魔導聖騎士の帰還

イータ・タウリ

第1話 文化祭の謎の転校生

「おかえりなさい、ご主人様」


 清楚な制服姿の少女たちが、廊下の両側に整列して出迎えた。青城高校の文化祭名物、執事喫茶「月光庭園」。今年は趣向を変えて、メイドと執事が織りなす上品な空間を演出していた。


 その列の中を、一人の少女が静かに歩いていた。


 身長170センチを優に超える長身から漂う威厳、しかし纏う制服は青城高校の既製品とは明らかに異なる。深い藍色の生地に金の刺繍が施された特注品だった。


「あの子、見たことない......転校生?」

「さぁ?、でも制服が......」


 ざわめきが静かに広がる。


 少女の名は、ナンデ・モアリ。いや、それは異世界で手に入れた名前。この時代の記憶の中には、もう一つの人格が眠っている。


 高校2年生の佐藤陽一。


「ふぅ......懐かしいな」


 廊下の窓から差し込む陽光に、ナンデは目を細めた。これから6時間後、佐藤陽一は放課後の教室で突如として開いた魔法陣に呑み込まれ、異世界へと召喚される。そして魔導聖騎士ナンデ・モアリと融合し、邪神討伐という使命を背負うことになる。


「まさか自分で自分を召喚することになるとはね」


 ナンデは苦笑する。制服のスカートの下に忍ばせた魔導書『エーテル・コンストラクト』が、微かに震えていた。


「あ、すみません!......って、先輩?」


 図書委員らしき眼鏡の少女が、抱えていた『機巧技術神秘考』という古書を取り落とす。


「気をつけて」


 ナンデは素早く身を翻し、落下する本を片手で受け止めた。その動きは人間離れしていた。

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