兎追い
晨
第1話
俺は兎追いだった。
だったというのは正確ではないが、今まさに俺の生命は
目の前で途絶えようとしているのだからそんな風に言っても許される気がする。
足元ではぬるい闇が広がり足首をつかみだした。
ほらみろ、お前はこんな風に死ぬのがお似合いだったのさ。
嘲笑を含んだその声がどこからともなく聞こえた。
ここは『果ての地』。名前など無く、草木もない。
もっとも土地の名前など人がいなくては生まれようの無いものなのだが。
廃墟が連なりその『果ての地』を少し戻ったところに
やっと人が暮らせる集落がある。
といってもボロボロの打ちっぱなしのコンクリで出来たビルで、適当に日々を
やり過ごしているだけだ。
俺もヒビが入り今にも倒壊しそうなビルの片隅に住んでいる。
仕事の無い日はブラブラでかけ酒を浴び自堕落に日常を潰しているので、
ここに帰ることはめったに無い。今もたまたまとっておいた食料を
とりにきただけだ。
ネズミに唯一かじられない場所なので気に入っているが、
最悪なことに元々良くない治安がこのあたりでは
ワースト5に入るくらいの酷さで悪い。
「おい、起きろよジャッキー」
そこらへんに転がっていた相方に声をかければ、うぅんと唸っただけで
起きそうにない。
その相方がいる横にはでかいただ切り取っただけの窓があって、
下では男女が大いに盛っていた。
見ないフリをして視線をそむけるが、耳障りな睦言は嫌でも耳にはいってくる。
「愛してるわ、ねぇアナタもでしょ」
「もちろんだよ」
女のほうが緩やかに腕を男の首に回し
準備された模範解答を男が口にすると、軽薄そうな女は熱烈な
口付けを相手に施した。
おい、だれだあんな女に愛してるなんて言葉を教えたのは。
もっと重要な何かを教えてやれよ。
確実にお互いをだましているであろう生産性のない行為にため息をついて、
腹立ち紛れに相方の腹に一発蹴りをお見舞いした。
さすがに痛かったのか、でかい体を折り曲げて涙目になって苦しんでいる。
「何すんだよ!」
「やっと目が覚めたのかよ?」
「ひでぇ、やっぱトラジス頭狂ってんだね。」
起きたばかりでも反論する生意気さを隠そうとしない相方にうんざりする。
「うるせー、仕事だとよ。」
「ええー嫌ですよ。簡単な兎退治ならオジサン独りで十分デショ?」
「まだそんな年じゃない。」
少しムッとして返せば、面白そうに目の前の童顔が歪んだ。
なんちゅー顔しやがる。
なにか反論しようと思うが、ジャッキーはもはや下の様子に気をとられていた。
赤茶の髪をかきあげながら口笛を吹く。
「あの娘やるなー。また違う相手だ。」
「ロクな奴がいないな。この界隈は。俺もオマエも含めてな。」
その些細な仕返しに苦笑がかえってくる。
「まあね。あーオレも混ぜて欲しいな。こんなオッサンとお仕事なんてやんなるよ。
女の子といっしょにいたい。」
確かにそういわれると空しさの方が勝った。
安っぽいそこらへんにあった金属の棒を持って、仕事にでる準備をする。
俺にできる紛らわせることは仕事だけだ。
「ね、トラジスはあっちに彼女いたんだろ?」
その言葉に俺は眉をよせる。
「なんで置いてきたんだよ」
相変わらずコイツは鈍い。人の怒りにさらに追い討ちをかける。
使い物にならないドライバーで潰れたネジを押し込むみたいに執拗に捻じ込む。
なにも言わずに、できる限りの鋭い眼光で睨みつけるとようやく相手は黙った。
どんなに時が経とうと蠢く傷口。
そこだけが別の生き物みたいに俺の体を駆け巡り、貪り、俺を限りなくダメにする。
最近では傷は無くなるどころか悪化の一途をたどっていた。
あちらに置いてきた、親友、恋人、唯一愛しい親類の姉を思い出してしまう。
俺の生まれた場所はこの星の何処を探しても、いま立っている
ここの裏側にも勿論無い。
俺はすべてを捨ててここにきた。逃げ出してきたとも言える。
喧嘩別れした親友。
ヤリ逃げしたともいえる恋人。(だが手紙は残してきたので、聡明な彼女のことだ。俺の不器用なところは許してくれてると思いたい。)
いつもかーちゃんみたいに煩いが相談に乗ってくれた姉。婚約していたあの男とは
式をもう挙げたんだろうか。
本当に俺はあのとき絶望していて、すべてが楽に終わることを望んでいた。
そんな時に誘われたのだ。この世界に。
その甘美な誘惑は瞬く間に俺を闇の世界の虜にした。
俺はなにより人間であることを望んでいた。人間でいたかった。
大人になりたいと欲求を抱いた時期もあったが、大人をここまでやってきてしまったことにこの年になり気付いた。
そして子供でいる瞬間など一瞬だったと悟った。
人間が実に醜く腐りきっていることを経験でしりながら、
教育だけはまこと清らかに教え込まれ
美しい道徳価値観を植え込まれ絶望の心をもったアンバランスな人間が
できあがった。
最悪最高のアンドロイドだ。
ガキの頃から人なんざ欲という鎖に繋がれてるのを知ってたし、
自分の母親が自分が思ってるほど精錬な聖母のような人では無いことを理解していたが懸命に目と耳を塞いだ。
その結果がこれだ。自分だけが穢れていると思いこみ、自分の愚かさを憎んだ。
愛という言葉だけを知識として知り、本当の愛をしらなかった。
恋人だった彼女に会ったときだけは少しは信じたが、どこか浮世離れしていて
宙に浮いた自分自身と対峙しなければならなかった。
親友とは将来の野心は語り合ったが、本当の俺は到底見せれたもんじゃなかった。
姉はどこまでも優しかったがついには心を病んだ。
そんな時だった。でかいスクランブル交差点で人ゴミを掻き分けるときとか、親友やそのツレたちと大勢で
バカ騒ぎをするときにかぎって孤独を感じるようになったのは。
ついに俺も捕まえられたかとおもった。
誰にって?
自分にさ。ある夜の夢で俺をサンドバックみたいに
殴りつけてんのは俺自身だったんだよ。
親友はそんな俺を理解しようとしてくれたが、俺はそれに
甘えてとんでもなく駄々子のようなことをした。
いまでもどうしてそうしてしまったか分からない。
自分を理解してくれる人間なんてこの世の何処にもいないと
割り切っていたのに、人になにかを押し付けることの虚しさを誰よりも
よく知っていたのに何を高望みしたんだろう。
恋人は優しく慰めようとした。彼女が言ったアイシテルは、
軽薄な女の言ったアイシテルと一緒だろうか。
いいや、違うと思いたい。
恋人も本当は狼狽していただろう。だが何もしてやれなかった。
全てを諦めていたのに彼女とどんな景色が見たかったんだろう。
姉はただ話を聞いていた。彼女は幸せだったのだろうか?
