第25話
「どうしたのですか?」
喜田川さんが、顔を隠し悶るあたしを怪訝げに見てきます。
「なんでもありません……」
出来るなら今は見ないで頂きたい。
けれどもそんなことを言ってる場合ではありません。
御礼を言わないと。
大切な人を助けて頂いたのだから。
「本当にありがとうございました」
「ありがとうございました!!」
喜田川さんと二人、深々と頭を下げる。
「間に合って良かったです」
「本当に」
「ありがとうございます!!」
話すのに、あまりトーンの変わらない声。
顔を上げて、女のコを見る。
結ぶことなく背中でサラサラ揺れる黒い髪。
ツンッと吊った瞳。
口には棒付きキャンディを咥えています。
背はスラッと高くまるでモデルさんみたい。
羨ましい限りです。
「喜田川さんは一度帰って着替えてきた方が良いですよ」
「……そうですね。やはりこれはマズいですね」
「風邪を引いても大変ですしね」
「貴女は」
「あたしは喜田川さん程ではなく、少し濡れただけだから歩いていたら乾きますよ」
だからそのまま学校へ行きますと言えば、考え込む喜田川さん。
昨日のことがあるからでしょう。
でももう学校もあと少しですし、学校には先生方もおられます。
だから
「わかりました。着替えてすぐ参りますから、先に行っていて下さい」
「はい」
返事をすると、美しいクラウチングスタートから走り出した。
速いっ。
見る見る喜田川さんの姿が小さくなっていきます。
「ねぇ」
「はい?」
女のコから話しかけられました。
女のコの目線はあたしの胸へ。
「それ……アナタの“星”?」
またしても“星”が出てました。
なんの力も持たないのに何故、ピンチの時に勝手に出てくるのでしょう?
フゥ……と溜息ともとれる息を吐いて、あたしは頷きました。
「はい。あたしの“星”です」
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