第3話 初めての戦闘

 俺達、二年A組の六人が、異世界【オプティム】に召喚されてから、約二カ月が経過。

 アマルティア王国最強の将軍の指導により、スキルの制御・装備・武器の扱い、組手、魔物との戦闘などを学習する日々を送りながら、着実にレベルを上げていった。

 今や、全員のレベルは推定600から700にまで到達している。


 現在、王国で用意された武器や防具を装備した俺達は、武装したフィーネス姫・背中に大剣を携えた護衛騎士と共に、特別な迷宮ダンジョンへと目指していた。


 迷宮ダンジョンの名は【逢魔ノ遺跡】、レベル500代の希少種レアの悪魔・悪鬼系の魔物モンスターが蔓延る迷宮ダンジョンだ。


 目的は最下層に潜むダンジョンボス【破聖のディアボロス】の体内に保有するコアを、実戦経験と称して、討伐して入手するためだ。


 そのコアは強大な魔力を宿す特別なアイテムで、【大魔石】とも呼ばれている。

俺達の元の世界への帰還を可能にする鍵である。


 フィーネス姫の話によると、


『強い力を有する皆様方【勇者】様を召喚する、最上級の【転移魔法】を発動させる為、王国の地下倉庫に保管されていた、膨大な魔力を宿す石【大魔石】を使用しました。よって帰還するには、もう一つの【大魔石】が必要になります。それを入手するには、【逢魔ノ遺跡】の最下層に潜むダンジョンボスを討伐しないといけないのです』


 つまり、もう一度あの最上級の【転移魔法】を発動させるには、【逢魔ノ遺跡】でダンジョンボスを倒さないといけない。


 フィーネス姫は俺達が元の世界に帰還できるよう、魔族軍と交戦前に準備をしてくれるらしい。


「あ~、早くモンスターと戦ってみたいぜ」


「俺、エイリアンを倒すゲームで首を刎ねる場面を再現したくてたまらね~よ」


「ちょっと、物騒な話はやめてよ。こっちは緊張で食事に喉が通らなかったんだから」


 同級生の池本・飯田・塚村は、二カ月前と比べると逞しく成長している。


 最初は戦いたくないと駄々を捏ねていたが、女将軍のしごきのおかげで、能力値が上昇されている。


 しかし、塚村は初めて行う戦闘に緊張しているようだ。


「落ち着いて塚村さん、そんな時は深呼吸をした方が良いよ」


 緊張状態の塚村を心配するように、莉乃が落ち着けるようにアドバイスをしていた。


「………」


 修一の方は、召喚されてから一度も話していない。


 俺が話しかけても無視するし、一体どうしたんだろう?


 そう考え込んでいると、目的地の迷宮ダンジョン【逢魔の遺跡】の入口に辿り着いたことを知る。


フィーネス姫は俺達に視線を向けて言い放った。


「それでは、これから迷宮ダンジョン内部に潜入し、魔物モンスターとの戦闘を開始します。くれぐれも油断せず、警戒を怠らないようにお願いします」


「「「「「はい!」」」」」


 フィーネスの掛け声に反応するように、俺達は大きな声で返事をした後、俺達は【逢魔の遺跡】の入口に続々と潜入した。


(……大智には悪いが、俺達の尊い犠牲になってもらうぞ)






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【逢魔の遺跡】に潜入してから二時間。


――いまだに、魔物モンスターが一匹も現れない。


 おかげで俺たちは何事もなく、サクサクと順調に奥へ進み、休憩を挟みながら下の階層へと降りていく。


 それを繰り返すうち、気づけばダンジョンボスが潜む最下層の大部屋にたどり着いてしまっていた。


「……結局、一匹もモンスターは出てこなかったな?」


「強くなった俺たちに怖気づいて、どこかに隠れてるんじゃないか?」


「それにしては、静かすぎじゃない?」


「確かに。私たち以外の足音や唸り声も、ここまで来るまで全く聞こえなかったわ」


 四人とも、魔物モンスターが姿を見せない現状に動揺している。迷宮ダンジョン内に侵入した者を排除するために活動する魔物モンスターが何もしてこないなんて、明らかに都合が良すぎる。


「どうして……上層ならまだしも、中層と下層に姿を現さないなんて、いくらなんでも異常すぎます。これでは皆さんの戦闘力がどれほどのものか把握ができない……」


「姫様、嘆いていても仕方ありません。ここまで来たからには、必ず大魔石を入手しなければなりません。どうかご決断を」


「……わかりました。それでは皆さん、これからダンジョンボスと戦います。覚悟はできていますか?」


「「「「「「はいっ!」」」」」」


 フィーネス姫は難しい表情で数分悩み、全員に戦闘の覚悟があるか問いかけてきた。俺たちは準備万端だと頷いた。


「それでは、行きましょう!」


 護衛騎士がダンジョンボスの大部屋の扉を開けた瞬間、俺たちは一斉に突入した。だが、大部屋に入った俺たちは、目の前の光景に動揺し、立ち止まった。


 
































 俺たちの目の前にあったのは……胸に風穴を空けられた、【破聖のディアボロス】らしき亡骸だった。

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