第10話 海の泡

海の泡になって朦朧と夜を渡りたい

明け方を待っていたあの頃のようにうたた寝をしながら

海岸に打ち寄せられた残留物は思念波を発している


思い出を手繰り寄せてはみるものの

何もかも元には戻らなくて

さようならという言葉だけが水面に浮かんでいる


魚の死骸が骨となっても意識を伝えてくる

海月は毒と電気を抱えて月夜に抱かれている

夜風に吹かれて人魚の群れが海岸線の向こうの方で泳いでいる

真珠の粒を吐くアコヤガイが殺さないでと泣いている


こんな夜こんな時間に

私は海の泡になりたい

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