていた
十中八九イノシシだろう
箱罠にはかからなかったようだ
賢いイノシシの可能性も出てきたな
畑の被害が一部だけだったのが不幸中の幸いだった
「どうする父さん」
「さっきみたいに俺が追い出すわけにはいかないしな」
なんとなく察してはいたが父が退治したか
マジで何者だよ
「一応少し怪我させたことだし一時は来ないだろう」
マジで何者だよ!
「それじゃあ俺は仕事に行ってくる、あとは任せた」
「いってらっしゃーい」
さてどうしたものか
いつもどうりの作業をした後、柵を立て直したりした
その間考える
どうしたら箱罠にかからないイノシシを捕まえるか
結局いい考えは思い浮かばなかったが
まあ父が何か考えてくれるだろう
そんなのんきなことをこの時は考えていた
それは昼、箱罠の餌を変える時だった
「…ん?」
そこには人の靴跡のようなものがあった
ここら辺は畑をやってる影響か土が柔らかい
だから靴跡が残りやすいのだ
なにか用があるならノックくらいするはず
ということは
「…泥棒?」
家の敷地には入らず畑だけを見て帰る
どう考えても畑泥棒ではないか
「ってことがあったんだ」
「マジか」
晩ご飯を食べ終わった後、父に相談する
「…わかった
よし、落とし穴作るか」
「…は?」
「割とまじめにだ、落とし穴
入ってきた畑泥棒だけじゃなくイノシシも落ちる可能性がある」
確かに、あの賢いイノシシも落とし穴にはかかるかもしれない
「父さん…」
「な、なんだ」
「天才だよ!」
「やっぱりか」
奇跡的に明日は休みである
何時まででも穴、掘れる
「そうと決まったら父さん!今日は頑張るぞ」
「お、おう」
この時のやる気は凄かったが飽きるのも早かった
結局荒らされたところに一つ作って終わった
寝るのも割と早かった
マジでなんだったんだ、あのやる気
一応、箱罠の方の餌も変えといた
もう何もかからないだろうけどね
この時は全く考えていなかったんだ
まさかあんなことになるなんて
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます