薔薇色

薔薇色

『頬に血の気がさして来ましたね』

『はい。男爵（バローン）夫人様と御兄様の御二方と一緒に頂く紅茶は、身体の芯（しん）から暖まりますわ♪』

私が通う学び舎の入学試験の合格を目指す義妹（いもうと）と共に、書店（ブーフ・ハンドリング）に参考書を買い求めに行きましたが。帰宅途中に雪に降られ始めましたので、防寒着の冬外套（ヴィンター・マンテル）を着てはいた義妹（いもうと）でしたが。冬の寒さと雪の影響により、頬が普段以上に白（しら）んでいましたが。

『薔薇色（ローザ）の頬が、とても可愛らしく感じますわ♪』

『有難う御座います。男爵（バローン）夫人様♪』

猶父（おとうさま）の御正妻であらせられます男爵（バローン）夫人様は、猶子（ゆうし）の私と養女の義妹（いもうと）を、血を分けた実の子供であるかのように大切に慈（いつく）しんで下される、良妻賢母（りょうさいけんぼ）の鏡（かがみ）であると、心底よりの尊敬の念を深く抱く素晴らしい女性です。

『こうして暖かい紅茶を頂きながら過ごす一時は、本当に心安まります。男爵（バローン）夫人様』

嘘偽りの一切無い本心からの気持ちを話した私に対して、男爵（バローン）夫人様は柔和な笑みを御浮かべになられまして。

『家族で過ごす一時は、本当に心安まりますわね。帝国騎士（ライヒス・リッター）殿♪』

猶父（おとうさま）は一代にて平民身分から、貴族諸侯であらせられます男爵（バローン）の爵位を皇帝陛下から叙爵（じょしゃく）された立志伝中の御方ですが。最大の幸運は、男爵（バローン）夫人様が御正妻とされた事であると思います。

『はい。男爵（バローン）夫人様。仰せの通りで御座います』