時間がありすぎて無駄なことまで考える。
コレから逃れるためにここにきたんじゃないのか、と自分に思い込ませようとするが
その悩みは右にアンスクリューム、もう一方に研ぎ澄まされたナイフとフォークを
もって俺を切り分け
足に履いた安いオーガズムを俺の口に押し込む。
人生の喜びがそんなもんでたまるかとも思ったが、拘束は思った以上にきつく
俺はもがいた。
もしかしたら兎に接しているせいかもしれない。
”兎”というのはこの世界の幻想で欲望で惰性で、人のもつ弱さすべてだ。
見た目は只の兎のもの、人間のような立つ姿のもの、化け物のように口の裂けたもの
とにかく兎の顔をしている。あちこちに現れ人の心を狂わせる。
狂わされた人間はどうなるのかわからない。
ただしなぜかここの世界の外からきたものに弱く、その問いかけに打ち勝つなら兎は雄たけびを上げ引き裂かれる。
ジャッキーはここで育ったものはそれが欠けているから、兎がどんなに増えても
駆逐できないのだと言っていた。
それを駆逐するのが俺の役目だ。そうだ、あの兎の問いは・・・・・
記憶の中の兎が笑う。
胸が苦しくなり息が詰まる感覚がしてきた。
目の前がクラクラし階段まえで座り込んだ。
「ちょ、ちょっとトラジス!しっかりしてよ。」
自分の吐く息が白い。寒いのだろうか?
「そんな無精髭で女の子みたいに倒れこんでも、可愛くなんてないんだから!」
ジャッキーがわめく。うるさい、少し静かにしてくれ。
「ホントに・・・」
そこで言葉が切れた。本当に今にも泣き出しそうな顔にスッと変わった。
さっきのざまあみろと言わんばかりの笑みはどこにやったんだ。
ようやく俺は声がでて言った。
「ら・・・楽に・・・っなるには、・・・どうしたらいいんだろうな?」
楽になるためにここに来たのに。
口のかたちだけでそう付け足した。
「ごめん。オレにもわかんないよ。」
ジャッキーは普段からは想像できない素直さで答えた。
そしてあまりに哀しい笑みを浮かべた。
こういうところが彼は憎めない。
いつもは殺したいほど憎たらしいのに、なぜか俺は心のなかで謝った。
ごめんな。
こんな顔させてごめんな。
俺はまわりにいる人を悲しませることしかできないのだろうか?
暗闇から突如、意識が浮上する。
目を開けるとランプの前にジャッキーが座っていた。
「いま何時だ?」
「もう夕方ッスよ。兎はオレひとりで退治したから、役立たずはずっと布団にもぐっとけばいいんだ。」
そのままいじけたように体育座りの足でつくった山の上に頭をのっける。
暫く沈黙が続いた。
「・・・・悪かった。」
返答はない。後姿で表情は伺えずオレは顎のヒゲに手をやりこすった。
ジョリっとした感触に妙に生を感じる。
そうして随分たってからジャッキーはボソリと呟き、背をゆすった。
俺は
「安心しろ。もうしない。約束する。」
と言うことしか出来なかった。
形だけの夜が明ける。ここでは夜も昼もそう変わらない。
ジャッキーは持ち前の元気(というか厭味か?)
を取り戻し俺をからかった。だが腕をケガしていることは言わなかった。
俺もあえて指摘しなかった。
それが彼の恥じるところになるのを知っていたからだ。
「昨晩の兎はどうだった?」
ジャッキーはその問いにうへぇという表情をつくる。
「どう・・・・って・・・、なんか薄笑い浮かべた気味悪い兎でしたよ。」
「何を聞かれた?」
「・・・それこたえんとダメかなァ。」
呆れたような顔でコチラをみる。だが目は荒んでいた。
「とりもどせないアレコレについてでしたよ。」
吐くように言った。
「そうか・・。ご苦労だったな。」
その一言以外何といえばいいのだろう。
ひとまわりくらい下のコイツも男だ。弱音をいうわけでもあるまい。
だが兎の質問、というか攻撃が効いている明らかで、
えぐられたのは腕だけでなく精神のもっと脆い所だろう。
そのあと朝飯を建物の裏で嘔吐しているのを見た。
何食わぬ顔をして戻ってきたジャッキーの肩をたたく。
何も言わないことが俺たちの間の最大級の優しさだった。
ー死にかけトランジスター
「なぁ、死ぬ直前に見る夢はなんだと思う?」
どうしたらいいかなど知らない。
それは直情性に基づく空しさ、緩やかさの先の衝動、朽ちかけた野花の最後の輝き。
息を詰まらすことなど許されるはずもない、人間はかくも儚くかくも醜い。
罪などという響きは甘美すぎる。罪などではない。とるにたりないミステイク、
お前が犯したのは
宝石を唾液で汚すような下卑た取るに足りない愚鈍な行いでしかない。
俺たちはただ汚いだけだ。
罪びとなんてたいそうなもんじゃない、ただの汚物だ。
鈍器で殴られたような感触がした。
闇に手を伸ばすような感覚だ。しかし、光に照らされる方が
歯の奥がかち合うほどに怖い。
兎がこっちを見ている、かわいらしく無害そうな顔でもって
相手を甚振るような加虐心に満ちた真っ赤な瞳で、ひたりとこちらを見ている。
息が詰まる。
だというのに人は簡単にゃ、死ぬわけじゃない。
階段から突き落としただけでうっかり死んじまうことだってあるのに、
鈍器で10回殴りつけられても死なないことがある。
兎はまたもゆっくりと口を開く、呪文のような放送事故の機械音の
ような音が口元から漏れ出て突然ラジオのチューニングが合うように
明確な音になって俺の耳に届いた。
「ott///:・・・*%$・・・・オマエがワタシを殺すことに意味があるのか?・・・」
今日の兎は忌々しいほどに、理知的な質問で相手を苦しめるタイプらしい。
えげつない質問はなおも続く。
「イキはクルシイカ?しかしオマエがカンジているのはタシカニ、オマエがカンジているといえるのか?」
俺と兎の距離は足元の爪先から10mほど離れているのに、
耳元で囁くように聞こえる。
今日の嗜好は黒兎。
耳の中は可憐すぎる夕顔の花弁のようなピンク。
だというのに身体は人間でピッタリとしたような黒スーツを着ている。
赤い目だけが爛々とひかり、別の生き物のように呼吸している。
駆逐しなければ、駆逐しなければ、俺は憑りつかれたように思う。
「オマエに価値がアルト本当にオモウカ?」
ああ、おもわねーよ。心のなかで正直に答えながらジリジリと兎との距離を縮める。
手には鉄の棒を持っているが、ここからでは全く届きそうにない。
靴裏からぬちゃりとした違和感を感じる。視線を落とせば真新しい血痕が靴裏から、美しい青緑の線を引いた。
”こっち”の人間を兎が貪った残りカスだ。
狂わされた挙句、魂をかじられたのだろうか。魂は青緑色をしているのだろうか。
食われた彼らに同情も、助けてやらなくてはという使命感も、無意味に人を狂わせるなど許せないなどという
正義感などという感情もまったくに湧いてこないが
俺は兎を駆逐することに執着する。
「シヌことはコワイカ?」
いいやまったく・・・ってかある意味死んでるし。さっきから兎の質問は俺には
