第34話 side真里亜
カラオケに来た私・崎本真里亜はうっかり眠ってしまった。そして、なにか雰囲気を感じ、目を覚ましたときには健人の顔が目の前にあった。
(え、健人にキスされる!?)
そう思ったときには健人が「あ!」と言って顔を遠ざけた。
「悪い……」
「いいけど、健人。もしかして今、キスしようと……」
「ち、違うから。でも、顔を良く見たいって近づいてしまった。ごめん」
「そ、そうなんだ……」
「ごめん」
「ううん、大丈夫。びっくりしただけだから」
あの真面目な健人が……驚きで動揺してしまう。だめだ、今、健人と一緒に居ると自分が何言い出すか分からない。
「……私、今日は帰るね」
「ま、真里亜!」
私は心臓がドキドキしているのを感じた。びっくりしたし、恥ずかしいのもあって、急いでカラオケボックスを出てきてしまった。
◇◇◇
家に帰り、自分の部屋のベッドに横たわって思い出す。あのとき、健人は何をしようとしたんだろうか。って、どう考えてもキスだよなあ。
私の三人の大事な親友のうち、翔太はチャラく、剛史は体育会系。そして健人は真面目な文化系という感じだ。一番真面目な健人からは私を女子としてみているという目を感じなかった。
だから、いままでいろんな相談もしてきた。健人は一番信頼できる友人。そういう立場だったけど、一番真面目で恋愛沙汰からも遠い男子、という感じだった。
だからそんな健人に安心してカラオケボックスで二人きりになったときも眠ってしまったけど、まさか健人が私にキスしようとしてくるなんて。あの真面目な健人が私に……そう考えるとドキドキが止まらなくなった。
「うぅ……」
あのままにしておいたら、キスされてたのかな。でも、その機会は失われてしまった。
「失敗したかも」
私は驚いたこともあって、すぐに部屋を出てしまった。たぶん、健人はショックを受けているだろう。すぐフォローを入れた方がいい。それはわかってたけど……
「今は私も意識しちゃってるしなあ」
健人のことを男性として意識してる。それにあのキス寸前の顔を思い出すと……私は剛史でもキスはしたくなかった。そういうのはもっと大人になってやるものだという意識があったからだ。別にしたくもなかった。
でも、健人がそういう感情を見せてくるのは普段の真面目さとのギャップでやばい。健人がキス。それを考えただけで体が熱くなる。してみたかった。初めてそういう気持ちが湧いてきた。
「どうしよう」
でも、もう健人はああいうことがあったらキスしてくれないよなあ。今の私はそんなことを思い出している。そうだ、全く同じ状況を作ったらどうだろう。明日、またカラオケに行けばいいんだ。……よし。私はその作戦を実行することにした。
でも、今電話したら私も緊張しちゃう。もう少し時間が経ってから。お風呂にでも入って落ち着いて。いつもの崎本真里亜を出して。健人をいじる感じで行こう。
……でも、明日、もし健人からキスされたらどうしたらいいんだろう。それは考えるまでも無かった。付き合うしか無い。
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