狂ゲーム

藍無

第1話 始まりは絶望の音

『こんにちは、みなさん。狂気と絶望のゲームへようこそ。』

部屋のスピーカーから男とも女ともつかない声が聞こえてくる。

「狂気と絶望だとぉ!?ふざけるな!家へ帰しやがれ!」

目の前にいた筋肉の塊とも思える冒険者がそう言った。

『ふふっ。お静かに。さて、みなさんには、これから簡単な脱出ゲームをしてもらいます。ゲームは全部で5種類。そして、今から行う一番最初のゲームは、『鏡ゲーム』です。ルールは簡単、この部屋の壁はたくさんの鏡で囲まれています。この鏡の中にいる自分を1週間の中で一番見つめ続けることができた人が勝者です。それでは、お楽しみください。』

そう言うと、放送がぶつっ、と音を立ててきれた。

「はぁ!?なんだこいつ、早くここから出せよ!!」

そう言って、その男はドアや窓がなく、鏡しかないこの部屋の鏡に体当たりした。

しかし、鏡はかなりの衝撃を受けたはずなのに一切歪まない。

「やめとけ、ルーク。きっとこの鏡は壊れない。脱出しようとするだけ無駄だろうさ。鏡を見つめてればいいみたいだし、見つめておこうぜ。」

リーダーらしき者がその男_ルークへ言った。

「しかし、リーダー――」

「黙れ。俺だってこんな意味わからんゲームに参加させられて不本意だ。」

不機嫌そうにリーダーの男が言う。

「――わかりました。」

そう言ってルークはその場に座り込んで、鏡に映る自分の姿を見つめ始めた。

すると、次の瞬間、

「お、おい___、これって、どういうことだ?」

と、自分の姿を指をさして混乱した様子でそう言った。

「どうしたんだ_?」

リーダーの男はそう聞いた。

「お、俺の姿が、歪んでいるんだが!?」

「いや、歪んでないぞ?幻覚じゃないのか?」

「そ、そんなばかな、い、嫌だ。やめてくれえええええ!」

ルークはそう叫んだかと思うと、自らが映っている鏡から逃げ始めた。

しかし、あいにくあたりは鏡で囲まれている。

どんなに逃げようと、自分の鏡に映った姿はこの部屋にいる限り見えてしまう。

「い、一体どうしたんだ、ルーク!」

リーダーの男が混乱した様子でルークを見る。

「い、嫌だ。怖い、やめてくれ!!」

鏡に向かってルークはぶつぶつとそう呟いたり叫んだりし始めた。

「や、やめろ。攻撃するな、血まみれになるな、なぜ微笑む!」

どうやら、おかしくなってしまったらしい。

というか、この鏡を見たからおかしくなったのだろうか?

そんなことを思いながら私は鏡を見つめてみた。

すると、自分の姿がぐにゃんぐにゃんに歪みだし、自分の翡翠色の瞳が真っ赤に染まっていく。なるほど、ルークはこの現象におびえていたのか、と妙に納得してしまう。私は、腰に差していた刀を抜こうと腰に手を伸ばし、刀がないことに気が付いた。どうやら、このゲームに参加するときに没収させられたらしい。

とりあえず、状況を整理するためにも、他のメンバーとコミュニケーションを取ろうと思い、私は後ろを振り向いた。

背後にいるのはルークを含めて10人。

「まずは、自己紹介をして、情報を整理しませんか_?」

私はそう提案した。

みんな、何かしらの情報が欲しいはずだ。

「賛成。」

一人の青年がそう言った。

他のメンバーもこくり、とうなずいた。

まあ、ルークは先ほどのままうずくまって怯えた様子だが。

「じゃあ、僕から自己紹介していい_?」

水色の髪に水色の瞳の賛成してくれた青年がそう言った。

「うん。」

みんながうなずく。

「僕の名前は、リフィス。15歳だ。起きたらこの部屋にいただけで、それ以前の記憶がほとんど無い。それはみんな同じだろうか_?」

15歳、か。髪の毛が長いせいか、少し大人びて見える。

みんながリフィスの質問に、うなずく。

やはり、全員起きたらこの部屋にいただけでそれ以前の記憶はほとんどないようだ。

「わ、私の名前はシズカ。15歳。」

青い髪に青い瞳の少女がおどおどしながら小さい声でそう言った。

「俺の名前はカイン。15歳だ!」

端的に赤い髪に金色の瞳の少年(さっきのリーダーらしき男)がそう言った。

「わ、私はローフィアス。今日で16歳。」

つつじ色の髪と瞳の少女がそう言った。

一人だけ、違う年齢の者もいたみたいだ。

年齢は脱出するのに関係ないのだろうか_?

