カフェ・リフレインの小さな謎

HappyWorld

第1話 カフェ・リフレインと消えた砂時計

「いらっしゃいませ」

豊かな自然に包まれた浮遊島にある「カフェ・リフレイン」。

今日も主人のミレイとすこしやんちゃなルイで営業している。

 

「いつもので!」

「わたしも」

この二人は常連客のエレナとアリス。いつもレギュラーコーヒーを頼んで話をする。


「あれ?いつもカウンターに置いてある砂時計は?」

「ほんとですね。あの砂時計、砂が落ちている様子がキラキラしていてきれいでしたのに」

エレナとアリスが言う。


「そうなんですよ、、、昨日の朝から探しているんですけど見当たらなくて、、、」

「あの砂時計、なかなかの上物で高かったのに、、、」

ミレイが残念がっていると、エレナが気づく。

「店長さん、このカウンターのあたり甘い匂いしないか?」

「ああ、あの砂時計の中身が落ちていますね。もう砂時計も年代物ですから。どこからか中身の種が落ちてくるんですね」

「この甘い匂いは砂時計の中身である種ってことか。」

「そういうことですね。」

ミレイが相槌をうっていると、


「テンチョー!、この皿はどこに片付けるんだったっけ?」

隣で皿を洗っていたルイが話しかける。


「ん?今日は何を話してるんだ?」

「ルイ、お客様には敬語をつかいなさい。」

「いいのですよ、お気になさらず。」

「ボクもアリスと同意見だよ~。」

「ルイがすみません、、、」

ミレイが謝っていると、ルイがなにかを見つける。


「テンチョー、ドアの外側に猫がいるぞ。」

「最近よく見かけるんですよね、あの小さな斑模様の猫。」

「かわいいな。」


「でもあの小さな猫、餌を上げようと近づくと逃げるんですよね。」

「シャイなのか?」


そのまま猫の話でもちきりになっていると、窓から夕焼けに染まった空が見える。

「もうこんな時間か、そろそろボクたちは帰らせてもらおうかな。」

「そうですね、帰りましょうか。」

エレナが切り出す。


そこからしばらくして、陽が完全に沈みきりカフェも閉店の時間に近づいた。

「ルイ、そろそろ店仕舞いの準備をお願いできますか?」

「おう!まかせとけ!」

ルイがCLOSEの文字が書かれた看板を立てに行く。


ミレイはその間店の裏側にある貯蔵庫へコーヒー豆を仕舞いに向かう。

そこでミレイは気づく。

(なんだか甘い匂いがしますね)

怪しく思ったミレイは辺りを見回してみる。

すると床にピンク色に輝く種が一粒落ちていた。

(!?)

拾い上げよく観察した後ミレイは確信する。

(これは砂時計の、、、?)

コーヒー豆が入っている箱をどかしていくと部屋の角に種が沢山集まっていた。

さらにそれらを回収すると貯蔵庫の壁にはちょうどネズミが出入りできそうな穴が空いていた。

(っ!、やられた、、、)


ミレイがとぼとぼと店に戻ると、ルイがいなくなっていた。

「あれ?ルイ?、、、ルイ!!!」

大きく呼んでも返事がない。

慌てて店を飛び出し探しに行く。


ミレイは近くを歩いていたおじいさんに質問する。

「すみません!、先程このあたりで年端もいかない青髪の少年を見ませんでしたか?」

「おお、さっきあっちの方へ向かっていったぞ。」

おじいさんは森の中を指す。

「ありがとうございます!、このお礼はまた必ず!」

そう言い残しミレイは森の中へ入っていく。


「ルイ!、、ルイ!、、」

ミレイはルイを探すも辺りは街頭一つもなくせいぜい5mまでしか視認できない。

ただルイを呼ぶ声が反響して聞こえる。

「どこにいるの、、、」


そんな中、どこか覚えのある甘い香りがしてくる。

(これは、、、さっきの種の匂い?)

