第2話 伝説のスキル
今から能力値とスキルのチェックされようとしている俺は、ある不安に苛まれていた。
元の世界で大人気の異世界ものジャンルの一つ『クラス転移モノ』と同じ展開が続いていることに。
冒頭では、主人公が鑑定される番が最後で、表示された能力値は非常に低く、スキルは役立たずのものだと周囲に認識される。
その後は、生存困難な地域か
遂に鑑定が始まり、俺の目の前にウィンドウが表示された。俺はそれを閲覧した瞬間、愕然とする。
広樹大智
Lv1(最大Lv1000)
・攻撃力: E ・防御力: E ・知力: B ・体力: E
・俊敏さ: E ・魔力: E ・運: E
「おいおい、冗談だろ……」
俺の能力値は、知力以外が全て、E判定だった。
五人の数値にはS以上判定が二つもあったのに、俺には一つも無いことにショックを受けた。
「うわっ、マジか」
「いくら何でも、コレは……」
「アタシ達と比べて、低すぎでしょ」
「……(何て、声を掛ければいいんだろう?)」
「き、気にすんなって、俺達が居れば何とかなるから!!」
幸いなことに、同級生達は蔑むことなく、憐れんだ視線で慰めてくれていたが、コレはコレで辛かった。
まさか、自分がこんなにも無力な存在だったなんて。
今までの人生、運動神経は良い方だと思っていたが、まさか他の能力がこれほど低いとは。
頭の中は真っ白で、これからどうすればいいのか、全く見当もつかない……筈だった。
「……お待ちを、この者のスキルをご覧下さい!!」
「……? こ、これはっ!?」
俺のスキルチェックを終えた鑑定士が、フィーネス姫に俺のスキルが表示されたウィンドウを差し出して見せた。
彼女はそれを見て、目を見開いた。
俺も直ぐにウィンドウに表示されたスキルを閲覧した。
★6【
自己が味方と認識した対象全ての能力値を最大限まで引き上げ、スキルを最大レベルまで強化し、遠隔通信を可能にする能力を持つ
俺のスキルは強化・支援系のようだ。クラスメイト達と比例すると、五人のスキルは
「……やはり彼は、召喚してきた異世界人の中でもかなりの逸材……広樹大智様!!」
「は…はい!」
フィーネス姫は微かな声で呟いた後、大きな声で俺に話しかけてきた。
「……女神様があなたに授けたスキルについて今からご説明致しますので、よく聞いて下さい」
「は、はい?」
彼女は真剣そうな表情で、今から話す事を聞いてほしいと懇願される。
同級生の皆も耳を傾けて話を聞いた。
「このスキルは240年前、今よりも遥かに強い『旧魔族軍』によって、旧アルマティア王国は滅亡の危機に瀕していました。しかし、突如現れた1人の英雄の協力で、『旧魔族軍』を打ち破ることが出来ました。それがあなたと同じスキル、『
俺のスキルがそこまで重要なものだと少し疑心するが、フィーネス姫の説明したことが本当なら、俺は昔の英雄の生まれ変わりなのか!?
「嘘だろ!! アイツが!?」
「あんなに低いステータスでも、スキルの力で帳消しになっちゃうじゃねーか!!」
「それじゃあ、楽勝じゃない!!」
「良かったね! 広樹くん!!」
心配しそうにしていた皆が俺のスキルに目を輝かせて騒ぎ出す。自分が昔の英雄と同じスキルを授けられたことに驚いているようだ。
(まさか、こんな冴えない俺が……『異世界にクラス転移されたら、最初から勝ち組で最強だった』なんて)
俺は、自分の運命の変わりように、まだ現実感がなかった。しかし、周囲の反応を見る限り、これは紛れもない事実なのだと歓喜した。
「………(ギリッ)」
ただ一人、『高田修一』は、俺を嫉妬するかのように歯をギリギリして睨んでいることに、歓喜する俺は知る由も無かった。
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