「俺の名前はアクト。15。」

モノクルのようなものをかけた錬金術師のような見た目の青年がそう言った。

緑色の髪と瞳があいまって、いかにも頭がよさそうに見える。

「私はフィニー。昨日で15歳になったよ。」

金髪に桃色の瞳の少女がそう言った。

「僕はロハト。15。」

紫色の髪と瞳があいまって暗そうな印象をつける少年がそう言った。

「私はフェリス。15歳。」

長い金髪に黄金を溶かしたかのように美しい瞳の少女がそう言った。

正直言ってかっこいい見た目だ。

――というか、フェリス_?どこかで聞いたような気がする。

「え?ちょっと待って、あなた魔術師でしょ_?」

ローフィアスが驚いたような顔でそう言った。

「え、あ、うん。そうだが_?」

「やっぱりそうだ、5大英雄のうちの一人、風の魔術師、フェリス。あの伝説の魔王を倒した勇者パーティーにも入っていて死後から1000年以上たった今でも英雄として語り継がれている偉大な魔術師!」

きらきらと目を輝かせてローフィアスは言った。

フェリスのファンなのかな_?

「え、死後1000年以上たった今でも_?どういうことだ?私は死んでいないぞ。それに勇者パーティーに入ったのはつい先ほどだ、魔王はまだ倒していない。」

「え_?」

一瞬時が止まった。

ローフィアスが驚いた様子で固まっている。石のように。

「どういうことなんだろう_?」

「ローフィアス。お前は嘘をついていないのか?」

「つ、つくわけないでしょうが!目の前にいる英雄様に!」

「私は、未来では英雄、として知られているのか_?」

「ええ!もちろんですとも!その栄光を知らないものはいないくらいに!」

ふんすっ、と興奮した様子でローフィアスが言う。

「ちょっとまて、私のいた時代でもフェリスは五大英雄だが死んでから500年しかたっていない。」

リフィス、という名前の少年がそう言った。

「「「「「「「「「「え?」」」」」」」」」」

全員の声がシンクロした。

「も、もしかして、時代が違う者たちがここに集められている_?」

リフィスが少し恐る恐る、と言った様子でそう言った。

「そう、かもしれないね。」

「フェリスの死後から500年たった世界から来た人、いる?」

リフィスがそう聞いてみた。

すると、シズカ、フィニー、アクト、ロハトが手を挙げる。

「フェリスの死後から1000年たった世界から来た人は_?」

ローフィアスはそう聞いてみる。

すると、フィニー、カインが手をあげる。

「ちょっと待って、じゃあ君は?」

私にローフィアスが尋ねる。

「私はフェリスの親友だよ?」

ね!と言った様子で私はフェリスの方を見る。

「もちろん!!」

そう言ってフェリスは私にぎゅっと抱き着いた。

「な、名前は_?」

「スノーヴァレンタインって呼ばれているよ。本名はとっくの昔に捨てた。」

「や、やっぱりだあ!!」

ローフィアスは大きい声でそう言った。

何がやっぱりなのだろうか_?

「じゃ、じゃあさ、勇者パーティーの勇者様だよね_?」

おそるおそる確認しよう、と言った様子でローフィアスはきく。

「うん。」

この間魔王を倒すために勇者パーティーを組んだけどそれがどうかしたのだろうか?

「ま、まじかあ。」

腰が抜けたような様子でぽてっとローフィアスが倒れる。

「やばいねえ。」

「ね。」

「というかさ、これからどうするの_?それぞれの時代での時って止まっているのかな_?」

リフィスがこの場のみんなが気になっているであろうことを誰かに質問した。

「さあ?」

ローフィアスはそう答える。

「止まっていなかったらかなりまずい気がするよ。」

リフィスがそう言った。

「どうする_?」

「みんなで脱出するしかないでしょ。」

私はそう言った。

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