辺りを散策し匂いが強くなる方へ向かう。


しばらく歩いていると、どこからか猫の鳴く声が聞こえてくる。

「にゃあああ」

鳴き声とともに現れたのは小さな黒猫だった。

体には例の種がついている。

ミレイはそれを取ってあげようとするが、怖かったのか猫は逃げていった。

「あ、まって、、、」

ミレイも自然と後を追う。


しばらく猫についていくとどこか人気のない路地裏に出てきた。

街頭の電気はついているが、床にはゴミなどが散らばり管理されていない様子だった。


周りの様子に気を取られていると、いつの間にかその猫はいなくなっていた。

(どこに行ったのでしょう、、、)

不安げに辺りを散策していると、馴染みのある声が聞こえてくる

「ちょっと待ってろよ!近くにお前らのごはんがないか探してくるから!」

そこで二人はばったりあった。

「ってえええ、テンチョー!」

「ルイ!、心配したんですよ!」

「それよりさ!テンチョーなにかごはんになるもの持ってないか!」

「えぇ、ごはん??」

ルイがミレイの手を引っぱていく。

ついたのはひどく汚れたボロボロの倉庫らしき建物だった。


中に入り、見せられたのは痩せぼそった親らしき斑模様の猫とそれを取り巻く同模様の子猫らしき猫だった。

「この猫今にも死んじゃいそうで、、、!」

「えぇ、慌てて出てきたから何もありませんよ!」

すこし間を開けてミレイが再び口を開く。

「近くになにか落ちてませんか?猫が溜め込んでるものがあるかもしれません。」

「確かに、、、オレ建物の周り探すよ!」

すぐさまルイとミレイは探しに回った。


ミレイは猫の周りを模索しようとするが、子猫たちが威嚇してきた。

困っているとルイがなにかを見つけた。

「おーいテンチョー!、こっちに果物みたいなものが落ちてるぞ!」

「オレにはよくわからないから来てくれ!」

ミレイは急いで向かう


「これは、、、ブルーベリーですね!よくやりました、ルイ!」

「結構大量にあるからやっぱり貯めてたんだろうな」

ルイとミレイは斑模様の猫のもとへ向かった。

ミレイが猫に与えようと近づくと子猫はまたしても威嚇をしてきた。

「怖くないですよ~。」

そーっと近づくも、とうとう子猫に引っ掻かれるようになった。

「ッ!」

「テンチョー大丈夫かよ!」

「しーっ!」

引っ掻かれてもなお進み、親猫前にミレイはしゃがんだ。

そして優しい声で話しかける。

「さあ、これを食べてください。」

猫は小さく口をあけ、ミレイがそこにベリーを一粒一粒といれる。

子猫もこの様子をみて安心したのか威嚇はしてこなくなった。


その間ルイは他にもなにかないかと建物辺りを模索していた。

とそこでルイは気づく。

「うお、なんかジャリジャリ言うと思ったらガラスあるじゃん!」

続けてさらに気付く

「あれ?あそこに落ちてる木枠なにか見たことあるような?」

近づいて拾うと、その木枠からはほのかに甘い香りがした。

「あああああ!、これ無くなってた砂時計じゃね!!!」

慌てて建物内に戻る

「テンチョー!、これ!」

「だから大声をって、、、」

ミレイはそういいつつ振り返った後、言葉を止めた。


「ああああああ、私の大事な砂時計がああああ!!!!」

ミレイは大声をあげた。猫は驚いた様子で目を丸くする。


「多分、甘い香りに猫たちは餌だと狙ったんだろうな、、、」

途端にルイが冷静に分析する。

「テンチョー、、、また砂時計買おうぜ、、、」

そのままルイはミレイを慰めながら店に帰っていった。


~後日~

「いらっしゃいませ。」

常連客、エレナとアリスがやってくる。


「あれ?砂時計あるね?新しく買ったの?」

「あと猫もいますね~」

「そうなんです。先日斯々然々ありまして、どうやら猫が懐いちゃったみたいで」

今回あった出来事をエレナとアリスに話していると、新しい客がやってきた。

「こんにちは」

「いらっしゃいませ、、、ってあの時の!」

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