第32話

「どうした、梓」


「忙しいところごめんね」と私は謝る。


「ちょうど休憩を入れようと思っていたところだから、問題ないよ。

 話してみなよ」


そう促されて、私はぽつり、ぽつりとここ数か月のことを話して聞かせた。

カフェラテを飲みながら、兄は黙って聞いていた。



「あの子がそんな性格だったとは、全然気が付かなかった…」


「お兄ちゃんの塾の生徒だった、と言っていたけれど、見覚えはない?」


「ないなあ……

 クラス単位の塾だったから、受け持ちも多かったし


 それでも、受け持った生徒の顔はなんとなく覚えているものだけど、きっと同じクラスでもなかったんじゃないか」


「そっか……」

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