第6話 同期「B」フィリピンからの渾身電話リポート

 先日も書いたが「B」は自分の新入社員以来の報道配属同期。

 あれはひとまず幼女連続殺人事件で逮捕起訴に至った時であったと思う。

 Bは確か保険金殺人か何かで長足フィリピンにいた。


 そこにおいてフィリピンでの地震である。

 普段は茫洋としたBであるが、この時は素早かった。東京に電話をしてきて、夕方ニュースに生電話でリポートを入れるというのである。


 自分は同期として、Bを応援しながらも、なぜかいつもよりきびきびとした能動的なBの動きに多少の不安を抱いていた。

 とにもかくにも、Bからの電話後、オンエアに向けて、詳細な打ち合わせがキャスターなどと行われたはずである。

 

 しかし、報道も生中継もミズモノ。その時Bの置かれている状況次第で、リポート内容も変わってくるのは当然のこと。

 

 そして迎えた夕方ニュース。


キャスター「Bさん、地震後、現地フィリピンの様子はどうですか?」


B「私は今ホテルにおりますが、カーテンが閉まっているのでわかりません」


キャスター「???」

(一瞬あって)「カーテンを開けて、そこから見える状況を教えてください」


B「カーテンを閉めているので分かりません。

 以上、フィリピンからBがお伝えしました」


それきり電話は切れてしまった。


何がしたかったのか。

恐らく、Bの身辺に命の危険が迫る状況があったのであろう。


ワタナベはBの入社同期である。


だからと言って、ワタナベにはこのフィリピン地震生中継電話には何の責任も無いのである。

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