無意味で、
大きくまた一歩兎に近づいた。
兎も俺を苦しめるには、的外れな質問をしたと悟ったようで一瞬あまりに
人間臭い表情で眉を寄せた。しかしそれは一瞬で従順そうな”兎”に顔を戻し、ひくひくと鼻をひくつかせる。
「俺がお前を楽にしてやるといったら?」
突然地鳴りのような低い声で兎は俺にソレを投げかけた。
その言葉に俺はゾクりとした。
恐ろしさというよりも快感に近かった。
畳み掛けるように兎は問う。
「オマエがミタクナイかこもオマエがジブンからキリハナシタ未来も、
ゼンブ視れなくシテアゲル。
イマモみんなマッシロにシテアゲル。
・・・・何も考えなくていいよ。」
重く甘い言葉は俺を透明の鎖で締め上げた。
大切なものなどなにも必要ないように。
「オマエがいなくなって悲しむ者なんていないダロ?」
だんだん言葉は明確になった。
俺はそんなこと知っていると逆にその言葉で冷静になった。
だが兎は次の言葉で俺の膝を折った。
「 本当のお前は自分を聖人かなにかのように思いたがっている。
ただ生きるなんてお前にはできないよ。
目を覚ませ。 こちらに来てもお前はなにからも逃げ切れていない。
すぐ迫ってきてお前をまた暖かい世界に誘ってお前は自分を見失うだろう。
本当にお前を救えるのは、私だけだとわかっているんだろう? 」
目の前の兎はゆったりとほほ笑んだ。
この場に不似合な慈愛に満ちた顔で
人を人でなくすのに力などいらないというように。
「 なぁ、 」
「 ワタシとオマエはイッショだよ。 」
地面にみっともなく蹲る俺に兎が手を伸ばして抱き起した。
触れられた瞬間、気が触れたように悲鳴が上がった。
他人事のように自分の悲鳴を聞いていた。
肋骨が小枝が折れるような簡易な音を立てて、いびつなメロディを作った。
なぜか愛しいと思った。
唐突に独りになりたいと思った。
そして唐突に誰かとつながりたい一つになりたいと思った。
だがそう思った瞬間途方もない吐き気が自分に覆いかぶさった。
顔をあげればルビーのような兎の眼があった。
髭面のやつれた男の顔が映る。男は青い目をしていて
それは恋人が昔私と一緒ね、といった目と同じだった。
恋人のまつ毛が瞬き、振り向きざま頬を高揚させて笑みを浮かべる。
揺れる肩にかかる髪、鼻をくすぐる若葉のかおり、胸を締め上げるあの、あの感情。
俺が俺を見誤るのは、拡大解釈でも被害者感情でもなんでもない。
客観的な事実がいつまでも俺を決定的に殺した。
そうだ。彼女はあのとき笑った・・・
いつだってそうだ、俺を苦しめるのはいつも単純な自殺願望や虚無感じゃない。
胸に傀儡する自分には似合わない、よく判断がつかなくて
喉をふさぐようで掻き乱すような
鮮やかなイメージでスパークする天使の羽を毟るようなこの感情。
訳がわからない胸の奥を突き動かす、鼻の奥がツンと来るような
俺を強くして弱くするそのテイルイタリー。
その色が体中に染み渡ったとき、目の前の兎がたまらなく哀れになって
俺と一所に淋しくなって、たまらなくどうにかしてやりたいような感情が血と
共にめぐって兎の腹に棒を思い切り突き刺した。
「・・・・なぜだ・・・・」
兎は呻いた。その瞬間に腕は鞭のように撓り俺を突き飛ばした。
頬の横を風が切るのを感じた、と思った次には壁に背をしたたかに打ち付けていた。
腹のあたりがただ熱いと思った。
兎は馬鹿でかいバケモノのようになっていた。野生のヒグマのような体に歪んで肥大したウサギの顔をつけて歯をむき出しにして怒鳴った。
「・・・オマエも俺を憎むのかっ!・・・拒むのか! 邪魔だから殺すのか!
貪るから悪魔なのか!同じ価値観で生きないからバケモノなのか!
だから殺すのか!・・・・」
それは他の人が見れば、恐ろしい化け物がうなり声をあげて今にも俺を食い殺そうと
しているようにみえ怯えるであろう映像だったが、俺にはただ悲痛に映った。
嗚呼、痛そうだと。
同じだと。
そして本能が囁くまま凶暴性そのままに兎に襲い掛かった。
いつもこの瞬間に思う、自分のどこにこの攻撃性が眠っていたのか
凶暴性が眠っていたのか。
しかし日常でも感じることがある。上っ面のそれを捨てて、すべて晒せちまえよと
ココの人間を見ていると腹の奥がが苛立つ。
人間はどこかに獣という感情を鎖で繋いでいるようにおもう。
理性という杭で打ち込んでいるんだ。
教えてくれ、鉄の棒を振り上げながら願う。
それを伸びてきた兎の手が払った。
受け止め後ろに踏ん張る。足の裏が摩擦で燃えてるみたいに熱い。
右、左、鞭のような黒いなにかが撓って俺を狙う。
身体が勝手によけて俺は地面を強く蹴って飛び上がった。
兎の右頬を強く打った。
兎の顔は苦悶に歪み、歯が一本飛んで行った。
兎はなにか呻いたかと思うと、涙を一つそっと流した。
「安心しろ。 違う。むしろ逆だ。」
なぜかそんな言葉が零れた。
そう告げるとほかの兎と同じように引き裂かれ、その兎の姿も
トマトとコーヒーをくじゃまぜにしたどこかビミョーにうまそうな
色合いの泥にかわり石に変わった。
いつもと同じではなかったのは
涙をみたことだった。
不意に息苦しくなりせわしなく息を吸ったり吐いたりを繰り返した。
呼吸が止まると思った。しかし息は止まらないのを知っている。
早く収まるのを願ってかるく喉をしめる。
少し呼吸ができるようになると、俺はなぜか笑っていた。
仰向けになり何もない硬質な灰色の岩盤の上で、仰向けになり大きな声を
あげて笑った。
いつまでも乾いた笑い声で笑った。
世界の果てで、訳の分からない
すべての世界への愛しさを抱え
生きていると思った。
-あからさまな正論と正義が、すべての答えでない。-
言葉にどれほどの効力があるのだろう。
どれほど言葉を尽くしても伝わらないものは
どんな努力をしても伝わらないのだろう。
だがその一方で言葉にしなければ人間は意思疎通のひとつもできやしない。
兎退治で受け取ったわずかばかりの賃金をチャリチャリと音を立てて歩く。
ズボンの中で揺れて存在を主張するそれは、俺の自己満足的な暴力が社会的に
認められている証明で、そんな世界にゾッとするしそんな世界に感謝する。
街角の角にある錆びれたエピナールの看板をかけ、それと
同系色のアイビーグリーンで塗り込まれたカフェの門をくぐる。
色褪せたそこは灰色の町の中で微かに色がついているとはいえ
目立たないくらいそこになじんでいる。
狭い店内のカウンターの奥にいつも通りオレンジと赤のチェックの
ガウン、毛玉のできた古ぼけたストールをかけた老婆が葉巻を吸いながら
窓の向こうに目をやりながら佇んでいる。
「よう、婆さん。」
声をかければいま気が付いたというように、金髪をかきあげて
コチラを見据えた。
「婆さんとは、口のきき方がいつまでたってもわからない子だね。
お前は。ミス・マーシャルとお呼び。」
「相変わらず元気そうでなによりだよ。
それにミスって年じゃねぇだろ。あっちで結婚もしてたんだろ。ミセスだ。」
「うるさいね。坊や。
今はフリーなんだ。ミスでいいだろ?ねぇ。」
そういってニタリと笑う。金髪といってもこちらもこの店同様色あせて
白っぽい。彼女はこのあたりのドンでそして俺と同じ”アチラ”から来た人間だ。
服装はみたとおり浮浪者のごとくだが、何故か高級な葉巻をいつもふかしている。
前どこで手に入れるんだそれ?と尋ねたが「さぁね」と一笑に付された。
「 もうそろそろ教えてくれてもいいだろう。兎の事だ。」
そう切り出せば彼女は片眉だけピクリと跳ね上げた。
「 アンタこそその恰好はなんだね。兎を狩った後か。
派手にヤられたもんだねー。」
そういって俺の腕をつかむ。
「っ―放せっ」
痛みに振りほどこうとするが老婆とは思えない力で到底できない。
「カンナ、手当てをしてやりな。」
そう呼ばれると大人しそうな少女が、救急箱と共に
店の廊下のうす闇から現れた。
「別に手当なんていい。放せ。」
「 アンタが良くてもこっちが良くないんだよ。
暴れてカンナに怪我させたらただじゃあ置かないよ。」
射殺すような視線で言われ仕方なく俺は椅子に腰をおとした。
真っ黒な純真そうな瞳を持つこのカンナという少女が俺はどうも苦手だった。
その瞳で見つめられるとどうも居心地が悪い。
少女は一言も発さず黙々と手当てしていく。
「 しかし兎を狩るのに兎の事を知る必要がどこにあるんだね。
わたしゃやっぱり知らないよ。」
またいつものようにいたずらっぽい視線になった婆さんに俺はため息をつく。
「なぁ、ミセス・マーシャル」
「ミス」
「・・・・ミス・マーシャル・・ほんの少しでいいんだ。
今日初めて兎が涙を流してるのを見た。
なんなんだあいつらは。」
そこでやっと興味を持つ顔つきになる。
「へー涙をねぇ。そいつは珍しい。」
「警備局も一応は調査してるらしいが兎ってのはどうも何かわかんないんだろ。」
「警備局のネズミたちに何も分かるはずがないじゃないか。
ここに最初からいる人間に兎の事はわからないのさ。
猫に追っかけられるみたいに快楽と享楽に明け暮れる
それがここの本質なんだから。共感や悲しみなんてないのさ。」
「それが関係あるのか?」
「さぁ、わかんないねぇ。私がわかっているのは兎が糞みたいなバケモンで
ここの連中の魂をガシガシかじって食っちまうことくらいだ
お前も気をつけな。坊や、あんた今にも食われそうな顔をしてる。」
ニタリとまた笑う。
「 そうだな。食われてもいいと思っていた。
でも気が付くと抵抗しちまってる。なんの覚悟もできねーダメなやつだよ。俺は。」
「 それが本能ってやつだ。ここの人間にはそれがないからな。
ま、そんなもんだよ。ヒトってやつはだれでも。
お前の構成物質は人間以外の何物でもないだろ。違うかい?」
「違いないな。」そういって苦笑すればミセス・マーシャル・・もとい
ミス・マーシャルは母の様な顔をして笑う。
「 やっと最近笑うようになったね。
あんたここにはじめて来た時、死ぬよりもひどい顔をしてた。
地獄を這いずりまわってきたような顔だ。」
そういわれて俺は顔をかく。傷口から薄くかさぶたを張ろうとする体液が爪の
間に入り込む感触がする。消毒液の様ななんとも言えない匂いと黄色の液体が指先にこべりつく。
「そうかな。」
「そうさ。」
サラサラと何かが店内の奥から落ちる音がする。
マーシャルは2、3度灰を落とした後おもむろに口を開いた。
「あんたがここに来た時何をみたね?」
「 紳士のような姿をした兎だ。
『全てから逃げ出したくないか?』と聞かれた。」
「なんでうんと言ったんだ?」
「そんなのどうでもいいだろ。」
「よくないさ。いまさら私に隠し立てする必要なんてないよ。」
全てを見透かすような目で見つめられ渋々口を開く。
「全部が嫌になったんだ。自分が汚くて耐えられなくなった。
裏切ったようで自分を許せなかった。
ずっと苦しんできたんだ。
なのに受け止めて貰えなかったらこの有様さ。
けれどその気がないならずっと放っておいて欲しかった。
手短な言葉で収まりを付けるくらいだったら殺してほしかったんだ。」
「物騒だね」
言葉を選ぶようにだが短く彼女は告げる。
「ああ。そう思うよ。今ならガキみたいにダダをこねずそう思う。
だが、そんな自暴自棄だったとき兎に誘われた」
なのも言わず彼女は葉巻を紫煙を吐き出した。
俺と彼女の間に靄がかかるその隙間からゆらゆらと彼女の
深いシワの入った頬がみえる。
「 ミス・マーシャル。あんたはどうなんだ。」
「私かい?私はもう歳で覚えてないね。」
「ずるいな。こんな時だけ歳か。」
そうすると彼女は豪快に笑い飛ばした。
「知ったって悲しくなるだけだよ。」
「ああ・・そうか。」
そういって古ぼけた結婚指輪をなぜる姿をみれば
俺がますます現実ってやつに絶望しそうな内容の話しかない
のだとわかった。この年かさの老婆はこんなになっても人の
将来を心配するだけの器量を持ち合わせている。こんなひとが
ここに来るには俺と比べ物にならない理由があるに違いなかった。
おそるおそる彼女に尋ねる。
「・・・・あんたはアチラに帰らないのか?」
それまでずっと無反応に俺の手に巻きすぎるほどの包帯を
巻きつけていたカンナの手がびくりと震えた。
「もうここでの生活があるからね。今は自暴自棄な気持ちで
ここにいるんじゃない。けれど前向きとは言わないだろうがね。
日差しの似合う真っ当な人間を疑念なくできる奴はアチラで立ち直ればいい。
私はこの死との間にあるような灰色のこの世界に漂っているのが一番いいのさ。
カンナもいるしね。」
そういてカンナにやさしい笑みを向けた。
カンナは無表情だったが手の震えは収まっていた。こんな少女でも知っている
誰かを失いたくないという執着は誰にでもあるのに容認されることはない。
みな一様に受け入れろという。誰もがしっているのになぜ人は失うんだろうか。
「そうか。」
複雑な思いで少女の栗色の髪を見つめながら相槌を打てば、
マーシャルが突然ぼそりといった。
「 トラジス。きっとおまえは”アチラ”に帰るんだろうね。」
驚きで目を見開いて彼女をみる。彼女の目に椅子の背に手をかけて
向き直った俺がうつる。
「まさか。」
目を細めてマーシャルは言う。
「否、そうだよ。
・・・そうさな。
せめている間はジャッキーに顔をだして
やっておくれ。あの子はやさしい子だから。
それから彼は孤独に慣れているが、孤独に弱い。
強がりを言うだろうがずっと恐れているんだよ。ずっーとね。
お前たち気が合うだろう?」
「・・・いいや。ああいうのは気が合うとは言わない。」
何をと訊きたかったが聞きそびれた。
口に出したのはわずかにそれだけだった。俺だって全く気付かないわけではない。
彼はとんでもないニブだが誰にも触らせない影があることも、
