呪われた魔導具
私は話すことができないので何か問いかけたわけではないのだが彼女は、ぽつりぽつりと自分について私に語り聞かせるように話してくれた。彼女は口減らしのために一緒に売られた妹を救いたいそうだ。そのために彼女は数ある仕事の中から一番一攫千金の可能性が高い迷宮奴隷として働いていた。迷宮奴隷は迷宮探索者に同行し迷宮探索のサポートや迷宮探索者が窮地に陥った際の囮役をするのが主な仕事らしい。他にも少女は一応性別上は女性に分類されるので娼婦のようなこともするらしいが、そちらは頼まれたことがないのでしたことはないらしい。迷宮奴隷は奴隷の仕事の中でトップクラスで命の危険がある仕事だが迷宮探索中に手に入れたものの一部が報酬として支払われることになっているので他の奴隷の仕事以上に高額な報酬がみこめるのだと彼女は言った。
彼女は自分の身の上話を終えると私に力を私の力を借りて妹を救いたいと願った。私自身自分がそれほど役に立つことができるとは思えなかったが他人事とも思えず力を貸すことを了承した。すると、次の瞬間私の思考はよりクリアになり、彼女とのつながりを強く感じられるようになった。
私が力を貸してからの彼女の働きは周囲を驚かせるものがあったらしく、わずか1年足らずで彼女自身と妹を買い戻すだけのお金を稼ぐことに成功した。しかし、私も彼女も彼女自身がもう長くないことを感じていた。私が貸した力は彼女をより強い戦士に変化させ異常なまでの肉体の再生速度を与える代わりに彼女の願いが叶うと同時に彼女の今後の人生を奪うものだったのだ。これは生前の私の恨みや絶望が、この力に結びついていたのだ。そのことに気が付いたころにはもうとっくに手遅れで何とかしてこの呪いを解いて彼女が妹と幸せに暮らす未来を願い手を尽くそうとしたが、この力は願いをかなえるためなら少女に対して行動を強制させる力が働くようで、少女自身と妹を買い戻すお金が手に入るとすぐに奴隷商のところへ少女を向かわせ自身と少女の妹を解放させた。
少女の妹は少女の顔を見ると泣きながら駆け寄ってきたが、妹が奴隷のいるべきエリアをでた瞬間少女は黒い灰になって崩れ去っていった。
少女の妹はその場で泣き崩れてしまった。だが、私は少女の妹にかけてやる言葉を持ち合わせてはいなかった。それどころか、1年も身近にいて少女の死を悲しいと感じていたはずなのに私の中には高揚感と充実感が満ちていた。
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