第2話 ナコ

 ナコとのメッセージの往復が5周目ぐらいになった時である。私は勝負に出た。「ナコさん、私あなたに会いたい。でも日本行くお金ないよ。お金を送ってくれませんか?」と片言の日本語を使いながらお金を催促したのだ。この時点で詐欺だとわかってメッセージが返ってこなくなることはよくある。しかし、この女性の場合そうではなかった。「シャルル、私も会いたいわ。日本に来てくれるならお金を払うわ」とすぐに返信が返ってきたのだ。私はまんまと引っかかった獲物に満面の笑顔を浮かべながら、銀行の振込用の口座番号をメッセージで送った。すると、続けて彼女から住所も教えてというメッセージが届いた。本来なら架空の住所を送る所だったが、なんでもすぐに現金化できる高価な赤いバッグ(red bag)を送ってくれるということであったので、私は自分の住所を躊躇せず送ったのだ。これが最大の失敗であった。

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