レッドバッグ

Sugie Bunko

　私の名前はドログバ。ケニアで生活をしている20歳の若者だ。私の国は貧しい。故に、生活をしていくためにはあらゆる「手段」を使ってお金を稼がなければならない。

　私は現在、インターネットビジネスを謳う企業で仕事をしている。といってもそれは表向きであって、実際は詐欺をしているといったほうが正しいだろう。私の仕事は、１台のパソコンと向き合い、世界中の女性にインターネットの掲示板を通してメールを送ることだ。そして、メールで甘い言葉を使って、仲良くなったふりをして女性を騙し、最終的にお金をだまし取ることこそが私の仕事なのだ。

　今日も一人の日本人女性が私のメールに引っかかったみたいだ。彼女の名前は南京無子（ナンキョウナコ）、36歳の独身女性だ。日本にいる女性はなぜかわからないが、外国人の男性に強い幻想と憧れを抱いているようだ。私がフランス人のシャルルという男になりすまし、メールを送っただけで、私のことを信用してすぐに好意を示してくるのである。ちょろいものだ。実際に今まで詐欺で成功してきたのはほとんど日本人の女性であった。これで10人目だ。私がケニア人である事も知らずに。

　いかに、お金をこちらに迅速に送ってもらえるかどうかだけを私は考えている。ナコがどんな人物かなどはっきりいってどうでもよい。しかし、女性の心を開き、お金を貢がせるために演技とはいえ、私は真剣に愛のこもったメッセージを彼女に送るのであった。