第28話
私が急いで何か作るかあるいは自室から持ってくるために立ち上がろうとすると、彼はその手をぐいと引いて、その軽い身体のどこから湧いてくるかわからない力で私をベッドへ再び押し倒した。
「ダメ、いかないで」
と言って私の手首を強く握る彼の瞳は涙を湛えて震えていた。
ここで視線をそらせては彼をさらに追い詰めてしまうと感じて、私は彼を直視して、子供のような駄々をこねるなと叱った。
怯んだ隙にベッドから抜けてキッチンを見ると、数日何もしていないだろうことは明白で、何か食べさせるものをと玄関へ急いだ。
その時彼がまた私を後ろから抱きかかえて行かせまいとするので、私は財布以外の全てを人質のように彼の部屋に置いて、近所のスーパーへ駆けた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます