第26話

ちょっと今は落ち込み気味だから、あまり言わないで頂けると助かるなぁ……。



大切な人を助けられない自分。



いつもは包み込むようにしまい込む"星"も触れずにいます。




どちらともなく学校の方へと歩き出し、一緒に登校みたいになってます。




「童話みたいね」



「??」




女のコは口から棒付きキャンディを取り出すと、そんなことを言いました。




「童話ーー?」




わからず首を傾げると、また棒付きキャンディを口に咥えながら




「あれ?知らない?“シンデレラ”」



「“シンデレラ”……」




一度だけ読んだことはありますが……内容をほとんど覚えていません。



子供の頃、プリンセスものよりヒーローものの方が好きだったんです。




「シンデレラは別名“灰かぶり姫”」



「灰かぶり……」




あたしの“星”と同じ……?




「掃除してばかりで汚れていたから、灰かぶりって。でも最後はとても綺麗になって幸せになる」



「綺麗に……」



「アナタの“星”もきっと同じ」



「っっ」



「今は灰をかぶっていても時が来れば綺麗になるよ」




そんな風に言ってもらったのは、喜田川さん以外初めてです。



おもわず泣いてしまいそうでした。




「あのっ」



「ん?」



「おおおおお名前は!?」




吃ってしまいました!!



でも、この人ともっと話したいと思って。




「あたし?」



「あっ!人に名前を聞く前に自分から名乗らなければ!あたしの名前は伊勢 心(いせ しん)です」



「伊勢心さん。あたしは流川 柚乃(るかわ ゆの)です」



「流川柚乃さん!可愛い名前ですね!あたしのことは良ければシンって呼んでください!」



「シン…」



「流川さんのことは流川さんって呼んで良いですか!?」



「なんでよ」



「えっ!?」




ダメでしたか!!




「あたしがアナタをシンって呼ぶんだから、シンはあたしのことを柚乃と呼ばないと」



「!!よよよ良いのですか!?」



「?良いよ」



「では、ゆゆゆ柚乃ちゃんと!!」




呼び捨ては恐れ多いので。




「柚乃でいいのに」




そう言って、柚乃ちゃんはキャンディをカリッ噛みました。

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