第5話 言葉の階段をのぼるイナズマ
ある日、施設外作業として、事業所Mの所有の畑の、石拾いや、草取りを行う事になった。
学は、養護学校を卒業したばかりの若い男性とペアを組んで作業を始めた。
「ねえ、女性って欲しくない?」
「そうだね、欲しいね」
学の背中は、どこか
少し前、
想像するのは
学は錬子さんを「自分のものにしたい」「彼女にしたい」という気持ちが
草取りを終え、休憩のため施設へ戻った。
学は、イナズマの事を考えていた。
それは、彼の「~してください」という言葉は、特に問題がない場合もある。それのどこが問題になるのか、その急所を理解するのは難しかった。
言える事は、彼の言い方が、間違っているとは、言い切れない、という事だった。
しかし、学が、声をかけても、その言葉をすぐに、彼の中に取り入れることはできそうになかった。
……ホントかな? ……
そこで、試しに「~してくれませんか?」と言うようにアドバイスした。
イナズマは3回その言い方をした後、4回目には元に戻っていた。
その様子を見て、学は思った。
……こういう反応をする人なんだなぁ……
イナズマ自身も考えていた。
……僕は、やっぱりダメな人間なのか……?
学は、そんな、イナズマに一言加える事にした。
「『~してください』が間違いというわけじゃない。でも、初めからそう言うのは、少し良くないんじゃないか……?」
イナズマは、「だって……」と言いたげな表情を浮かべた。
そんな、学は、ふと思いついた。
「最初は『~してくれませんか?』と言って、何度も言うときは『~してください』と言えばいいんじゃない? 最初だけね……」
学は軽い調子でイナズマに言った。
イナズマは思った。
「それなら、できるかも……こうすることでステップアップできるかも……!」
目指すべきところが
希望を持っては打ち砕かれ、しばらくすると、また希望を見つける――。
それを繰り返しながら、気持ちの浮き沈みを経験するうちに、
イナズマは、「プチな
しかし、学がイナズマやゴウ、コトゲに教えたかったのは、こうしたスキルそのものではなかった。
こうした経験を繰り返しながら、
それは確かに、
しかし、これまでの働きかけでもそれなりの効果はあった。イナズマが話す言葉自体は変わらなかったが、どこか口調が
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