第1話 崩壊寸前のダンジョンと初めての仲間
「ダンジョンを再建せよって、どうやるんだよ!」
視界が明るさを取り戻したとき、俺は完全に一人だった。いや、一人じゃないか。隅で俺をじっと見つめるゴブリンがいる。皮膚は薄汚れ、顔色は悪い。見た目からして、こいつもこの迷宮と同じくらい弱り切っているようだ。
「お前が俺の仲間ってわけか?」
俺が声をかけると、ゴブリンは首を傾げながら「ギィ」と小さく鳴いた。何を言っているのか分からないが、敵意は感じない。どうやら、俺を攻撃してくるつもりはないらしい。
「とりあえず、お前を頼りにするしかないか……」
頭の中にはさっきの声がまだ響いている。
《ダンジョン再建の基本ステップを指示します――まず、周囲の状況を確認し、必要な資源を集めてください》
「資源を集めるって、どこで? どうやって?」
俺は辺りを見回した。ここは広い石造りの空間で、天井は高く、壁にはいくつかのひび割れが走っている。床にはいくつかの瓦礫が転がっていた。
「あー、これ、全部俺がやるわけか……」
途方に暮れそうになるが、泣き言を言っても始まらない。俺はゴブリンに目を向けた。
「なあ、お前、何かできるのか?」
ゴブリンはキョロキョロと周囲を見渡した後、突然カサカサと動き出した。そして、壁際に転がっていた木の棒のようなものを拾って戻ってくる。
「おお、そういうことか! 資源って、こういうものを集めろってこと?」
木の棒は古びていたが、まだ使えそうだ。俺はゴブリンに頷き、「いいぞ、その調子だ」と声をかけた。
《初心者のダンジョンマスターへのヒント――ゴブリンなどの低ランクモンスターでも、適切に指示すれば効率的に資源を集められます》
「指示、ねえ……よし、お前、あっちの瓦礫を集めてこい!」
ゴブリンは俺の指示を理解したのか、小さな体でせっせと動き出した。俺も周囲を歩き回りながら、使えそうなものを探す。石片や木片、壊れかけた家具のようなものが見つかる。少しずつだが、資源が集まっていった。
そんなとき、ダンジョンの奥から聞き慣れない音が響いてきた。
「……なんだ、今の音?」
耳を澄ますと、遠くからガラガラと何かが崩れるような音がする。嫌な予感がした。俺はゴブリンを連れて音の方へ向かう。
ダンジョンの奥に進むと、そこには大きな穴が開いていた。壁の一部が崩れ、外界と繋がってしまっている。冷たい風が吹き込み、周囲の瓦礫が不安定に転がっていた。
「これ、やべえな……」
状況は想像以上に悪い。このままでは、ダンジョンが侵略者に侵入されるのも時間の問題だ。俺は急いで瓦礫を積み上げ、穴を塞ぐ作業を始める。しかし、俺一人の力では到底追いつかない。
「くそ、どうすれば……」
そのとき、頭の中に再び声が響いた。
《資源を消費して障壁を修復できます。ただし、資源の量が不足しています》
「足りねえのかよ!」
俺は周囲を見渡したが、使えそうなものはほとんど拾い尽くしている。ゴブリンも必死に動き回っているが、全く追いつかない。
「頼む……少しでも動いてくれ!」
すると、ゴブリンが俺の元に走り寄ってきた。その手には、小さな青白い結晶が握られている。
「これ……使えるのか?」
声が答えた。
《それは魔力結晶です。障壁の修復に使用可能です》
「ナイスだ! よし、やるぞ!」
俺はゴブリンの持ってきた魔力結晶を手に取り、崩れた壁の前に立つ。結晶をかざすと、淡い光が広がり、徐々に壁が修復されていく。
「いける……! このまま全部塞ぐんだ!」
ゴブリンと協力しながら、何とか壁の崩壊を食い止めることに成功した。息をつき、俺は壁にもたれかかる。
「……危なかった」
まだ始まったばかりだが、もう既に限界を感じる。それでも、ここで諦めるわけにはいかない。俺はこのダンジョンを守り抜く。何があっても。
「よし、次はもっと効率よくやる方法を考えないとな」
こうして、俺のダンジョン再建の日々が本格的に動き出した。
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