マッドサイエンティスト?!

 俺の家に引きこもってから2日。食料を瞬木またたぎがとりにいき、大庭おおばが調理し、俺が食べる。というように役割ができてきたのだが……。


「ねぇ、落葉。その配信者のどこがおもしろいの?命の危機なのよ。働いてくれないかしら。」


「うるせぇ!コメントが読まれるかもしれないだろ!」うそぴょーん。これはアーカイブだぴょーん。この配信者もめっきり配信が途絶えており、俺は未視聴のアーカイブを見ていた。というか、なんでネットはまだつながっているんだ?


「私は確かにネットに疎いけれど、それが今配信していないことくらいわかるわ。さぁ、見るのをやめなさい。」といって、瞬木は俺からスマホを取り上げた。


「見るのをやめて何になるってんだ。」

 まったく瞬木ってやつは頭が固い。


「ふむ。どうしてまだネットがつながってるんだろうね。」


 うわぁ!!

「びっくりした。大庭!急に出てくんなよ!」


煤之介すすのすけの言うとおり、これは不自然だわ。落葉、今はWi-Fiにつなげて動画を見ているの?」


「そうだよ。ってなんだこれ!?KAMISAMAKAISEN……?」


「神様回線?落葉君の家のWi-Fiではないんだよね?」と大庭が確認する。


「近くの家のWi-Fiとかではないの?」珍しく瞬木がアホ面を披露した。


「そもそも、Wi-Fiはパスワードとかいるはずなんだけどな。パスワードがいらないのはフリーWi-Fiとかだけなはず......」


 まさか!!と思い、俺は家のWi-Fiルーターを見た。やっぱりそうだ。もうインターネットにつながっていない。もしかしたら2日前、ゾンビが発生した時かその後にネットは止まったんじゃないだろうか。詳しくないが、電気もネットも水道も……なんでも自動で制御されているわけじゃないよな。


「これはもしかしたら」俺は満を持して。


「僕らのほかに生き残ってインフラ整備してくれている人がいるやもしれないね。」


「てめぇ!大庭!俺のセリフだろうが!!」


「ね、ねえ。落葉のスマホ、通知がたくさん来てるわよ。」瞬木が焦った様子で言ってきた。


「なんだよ。こんなときに通知なんて……」


 瞬木が見せてきたスマホの画面には「天才科学者 三日月作奈みかづきさくな」からのメッセージでびっしりと埋まっていた。


『やっと気づいたようだね。この町のすべてのインフラは私が整備させてもらった。』


「だれだよ。天才科学者とかいう割に効いたことないんだけど。」俺はそういいつつ、画面を見つめた。


「そうね。私も微塵も聞いたことがないわ。」瞬木が知らないなら俺が知らないくてもおかしくない。


「それで、あなたがこの町のインフラを整備してくれたということでってるかい?」と大庭がスマホにむかってしゃべりだした。


『私が開発した発電所や回線が町のインフラを維持しているんだ。電気、水道、ネット、すべてが私のおかげで動いている。君たちも協力してくれたまへ。』

 どうやら、あちらはこちらの声が聞こえているようだ。てことは、これまでの行動も筒抜け……?俺は話題を変えるためにわざと声色を変えて言った。


「全部お前の開発だって?本当にそんなことができるのか?興奮してきたァ!!」


「これは驚きだわ。でも、彼女の提案に乗るしかないわね。食料だって無限にあるわけじゃないもの。」瞬木が冷静に言った。


「落葉君、彼女の言う通りに協力してみるべきだよ。」大庭も同意した。


「そうだな。それで、具体的に何をすればいいんだ?」


『まずは私のラボに来てくれ。場所は君たちに送信した座標にある。そこに来れば、もっと詳しい指示を出してやろう。』


「ラボの場所か。これが座標だな。」俺はスマホの画面を見ながら座標を確認した。座標とか面倒くさいな。マップにピンさせよ。普通に。


「それじゃあ、行くしかないか。準備を整えて出発しよう。」瞬木が指示を出し、俺たちはラボに向かう準備を始めた。


 こうして俺たちは、天才科学者三日月作奈のラボに向かうことになった。といっても、荷物は学校でとってきた薬品くらいしかないがな。

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