5話 〜 Fagiolino 〜
*登場人物には特別な許可をいただいています。
いつもより早朝に大量に食材をキッチンカーに乗せてカーラジオから流れる軽快で今流行りの音楽を車内に響かせながら、基地の正面ゲートへ向かう。
正面ゲートを見張る守衛担当の方に見えるようにダッシュボードに通行許可書を提示して、私は正面ゲート前に一度車を停めて、守衛担当の人に声をかける。
「事前搬入にきました。カフェ『fluffy』です」
守衛担当の方は、車の通行許可書と私の顔。そして店名を手元にある名簿で確認して、ニコッと笑うと出店者が食材を保管する場所が書かれた書類を渡してゲートを開けてくれた。お礼を言ってから車へ戻り、車を発進させ基地の中に入って行く。
搬入時に駐車して下さいと説明された場所へ車を駐車して、次々と食材を搬入していく。
「さて、重たい食材だけ残っちゃったけど……どうしようかな」
キッチンカーに食材を乗せる時は、届けてくれたお米屋さんにお願いしたので大丈夫だったのだが、キッチンカーから搬入する時の事は注文する時に考えてなくて、過去の自分に『どうして会場受け取りにしなかったの?』とツッコミをしてから、大きなため息をついた。
(仕方ない。モーニングの準備もまだだし……一袋10㎏だし、私が運ぶしかないよね……)
ヨイショと掛け声をかけ気合を入れて米袋を一つ持ち上げ、基地側から借りた運搬用の台車に米袋を乗せていく。
三つ乗せて台車を押して食材保管場所へ持って行き、米袋を保管場所へ置いていると後ろから、私に向かって言われたであろう朝の挨拶が響いた。
振り向くと沙耶さんの従兄弟。矢仲さんと昨日スイカを凄い勢いで叩き割っていた部隊長さんが立っていた。
「事前搬入ですか?」
矢仲さんの言葉に頷き、今運搬している米袋が最後なのだと説明する。
「それで最後ですか?」
「あ、いえ……まだ車に乗ってます。モーニングの準備もあるので、急がないとですが」
と苦笑すると矢仲さんと部隊長さんは顔を見合わせ、台車に乗せた米袋をヒョイと軽々持ち上げると保管場所へ米袋を入れる。
「俺達で良ければ手伝いますよ。ね?」
「おぅ、人手が多い方がすぐ終わるしな」
「え、でも、お二人とも早朝訓練とか業務があるのでは?」
私の疑問に二人は気にしないで下さいと笑った。
一人だけオロオロとしてるうちに二人はキッチンカーから米袋を保管場所までものの十数分で運んでしまった。
「す、すみません。手伝っていただいてしまって」
「いいえ、俺達も航空ショーの準備があるのでいつもの業務と大幅に違うんです。なので大丈夫ですよ」
矢仲さんがそう言うと隣の部隊長さんもウンウンと頷き。思い出したかのように、運搬の時に邪魔になるからと私に預けていた紙袋を指差した。
「それ、食っていいですよ。今からお店帰って開店準備でしょ? お腹空いちゃうとダメなんで」
失礼します。と言って紙袋の口を開ける。
人参とインゲン豆。ピーナッツが和えられたサラダらしきものとウィンナーを挟んだホットドッグが美味しそうに顔を覗かせた。
「え、いただけませんよ! 搬入手伝ってもらった上にこんな美味しそうなホットドッグ」
「いいですよ。今から一旦部屋に戻って食べる予定だったし、部屋戻ったらまた作れるんで」
「えぇ、でも……」
「この人言い出したら聞かないですよ。店長さん。この人の人参とインゲン豆のソムタムホットドッグ美味しいんで食べてみて下さい」
矢仲さんもそう言って笑うので、有り難くいただきますと言って受け取った。私が受け取ったのを見て、部隊長さんは
「召し上がれ〜」
と嬉しそうに笑った。
事前搬入を無事に終えてお店へ帰り、いただいたホットドッグを紙袋から取り出した。
「確か、ソムタムってタイ料理だったよね。だったら……」
カウンターの下から以前、知り合いからカフェの開店祝いにいただいたタイで有名なチャトラムーのタイティーの茶葉が入った袋を取り出した。
茶葉20gを沸騰したお湯が入った小鍋に火を消してすぐに入れ、中身が溢れないように気をつけながら鍋を軽く揺すり全体に満遍なく広げ、茶葉が全体的に広がったら蓋をして3分半、茶葉を煮出す。
茶葉を煮出してる間に、いただいたホットドッグをトースターに入れパンの表面がカリッとなるまで温め始め、煮出した茶葉を布フィルターで濾す。
(今日は、サッパリしたブラックティーで飲みたいからフィルター早めに上げようかな)
グラスに氷を入れて濾したブラックティーを注ぐ。オレンジと茶色が混ざったような色にうっとりとする。
丁度、トースターも温め終了の知らせをくれ、ホットドッグをお店でも使っている白いプレートに乗せて、二つを持ってカウンターの一番隅の席に座った。
「いただきます」
と言って、ホットドッグを一口食べ、広がったナンプラーの独特な香りや野菜の食感を楽しんだ後、自分で淹れたブラックティーにも口をつける。甘い香りのなかに、シナモンやスターアニスのスパイシーさが混ざり、クセになる独特な香りが鼻を抜けた。
(この組み合わせ……ありだな。航空ショー終わってからでいいから、部隊長さんからソムタムの作り方教えてもらえないかな〜)
オープンしてからずっとこのタイティーと一緒に提供したい料理を探してた私は、ホットドッグに入っているソムタムの具をメモしながら、朝食を楽しんだ。
航空ショー開催まで、後1日。
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