第1話 お風呂場で……

 それから俺とキスリアは、ふたりでお風呂場に向かった。

 俺もキスリアも、自身の秘部を隠すためにタオルを身体に巻いている。もちろん、お互いの全裸には見慣れているのだが……まあ、一応のマナーというやつだ。


「ランジくん、どう? 気持ちいい?」


 ごしごしと俺の髪を泡立てて洗いながら、キスリアがそう尋ねてくる。


「あぁ、気持ちいいよ。ありがとな、キスリア」

「うん、どういたしまして。でも、こんな朝からシちゃうなんて……朝ご飯、温め直さなきゃだね」

「それは……なんか、ごめん」

「ふふっ。いいんだよ、遠慮しないで? ふたりきりのときは、いっぱい僕に甘えてくれるって約束だもんね?」


 いっぱい僕に甘えてね――というのが、キスリアの口癖のようなものだった。

 サキュバスと呼ばれる種族は、性行為によって男性から精気を搾取することで生きている。

 だが、キスリアはその例外だ。彼女はふつうにご飯を食べたり、眠ったりすることで栄養を得ているのである。性行為の経験も、俺が初めての相手だった。

 とはいえサキュバスとしての本能が失われているわけではないようで、キスリアは俺を甘やかすことでその本能を満たしている……らしい。詳しくは知らないが。


「ほら、ごしごし。いっぱい綺麗になろうね?」


 優しく穏やかで、可憐な声音。

 短めに切り揃えられたキスリアの銀髪が、俺の背中に当たって少しだけくすぐったい。

 ちなみにサキュバスは悪魔の一種だが、キスリアの身体にツノや尻尾は生えていない。人間と違うのは、エルフなどにも見られる尖った耳だけだ。

 サキュバスたちは、悪魔の特徴を隠すことで人間に擬態しているらしい。キスリアも戦闘の時などは、その身体から小さな黒いツノや翼を生やす。……あれはあれで可愛いから好きなんだけどな、俺は。


「そういえば……君、たしか今日も任務なんだよね。しかも内容は……」

「勇者との戦闘。まあ、いつものことだよ」


 魔王軍に寝返った俺は、当然ながら、今は魔王軍のために暗躍している。

 そして俺の特技は、戦闘だ。

 正直……俺はたぶん、魔王様よりも全然強い。そんな俺の実力を見込んだ魔王様が、毎日のように俺へと戦闘任務を命じてくるのだ。

 面倒ではあるが、キスリアとこれからも暮らしていくために、俺は魔王軍の下っ端として働き続けなければならないのである。


「……ねえ、ランジくん。もし任務が辛かったら、いつでも僕に言ってくれていいんだよ?」

「べつに辛くなんかないよ。めんどくさいけどな」

「でも……君と勇者って、仲間だったんでしょ……?」

「関係ないよ、そんなの。一年以上前の話だし。それに――」


 ――俺は、聖王国の連中を恨んでいる。

 この世界に転生してから俺は、グロアシア聖王国という国で育ち、最強の魔術師になるために厳しい鍛錬を積んできた。それも全ては、聖王国の平和を勝ち取るためだ。


 だが……聖王国の第二王子エルドウィンは、突如として俺のことを『邪神の生まれ変わり』だと言い出し、永久的な国外追放処分を命じてきたのだ。

 エルドウィンは女好きで、しかも嫉妬深い性格である。だから人類最強の魔術師となった俺が英雄として扱われていたことが許せなかったのだろう。

 しかし腐っても、エルドウィンは王子である。彼の言葉は瞬く間に聖王国に浸透し――俺は一夜にして、聖王国の嫌われ者となった。

 

 そんな聖王国の連中のことなんて……もはや、心の底からどうだっていい。

 そしてもちろん、聖王国のために魔王軍と戦う勇者も、今となってはただの敵だ。


「――いや、なんでもない。とにかく、俺は大丈夫だから。ごめんな、余計な心配かけて」

「ううん、僕は大丈夫。でも……本当に嫌になったら、ちゃんと僕に相談するんだよ? そのときは、僕と駆け落ちしちゃおうよ」

「ははっ。そういうのもアリかもな」


 と、冗談めかして俺が話すと。

 ぎゅう……と、背後からキスリアに抱きつかれた。

 タオル越しだが、キスリアのやわらかい胸の感触が俺の背中に押しつけられる。


「大丈夫だよ、ランジくん。僕だけは、何があっても君の味方だから。いざというときは、僕が君を養ってあげる」

「う……なんつーか、俺って情けないな……」

「そんなことないよ。君はすごくカッコいいよ?」


 優しい言葉を、俺の耳もとで囁いてくるキスリア。

 キスリアという絶世の美少女が今、タオル一枚のみという裸同然の格好で俺に抱きつきながら、その甘い声で囁いてくる。

 そんな現実を前にして……思わず、俺の息子がその気になってしまう。


「あ……もう、ランジくんってば。どうして硬くなってるのかな?」

「今のはさすがにキスリアが悪いだろ。おっぱい当ててきやがって」

「てへっ。バレちゃった?」


 と、キスリアは俺の正面へと回ってきた。

 その美しい深紅の瞳が、じっと俺を見つめてくる。

 それにしても……本当に、キスリアの容貌は美しいな。

 綺麗な銀髪も、白い肌も、長い睫毛も、やわらかそうな唇も……彼女の美貌の全てが、暴力的なまでに俺の理性を揺さぶってくる。

 そして、その直後。

 ほとんど無意識のうちに、俺はキスリアの身体を押し倒していた。

 

「あっ、んっ……ふふっ。ランジくんに、押し倒されちゃった」

「なあ、キスリア。その、胸で……」

「うん、いいよ? 僕の身体、君の好きに使って?」


 その後、俺は何度もキスリアの身体を汚し続けた。

 しかし、行為に没頭してしまうあまり……俺はすっかり、任務のことを忘れてしまっていた。

 

 

 



 

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