第14話

◇2. 自分が生贄に選ばれたことを知る

 (何で私の名前が……?)

 イリスは隠れたまま思わず頬(ほお)がこわばる。

 眷属がわざわざ「イリス」という名を口にしている――つまり、“自分”を探しているということ。

 恐怖と疑問が頭を支配し、一歩も動けなくなりそうになる。


 すると、そこへ村の有力者らしき男が、震える声で話し始めた。

 「な、なぜイリスを……? ここには、ほら、もっと他に役立つ者が――」

 男は必死に眷属をなだめようとしているが、ゼアハがそれを嘲(あざけ)るように遮(さえぎ)る。

 「残念だが、領主の命令さ。お前らごときが口を挟(はさ)むんじゃないよ」

 ゼアハの暗い瞳がギラリと光り、男は悲鳴を押し殺して後ずさる。


 イリスは息を呑(の)む。

 (……私を差し出すってこと? 生贄として?)

 そんな思いが脳裏をよぎり、緩(ゆる)い眩暈(めまい)に襲われそうになる。

 (やっぱり……私が選ばれたのね。いつかこうなると思ってた。でも……)

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