孤独を嫌っていることも。ちなみに俺は一度も夜中にアイツと
顔を合わせた試しがない。
夜中、アイツはいつも女のところか、・・・女のところかだからだ。
一人では眠れないのかもしれない。
そうでなかったら満月の下でふらついているかだ。
目の下にクマを作って明け方に帰ってきて気づけばコンクリの隅で
ニヤニヤ笑いながら座っている。
最初は不気味なやつだと思ったもんだが、月明かりにあてどもなくふらついている
ジャッキーの姿を想像したら全くしらない俺でもやるせなくなった。
勝手な想像でなにを言うかとジャッキーには怒られそうだが。
俺よりだいぶ年下の彼が人生を見限りたくなる程の痛みとはなんなのだろうか。
彼はずっとここにいるらしい。ぬくぬくとあの年まで過ごしてきた少年期の
俺を思えば少し恥ずかしくなった。
「ああそうかい。ジャッキーはなんだかんだいいつつアンタを
気に入ってるみたいだけどね。ちゃんと時々顔を見せる割に、
人の触られたくないとこには触らない距離の取り方が上手い奴だって。ああいうやつがアチラの世界で出世すんのにななんて言ってたよ。」
「それは違う。人と必要以上に関わるのが嫌になったんだ。
どうせ分かり合えないのにどうして傍にいる必要がある。
どんなに心を別け合ったってどちらかが不要になれば要らないんだ。
人は誰だって今関わってる人間より大切な人間ができる可能性を孕んでいる。
そうしたら要らなくなるのさ。」
すると彼女は鼻で笑うように言った。
「そんなのわからないじゃないか。」
「そうさ。俺の悪い癖だ。」ニヤリと笑い返して冗談めかす。
彼女の目から光が雲散する。困ったような笑いだった。
「でも、これは本当に思っているんだ。
どんなに心を砕いても人が解りあう事は無理なんだって。
たった少しの反射光を求めてもそんなもの帰ってこない。信じるだけ無駄なんだ。
俺の思う信じるってことは甘かったよ。期待を裏切られたって信じるなんて
芸当クズな俺にできるはずがなかった。」
葉巻を吸いがらに押しつけながらマーシャルは仕方ないというようにまた笑った。
声をあげて笑った。
「そうだね。そうやって仕方ないと曖昧に過ごしていくんだ。
曖昧にすることがいいことかこの年になってもわからないけどね。
当たり前だって顔していくのよ。
そんなこと言うと当たり前だって笑われるよ。」
茶化すようにマーシャルは言った。
「当たり前だって訳知り顔で言われたよ。嫌な時代だ。」俺も片目をつぶって返す。
「トラジス、あんたもジャッキーも救われないね。
だからあんたたちはまだ若いんだしいつかは帰らなくちゃ。人生のすべての事に
意味があるのよ。人は何かを経験するたび何かを手に入れるもんよ。
あんたたちの辛い思いは意味があんのよ。」
老婆の慈悲なのだろう。手を握って俺に言い聞かしてくれる。
老婆心とは上手く言ったもんだ。
しかしそれは違うのを知っている。
「悪いけどミス・マーシャルそれだけは信じ・・・「ないよ」
俺の声を遮って一言も話さなかったカレンが声を発した。
手当を終えたのか包帯をきゅっと縛って俺のそばを離れながら、
栗色の顎のラインにそってバッサリと切り揃えられた髪を揺らして廊下に踏み出し
ながら振り返った。
彼女の奥にはスーッと暗闇に飲み込まれる廊下が見える。
それを背に真っ黒で大きな彼女の目がギョロリとこちらを向きながら
無表情に言った。
「意味なんてないよ。
私のお母さんがいなくなったのも、お父さんがいなくなったのも
なんの意味なんてないの。
それを寂しいと思う私の気持ちもなんの意味なんてないの。」
細い体のまだ幼い子供が口にするには悟りすぎた口調だった。
まるで人生をもう十分生きたかのように大人びた口調だった。
そうだ。意味なんてないんだ。
あれは詭弁だ。俺の少年の心はあの日粉々に砕けた。
意味なんてないんだ。
正論は正義にはなりえない。
俺の言葉も怜悧にすべてを斬り捨てた時があるに違いない。
正論を正義のように翳して、血塗れた剣を歓喜の笑みで掲げる瞬間が
あったに違いない。
何を犠牲にしたのか気が付かずに。ドラゴンを殺したつもりで掲げた剣が
救った筈の姫を誤って刺した血だとしても正義に酔っている
その時の勇者にはわからない。
こんな気持ちを表す言葉がないから僕らはこんなにも惑うのか。
― 兎と自己否認型性格とそれの是と非 ―
帰ってきたら日が落ちかけていて、ジャッキーは出かける支度を
していた。ボロボロの服のなかから少しはまともな服を選んで羽織ってみている。
「金貰ってきたぞ。わけまえだ。」そういって渡すと
あからさまに嫌そうな顔をした。
「少ない」
「うるさいな。昨日は一緒に行かなかったしそんなもんだろ」
「出かけるの見てわかんない?
気遣いのできない奴なんて死んじまえ。」
「はは、まったくだな。でも俺も酒買うのにいるんだ。
この間の貸しと合わせてチャラだろ?」
渋々といった様子で頷いて俺の脇をすり抜け出ていこうとした。
が立ち止り素っ頓狂な声をあげた。
「あ、急に思い出したんだケド。」
「何だ」
「俺きのう、俺から兎にさわったんだよ。
てか、触れた。」
「なに?」
兎は幻のような生き物で自分からは触れることは
できないのが通説だった。
「 手を怪我したのはそのせいで・・・」
「 ムチャするなよ。」
「まぁまぁ、そのおかげで謎の鍵を手に入れましたよ。
トラジス兎の事に興味あるんだろ。」
少しさみしそうに言う。
話を聞けば人から触れると兎はなんと楽譜になったという。
楽譜?なんだそれは。
躰のあちこちから悲鳴があがるのに見て見ぬふりをする
責めて安楽な愛のある最期をと思うのに足がすくむ。
そんな最期がかけるのだろうか。
そんな慈愛に満ちた最後が。
全ての人間がしたり顔で物事を傍観する。
ネットに書き込まれる多くの言の葉。それはあまりに軽い。ネット上の質問に
本当に哀願の気持ちを持って世界中の愛と名の付きそうな情愛をもって答えてくれるヒトなどどこにいるのだろうか。
その一部に当ったなら幸運すぎるほど幸運なのだ。現実世界に寄る辺もない君を脳を通るシナプスの如く慈悲で助けるそんなヒトならば。
皆誰が言ったか知らない名言を聞きかじっては口を揃えて前ナラエ。
多くのこの国住む人間たちは、その偉人達が何を思っていったのか状況も理由を
求めず九官鳥のように口を揃えて繰り返す。
そして”皆が”そうだと信じ込んでいる。僕らは言葉を重視しない。
だから言葉に殺されるのだ。
何も知りはしないのだから。ここにこうして記す僕でさえも。
愛という言葉の種類さえ忘れてしまってセックスそのすべてで賄おうとする
短絡的な僕らを神は嗤うだろうか。しかも実態のないそれで。
アガペー 敬愛 敬慕 温もり その他足りない表現のすべてを
どこに求めているのだろう。
恋情それですべてを賄おうとする彼らをヒツジはどんな気持ちで見下ろすのだろう。その火は額に燈されるのか?
人に尊大を求める人間をさもバカにしたような回答を書きながら
求めてやまないのは自身なのかもしれない。
ナルキッソスは泉から決して顔をあげない。
みなわかっているから黙っているのだ。
絶対の信頼も絶対の幸福も永遠があり得ることも
本当に持っている、いや大きな意味を込めてhave それらの人間は
聡明で口にしようとはしない。
皆に嫉まれ悪しざまに言われることをわかっているからだ。
人が自分の経験しか信じなくなるのをわかっているからだ。
しかも人は自分の多くのページをめくろうとはせず、偶然ついたコーヒーの浸み
悲劇によって破られたページによって形作られていくのを人はそのうち知っていく。
そしてほかの人間もそうなるようにと圧力を加えていく。
いいじゃないか、彼女は信じていたのだ。
きっと彼女は無垢な心で信じられたのだ。俺にはその全てが眩しかった。
地獄の果てで見るこんな夢でも眩しいのだ。
この灰色から俺が帰れるはずはない。
こんなにも崖の淵に立っている。
こんなにも。
久々にここに来て彼女の夢を見た。
だが起きた時に雲散してしまい霞にきえた。
ジャッキーは帰ってきておらず、コンクリートに影が差す。
雲が陽にかかったその時、
木の葉を食すアルマデイッリディウム・ヴァルガレの残像だけが
神の啓示のように脳を穿った。
ー化け物が化け物を狩るときー
理由を知るとき救われることもあるのか。
自己満足のタップダンスだとしても。
音だけは、嗚呼、軽快に。
摩擦を恐れて半歩足をひく俺のくせは、もはや滑稽で
他人から見れば意味不明なわけのわからない人間に映ることだろう。
ある時期を区切りに俺は人に安心を与えることができない人間になったらしい。
元からそうでなかったのかもしれないが一向に気にしなかっただけかもとも
言えるかもしれないが、どうやら俺は普通の多くのヒトが持ちえない”絶対”を
ずっと信じてきた。
口にはしないが、永遠などとか多くの大人が嗤うであろう”絶対”が存在すると
知っていた。
どうやら自分で手放してしまったらしいが、未だにガキの心で信じているらしい。
打算のなかった、その時間を。
らしくない遠慮を繰り返し息もできずにしょげ返る。
心から愛していた”絶対”を憎み始めていることに薄々感ずいていた。
ホンモノではない俺のユウジョウはただのゴッコ遊びでしかなく。
発言しない、その発言が通らないのでは安い社会の議会と一緒で、気付かない君は
恐ろしく・・・いや・・恐ろしいのは俺が君に怒るであろう、衝突するであろう近い将来への予感だ。
(事実それは現実になった)
こんなに愛していたのにくだらない自分よりも愛していたのに、
代りに死んでもよいと本気で思っていた。そんな遵法精神に近い感覚で
腕を切り落としてもよいほどの真実さでいまも”ソレ”は存在しているのに。
愛するものが少ない俺には”ソレ”を否定してはなにもなかった。
幸せなうちにそのままでいれるようにしたかったのか、
いまでもよく判断はつきはしない。
思い出してもうまく説明できないが、裏切るつもりもなく分かれるつもりもなく、
試すつもりもなく
最初はただ苦しかった。苦しかった。苦しかった。
只それだけだ。
俺だけが一方的に重くなってそこに固執してることに気付けば、
その一瞬を守ることに、回数が増えたとしてもその一日を幸福に過ごせるように、
自分一人が重すぎる感情を持っていて(そしてそれが異常であることも頭ではよく
理解できていた)、
その一日に自分の日々の青春を全てかけている事を思えば
そして周りがそうでないことを悟れば よく解らない虚しさが胸を絞めた。
俺は一体なにを遵守し、何にこんなに犠牲を払い、何に努力して陽が落ちる頃には
疲弊して玄関にたどり着いているのだろう。
労働時間の間をかいくぐり勉学に励めばいいだろうに、
いそいそと出かけ手に入れた休日に、
選んだはずの一日、幸福であるはずの一日その最後に
たっぷり嘘で塗り固めた俺が玄関に転がっている。
ぶつかり合う勇気もなく足元にぽっかり空いた穴に墜ちた。
正に墜落した。
それだけだ。
過去にならば、もはや罪なし。
軽やかに踊ろう。
・・・そんなことできるのか。俺はやっと地面に這いつくばって今の
幸せを認識し始めたばかりなのに上手く踊れるだろうか?この舞台で。
罪悪感に押しつぶされずに、疑心暗鬼に打ち勝ち、償いのような重い気持ちを
棄て、軽やかに?
今や新しい先の見えない将来ってやつに怯えてる。
重く考えるのは俺の癖で、受け入れて今は
せいぜい強がって笑い飛ばすことにしている。
なぜかそんな時だけ一緒に笑うのだ。ジャッキーは。
― 兎 ―
うさぎ、うさぎ、因幡の白ウサギ。 野山の光源にひっそり立つ。振り向く紅い目。
血の気が引くその光景。神の使いが一匹、グロウ効果をかけた様な井出達でひっそりサラサラと
葉が流れるアルプスの高原の上、俺を見初める。
「 因幡の白ウサギを探しなさい。」 先生?それは天啓?
マイコプラズマ現象が起きたような空間の先の、その塵の向こう
今日の兎が揺蕩うように存在し、切り裂かれた布が黒い毛で大きく盛り上がった躰に
引っかかっている。俺と兎で向かい合って立っている。四つ足の肥大した
その躰はうなりを上げて涎を垂らし、
理性を金繰り捨てた有様でこちらに息巻いている。
瞬きをする。シャッターを切るように、四肢をバラバラに引きちぎって
兎の顔だけが喰いしばった歯から唾液を零しつつ
俺に向かってくる様子を頭の中の連続写真におさめる。
「ねぇトラジス、
トラジスの彼女ってどんな女(ひと)だった?」
白兎、光に包まれ、鼻をひくり、こちらを紅い目で睥睨する。
ジャッキーがこちらを掃除道具を片手に、ひらりと振り返りなんの
含みも遠慮もなくきく。
切り取った窓から入る光に目が眩む。そうか今は昼。
「なぁ、兎って?」
「兎?なんの話してんだ、トラジスのおっさん。
”彼女”、あんたの彼女の話だよ。」意地の悪い笑みだ。
「わかったよ。そんなもの聞いてどうするんだ。」
珍しく少し照れたのは自分でもわからない。
「どうもしないよ。ただ聞いただけ。」いつもは意地の悪い青年の
子供らしい表情に笑ってしまいながら
「じゃあ、教えねぇよ。」と返したら、
ますます不思議そうにしたのが小気味良かった。
錆びれたエピナールの看板のカフェの下にたまたまジャッキーが
居ずらそうに立っている。時刻は夕刻で今日は行くところがないのだろうか。
俺がここに出入りしてるのは知っているからまぁ、そういう事かと
一緒に入るか?と尋ねて、初めて?いや2、3回目かな連れ立って入ってみる。
ミス・マーシャルが奥から淡い色の厚めのストール、濃い緑のワンピースの恰好で
ゆったりと老婆らしく出てくる。
「ジャッキーじゃないか!ジャッキー、やぁハンサム坊や!」
「俺はどうでもいいのかよ。真ん前に立ってるぞ。」
俺が悪態をつくと面白そうに、マーシャルは俺にウインクする。
ジャッキーはというと、マーシャルに歓迎されて嬉しそうだ。
席に着くと適当に入れられた薄まった紅茶が出てくる。
二人そろって何も考えず砂糖をすくっては入れを繰り返していたら
奥からカンナが出てきた。
「珍しい。お客さん。」カタコト気味なのが少しいつも俺は気になる。
「そうだねぇ。カンナ、珍しく来たジャッキーといつものトラジスだ。」
「よぉ、カンナ。」
俺が声をかけると少し会釈して不思議そうに
真っ黒な瞳で、珍客のジャッキーをじっと見つめる。
ふっとジャッキーの顔が赤くなって、少年らしい顔になった。
意外な反応にマーシャルと俺で驚いていると、
カンナが砂糖を混ぜることに熱心なジャッキーの手のそばに
両手ですくいあげた小鳥を見せようとする。
「怪我してたの。みて。」
ジャッキーは我に返ったように顔を上げてカンナを見つめてから
「あぁ、ホントだね。」と笑いかける。
そうじゃなくてっと、んっと少し手を突き出すカンナの仕草に
俺が噴き出すとマーシャルがコントのように俺の頭を叩いた。
ジャッキーは少し怯えた仕草で
「ごめん。オレ汚いから君に触れない。」っとあまりに素直に答えた。
カンナは不思議そうな顔で小鳥をすぐ隣の籠に移して、
「手当したら指、怪我した。」と言ってテープで止めた指先を差し出した。
こちらを見る困惑したジャッキーの顔に、仕方ないので「安心しろ」と
笑いかけてやる。
俺に助けを求めるな、俺に。
ん、と手を突き出すカンナと目が合いジャッキーは恐る恐る手を
カンナの手に伸ばした。
2人の伸ばした指の隙間から光が溢れる。
+++++++++++++++++++++
ガラガラと情景が崩れる。ランプブラックを塗りたくる様な。
景色が現実に引き戻される。
兎の歯がもうそこまで差し迫っていて、肩口に噛み付いた。
いたい。痛いというよりあつい。
熱いというより、これは”哀しい”。
血の匂いがする。俺の血の匂いが。
血生臭い煮詰めた様な、口の中まで鉄の味が広がる気がする。
すぐに放り投げられた。
わからない。哀しい、悲しい、かなしすぎて何故か戦えない。
「ゆるしてくれ!許してくれ!もう許してくれ!!!」
虚構に向かって叫びを上げる。
「もう許してくれてるんだろ?!きっとそうだ!!!」
子供の様に泣き縋ってしまう。
「きっと!!!もう俺のことはなんとも思ってない違いないな」
知ってると思ったこの一方的な最果ての行く末を。残酷なんだ。全てにおいて。
軽やかに罪など無いようにタップダンスが踊れるか?この俺に。
あの軽快な流れるような靴音のメロディに人生が乗せられるか!?
息が苦しい。
兎の四肢はもげ、みるも無残だ。
大きな躰からひゅーひゅー息を吐いていて、不思議と血は流れていない。
大きな風船のようだ。
けむくじゃらの風船。
子供の声の輪唱が耳元でこのフレーズを先に言った。
兎の邪悪な紅い目が爛々とこちらを見据える。
目だけ別の生き物みたいだ。
鉄でできた貧弱な棒切れをいつも通り掴む。
さっき突き飛ばされた時、腹の傷が開いた。
その痛みが俺をなぜか駆り立てた。
自分が勝つようになっている。
こんな獰猛な兎ははじめてだ。
どこかさだめ(運命)を感じた。
痛みで目が覚める。
「ここにいる4人は他所からきた、よそ者の集まりだね。」
マーシャルがあの薄い紅茶の茶会をそう締めくくったのを思い出した。
世界に4人だけだね。
紅茶の底には溶け残った綺羅綺羅した
砂糖のかけらを傾けて光にかざして飲み干した。
そんな映像が・・・
― 切断回線 ―
切断されて固まったままのテレビゲーム画面のように
突然真っ黒になって固まった切断回線画面。
先もなく後もない。
対戦相手とはそれでこれまで。情のない画面。
あの時の虚しさ。
たった一瞬繋がった相手でさえそれだ。
俺は相手の心から黒い扉、一番最後の鉄の扉から心からはじかれ
つまみ出されたに過ぎない。
心に氷が張ったように遠ざけられ、氷越しに冷たい手を厭わず叩いても
扉をノックしてももう伝わらない。
そんなに自分が可愛いのかよ。笑える。と嘲りたい気持ちと、無理もないのかと
老齢の男のように笑いたい気持ちが交差する。
今わかった!まだこんなになっても自分は相手に理解されたいのか!笑える!
こんな血まみれになってまで、こんなに兎を狩り尽くしてまで・・・
なんでだ。思い出すのは「もう綺麗な思い出になった。」という言葉だけ。
なんだそれ。おまえ自己完結型にも程があるぜ。殴り合えたら良かった。
彼女はとっくに隠れて女だった。相手の本心の弱さを暴くべきだったか、
未だにわからない。
(ひとつ忠告しておくが、人の一番嫌なところ、人が自覚したくない
自分自身の一番嫌な所。
核心には触れちゃダメだ。それがマナーだ。わかるかな?)
兎に角、重い感情は子供の時には重くない。同等ぐらいの重さだ。
いつから重さが変わる?
いつからこんなに軽いものばかり求めて生きてる?心臓が痛い。
セコい奴だったと誰か一緒になって笑い飛ばしてほしい。だれもいない。
彼女はなんだったんだろう。姿を変えてしまった何か。大人になるべき何か。
痛々しい感情だけがリアルだ。
時間が経てば考えが纏まって何か返ってくると期待したんだろうか。
なめてたのか俺の事を。自分より思慮の足りない人間だと?
まだ憤りが胸の奥で燃えている。ただ怨みではない。わからないか?この感じ?
よそものの集まり。”ここ”に最初からいる人間たちは外から来た俺たちとは
思想が違う。
苦しみか、喜びか、思いやりなのか言葉にならないアイデンティティが浮世離れして
真昼の雲一つなに青空にすぅーっと浮かんでいく。足がつかない。魂が軽い。
空気みたいで宙に浮いて実態がない。社会から浮いている感じがする。
別物なんだ。兎の前ではみな白昼夢を見る。悪夢かも?
飲み干されてただの黄緑(#00ff18)になった、ここの人間たち、足元に何個も
ぬちゃぬちゃと魂の残骸が足にこべりつく。
兎。おまえを別物だと思わなければやっていけなかった。
一生分かり合えないだろうなと、別離の予感をもう何度も知った。
まだ手を伸ばすのは、愚かだからか?
「俺から兎に触れたんですよ。」
ジャッキーそういえば言ってたな。
何になったけ・・・?
兎のもげた散らばった手足に勇気を出して触った。
ゆるゆると輪郭を崩して、音符、音譜に姿を変えた。
黒板を引っ掻くような切り裂く、そんな音が五線譜から直接頭にハウリングする。
この曲を知ってる。そんな気がしたし、数百年前の太古の昔に
存在した未知の音楽を耳にした心地がした。ブルガリアン・ヴォイスのような。
痛、痛々、痛い、痛い。愛されたいと聞こえる気がする。
理解されたい、受け入れてくれ、シュナックの突然の口づけのような驚き。
戸惑った俺は、女々しいのか、男だからなのか。
理解してくれた優しい言葉、”彼女”の言ってくれた理解。
親友を失うのは、恋人をなくすより苦しいのか。
忘却は宝だ。
忘れた。いや、全然忘れてない。忘れられてない。あの時の情景。
小さな海、黒い古い町並み、あたたかみを感じるように作られているのに
冷たく感じたグレーの舗装。
お互い想いあっていても、なるほど、すれ違う事があるのか。
兎の音楽は俺に忘却を思い起こさせた。
悟りとそして天啓。
頭と胴体だけの兎が遠くで、そっと鼻歌のようなモノを口ずさむ。
音程の外れたまばらな音、獣のような獰猛さは毛むくじゃらの躰だけが
残しており顔は知的な兎になった。
その音楽が視界を歪ませる。自分の体が勝手に立ち上がり金属の棒を
杖にして、ゆっくりと兎に近づく。
兎の姿が歪んで様々な幻覚をみせた。
紅い瞳がいろんな色に変わって見える。
青い瞳、ああ、姉の姿。よぉ、親友。お前そんなとこで何してんだ。
目が怖いぜ?次はジャッキーの姿か・・・なぁおまえなんで
そんな寂しそうな顔するんだ・・・。
幻覚をみせた兎が何故か泣き出した。
いろんな人が兎の前に投影され
何重ものイメージで重なり合った、後ろの画像の兎が目だけでボロボロ泣く。
一重目のイメージが、いろんな人にパカパカうつり変わる。
カンナ、マーシャル、この間会ったばかりなのに今やたらと懐かしい。
誰だ知らない人たち。兎が喰った人間なんだろうか。
不意にチューニングが合ったように窓の外で盛っていた、女の姿になった。
するりとスリットを割った足を絡ませて、誘惑する。
口を合わせようと舌を突き出された。俺はその顎をつかんで突き放す。
イブの禁断の果実の誘惑。罪の味はこんな・・・
兎が一層泣く、女の声だ。「なぜなの?なにがいけないの?」
ハウリングのように頭で響いていた音楽がより悲劇的に盛り上がる。
「私のなにがいけないの?」
女は自分の顔に手をムンクのように頬に這わせ、顔を覆い隠して
指の隙間から目だけ何かに怯えるように俺をを見つめている。
親友のさっきの目を思い出す。声が聞こえる
「目を覚ませ。トラジス。もうこんな処にいてはいけないんだ。」
心の中のあいつが兎さえも押さえつけようとしてるみたいで、身震いした。
遂に兎が唾を飛ばしてまで、幻の女をしゃべらせはじめた。
「・・・貴方も私を拒絶するの!・・・理解できないから殺すの!
貪るから悪魔なの!私を殺さないで!殺さないで!
受け入れて欲しいとまでは言わないわ。
だけどもひとりぼっちにしないで。」
女の幻が自分の体を守るように自分を抱きしめて震えた。
怯えきった様子に胸が苦しくなって、幻を見つめたが
透き通って兎のなぜか純真そうな真っ黒な瞳に突き当たった。
それを見て兎を見つめ、兎がみせた幻の女を俺は抱きしめた。
それは欲情でも愛情でもなく”ひとつ”だった。共感だった。
皿の上にのった目玉焼きが、元は丸い玉子だった
くらい明らかで分かり切ったことだった。
俺はこの女と同じなんだ。
「愛されたかっただけなんだな」
女の瞳から光が零れた。軽薄なふりをして、男を利用する悪い女の
フリをして必死に強がっていた。知らなかったよ。
女はついに声をあげて泣き出した。幻は兎のすがたにいつの間にか
変わっていた。俺の腕の中で兎は泣いていた。
低い声、たかい声、子供の声の混ざり合った声で哭いた。ひどくないた。
黒い目からもう一度赤い目に変わり、
赤い目からボロボロと水滴をこぼしてしゃくりあげていた。
一番肥え太ったこの悪玉の兎は人々の悲しむ音だったのだ。
愛という言葉を多用するにはわけがある。
このことばしか今冠してギリギリあてはまるのは之だけだからだ。
こんな痛みを哀しみを地獄を表すには、この言の葉しか当てはまらない。
他に言うとすれば朝焼けを覗き込んだ眼球の渇き、
明日すべてが決まるときの心躍る足音とその砂城の足音。
夕焼けの身の置き場のない震える指先、ひとの微かな希望。
この自ら区分したホモサピエンスという生命体を是認できる唯一の希望。
だが何れ(いずれ)もいつか土に還り空に還るのだろう。
腐った思考も美しい果実のような過去も多くの人の持つ賞賛されるべき多くの宝石も
―それが他人にとってどんな価値だろうと構うまい―
いつか虫が食べ何かに返してくれる。
ジャッキーがカンナに触れたその指先が無性に蘇った。
ただ、目を覚ました。
天井には殺風景な白い壁があり、消毒液の臭いがした。
半透明の白い管がどこからか伸びているのが見える。ぼやけた視界が
徐々にクリアになり人工呼吸機の音だと認識した。
集中治療室のようでこの部屋には俺のベッドしかない。
ホームドラマや感動もののテレビドラマのように
心配そうに覗き込んでくる人も俺を取り囲む人間も誰もいない。
白いベッドにただ一人
ブラインドの隙間から紅く染まった夕日の横線だけが色を放っている。
もうこの現実の世界では、俺の事なんて忘れて友人も帰りを待つ恋人も
もうたった一人の肉親の姉も会いに来てくれるなんて事はきっとない。
そんな直観が俺にはあった。
だが、窓の外にぷかりと浮かぶ赤い風船が空に舞っている。
たくさんの時間がゆき過ぎ俺だけ止まっていたことは明白だ。
例えまだみんな生きていたとしても、俺がいない人生を
もはやいないなりに自分の人生をスタートしているだろう。
寂しくないといったらウソになるがそれでもいいと思った。
この世にたったひとり。
それもいい。
ただ帰ってきたんだと思った。
2011
2021/10/27
2015/4/08
20くらいの時に書いた。
あとがき
”言葉を重視しない”にひとつだけ加筆を。
名言などの言葉を知るのは良いことだ。
九官鳥の前ナラエでも、現実に生きた人間の言葉の
現実味を知ることは生きる上の知恵になる。
言ってるうちに本物になる。
この知識の実、拙い文章を読んでくれた君にならあげよう。使うといいよ。
兎追い 晨 @sundorashin
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